微積4.3.7

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問題4.3.7

次の関数の極値を求めよ。

(1)$f(x,y)=x^2+xy+2y^2-4y$

(2)$f(x,y)=x^3+2xy-x-2y$

(3)$f(x,y)=x^3+y^3+x^2+2xy+y^2$

(4)$f(x,y)=x^4+y^2+2x^2-4xy+1$

(5)$f(x,y)=x^2-xy+y^2+2x-y+7$

 

《ポイント》

2変数関数$f(x,y)$がある点$(a,b)$で極値をとるということは、点$(a,b)$において1次の導関数$f_x$、$f_y$が同時に$0$となることが必要です。この連立方程式の解から、極値を与える点の候補を絞り込むのがこのタイプの問題の定石です。前問でも触れましたが、2変数関数の極値判定では以下に示す判別式が有効です。

《定理》
$f(x,y)$は$C^2$級の関数であり、点$(a,b)$において $f_x(a,b)=f_y(a,b)$ とする。判別式を$$D=f_{xx}(a,b)f_{yy}(a,b)-{f_{xy}(a,b)}^2$$と定義するとき、
(a)$D>0$ かつ $f_{xx}(a,b)>0$ ならば、$f$は点$(a,b)$で極小
(b)$D>0$ かつ $f_{xx}(a,b)<0$ ならば、$f$は点$(a,b)$で極大
(c)$D<0$ ならば、$f$は点$(a,b)$で極値をとらない

 


 

《解答例》

(1)$f(x,y)=x^2+xy+2y^2-4y$

$f_{x}=2x+y$、$f_{y}=x+4y-4$ となるから、関数$f(x,y)$が極値をもつとしたら$$\begin{cases} 2x+y=0 \\ x+4y-4=0 \end{cases}$$の解である点$(x,y)$に限る。この連立方程式の解は$(x,y)=\left(-\dfrac{4}{7},\dfrac{8}{7}\right)$であるから、これが極値を与える点の候補となる。

$f_{xx}=2$、$f_{xy}=1$、$f_{yy}=4$ となるから、判別式$D$は$$D=2 \cdot4 – 1^2=7>0$$となる。これと $f_{xx}>0$ より、関数$f(x,y)$は点$\left(-\dfrac{4}{7},\dfrac{8}{7}\right)$において極小値$-\dfrac{16}{7}$をとる。

 

(2)$f(x,y)=x^3+2xy-x-2y$

$f_{x}=3x^2+2y-1$、$f_{y}=2x-2$ となるから、関数$f(x,y)$が極値をもつとしたら$$\begin{cases} 3x^2+2y-1=0 \\ 2x-2=0 \end{cases}$$の解である点$(x,y)$に限る。この連立方程式の解は$(x,y)=\left(1,-1\right)$であるから、これが極値を与える点の候補となる。

点$(1,-1)$において$f_{xx}=6$、$f_{xy}=2$、$f_{yy}=0$ となるから、判別式$D$は$$D=6 \cdot 0 – 2^2=-4<0$$となる。$D$が負なので関数$f(x,y)$は極値をとらない

 

(3)$f(x,y)=x^3+y^3+x^2+2xy+y^2$

$f_{x}=3x^2+2x+2y$、$f_{y}=2x+3y^2+2y$ となるから、関数$f(x,y)$が極値をもつとしたら$$\begin{cases} 3x^2+2x+2y=0 \\ 2x+3y^2+2y=0 \end{cases}$$の解である点$(x,y)$に限る。この連立方程式の解は$(x,y)=\left(0,0\right)$、$\left(-\dfrac{4}{3},-\dfrac{4}{3}\right)$であるから、これが極値を与える点の候補となる。

$f_{xx}=6x+2$、$f_{xy}=2$、$f_{yy}=6y+2$ より、点$(0,0)$において$f_{xx}=2$、$f_{xy}=2$、$f_{yy}=2$ となるから、判別式$D$は$$D=2 \cdot 2 – 2^2=0$$となり、判別式からは判断できない。そこで $y=-x$ とすると $f(x,-x) \equiv 0$(恒等的に$0$)となるので、極値をとらないことが分かる。

また、点$\left(-\dfrac{4}{3},-\dfrac{4}{3}\right)$において$f_{xx}=-6$、$f_{xy}=2$、$f_{yy}=-6$ となるから、判別式$D$は$$D=(-6)^2 – 2^2=32>0$$となる。$f_{xx}$が負なので関数$f(x,y)$は点$\left(-\dfrac{4}{3},-\dfrac{4}{3}\right)$において極大値$\dfrac{64}{27}$をとる。

※(コメント)

点$(0,0)$について調べる際に $y=-x$ と置いていますが、これは命題「点$(0,0)$で関数$f(x,y)$が極値をもつ」の反例となるためです。

ここでもう一度「極値」について復習しておきましょう。例として極大値の場合を考えてみます。

「ある点$\mathrm{P}(a,b)$で関数$f(x,y)$が極大値をもつ」

とは、

「点$\rm{P}$を中心とする半径$\varepsilon$の円を$D_{\varepsilon}$とすると、点$\rm{P}$近傍の点$(x,y)$に対し、$$f(a,b)>f(x,y)\ \ ((x,y) \in D_{\varepsilon},(a,b)\ne(x,y))$$が十分に小さい任意の正の$\varepsilon$で成り立つこと」

と定義されます(極小値の場合も不等号の向きが異なるだけでほぼ同様)。これを図形的に考え、かなりザックリ言い換えると次のようになります。ある点$\mathrm{P}(a,b)$で関数$f(x,y)$が極大値をもつとは、

「点$\mathrm{P}(a,b)$から任意の向きに進むと関数$f(x,y)$が減少する」

と言うことができるでしょう。これは山の頂上からどの向きに進んでも「下山」できることに似ています。本問(3)の点$(0,0)$のケースでは「どの向きに進んでも」の部分が満たされていないため、極値を取らないことが言えたのでした。このことを示すためにある向き(この場合は直線 $y=-x$ に沿った方向)について調べた、という訳です。直線 $y=-x$ 以外でも関数$f(x,y)$が一定値をとるような「向き」を見つけられればOKなのですが、なかなか難しいのが実際のところです。そういった意味では本問のように $D=0$ となるケースは極値判定が難しいことが多いと言えます。

因みに、本問の関数$f(x,y)$の場合は$f(x,y)$が$$(x + y) (x^2 – x y + x + y^2 + y)$$と因数分解できることから、$x+y=0$ のときに$f(x,y)$が恒等的に$0$をとることを見出すことができます(念の為に付しておきますが、本問の関数$f(x,y)$は「対称式」なので基本対称式の $x+y$ と $xy$ のみで表現することができます。これをヒントに因数分解を考えるのも賢い技と言えますね)。

 

(4)$f(x,y)=x^4+y^2+2x^2-4xy+1$

$f_{x}=4x^3+4x-4y$、$f_{y}=-4x+2y$ となるから、関数$f(x,y)$が極値をもつとしたら$$\begin{cases} 4x^3+4x-4y=0 \\ -4x+2y=0 \end{cases}$$の解である点$(x,y)$に限る。この連立方程式の解は$(x,y)=\left(-1,-2\right)$、$\left(0,0\right)$、$\left(1,2\right)$であるから、これが極値を与える点の候補となる。また、$f_{xx}=12x^2+4$、$f_{xy}=-4$、$f_{yy}=2$ となるので、判別式を用いて各点について調べる。

点$(0,0)$において $f_{xx}=4$、$f_{xy}=-4$、$f_{yy}=2$ となるから、判別式$D$は$$D=4 \cdot 2 – (-4)^2=-8<0$$となる。$D$が負なので関数$f(x,y)$は極値をとらない。

点$(\pm 1,2)$において $f_{xx}=16$、$f_{xy}=-4$、$f_{yy}=2$ となるから、判別式$D$は$$D=16 \cdot 2 – (-4)^2=16>0$$となる。$f_{xx}$が正なので関数$f(x,y)$は点$(\pm 1,2)$において極小値$0$をとる。

 

(5)$f(x,y)=x^2-xy+y^2+2x-y+7$

$f_{x}=2x-y+2$、$f_{y}=-x+2y-1$ となるから、関数$f(x,y)$が極値をもつとしたら$$\begin{cases} 2x-y+2=0 \\ -x+2y-1=0 \end{cases}$$の解である点$(x,y)$に限る。この連立方程式の解は $(x,y)=(-1,0)$ であるから、これが極値を与える点の候補となる。

$f_{xx}=2$、$f_{xy}=-1$、$f_{yy}=2$ となるので、判別式$D$は$$D=2 \cdot 2 – (-1)^2=3>0$$となる。$f_{xx}$が正なので関数$f(x,y)$は点$(-1,0)$において極小値$6$をとる。

 


 

復習例題は設定していません。

 


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