整数第4章目次

~数論の世界~

第4章 目次

・諸定理と数論の四方山話

このページは、受験整数問題の水準を超えたところにある数々の美しい数学的事実や未解決問題(open problem)を掲載した、言わば数論のギャラリーのようなものです。見た感じ未解決問題のオンパレードの様相を呈していますが・・・。それだけ数論の世界は奥深いということですね。


◎素数に関する諸定理 および open problems

素数定理
($n$番目の素数$p_n$について $n( \log n + \log ( \log n)-1)<p_n<n( \log n + \log ( \log n))$ が成り立つ)

Rosserの定理(ロッサーの定理)(1938年)
($n$番目の素数$p_n$について$p_n>n \log n$が成り立つ)

Feit–Thompson予想(ファイト・トンプソン予想)(未解決)
($\dfrac{p^q-1}{p-1}$が$\dfrac{q^p-1}{q-1}$を割り切るような異なる素数$p、q$の組は存在しない)

Goldbach予想(ゴールドバッハ予想)(未解決)
(すべての偶数は異なる2つの素数の和で表せるか?)

・亜ゴールドバッハ予想(←正確な名称を知りません)
(すべての偶数は異なる2つの素数の差で表せるか?)

双子素数は無数に存在するか?(未解決)
($p,p+2$の組)

Brunの定理(ブルンの定理(1919年))
(双子素数の逆数の和は一定値(ブルン定数:$1.902160583104…$)に収束する)

三つ子素数は無数に存在するか?(未解決)
($p,p+2,p+6$の組)

四つ子素数は無数に存在するか?(未解決)
($p,p+2,p+6,p+8$の組)

いとこ素数は無数に存在するか?(未解決)
($p,p+4$の組)

セクシー素数は無数に存在するか?(未解決)
($p,p+6$の組)

ソフィー=ジェルマン(Marie Sophie Germain)素数は無数に存在するか?(未解決)
($p,2p+1$の組)
(これは「安全素数は無数に存在するか?」と言い換えることができる。「安全素数」とは$p,\dfrac{p-1}{2}$がともに素数となるような素数$p$を指す。因みに「安全素数」という名称は暗号理論において素因数分解されにくい整数$N$を生成する性質を持つことに由来する)

4倍ソフィー=ジェルマン素数は無数に存在するか?(未解決)
($p,4p+3$の組)
(これも同様に「4倍安全素数は無数に存在するか?」と言い換えることができる)

※Cf.「カニンガムチェイン」

平衡素数は無数に存在するか?(未解決)
($n$番目の素数を$p_n$と表すとき $p_{n}=\dfrac{p_{n+1}+p_{n-1}}{2}$ を満たす3つの隣接する素数$p_{n+1},p_{n},p_{n-1}$の組が無数に存在するか?:$p_{n+1}-N=p_{n}=p_{n-1}+N$を満たす隣接3素数と自然数$N$の組が無数に存在するか?)

スーパー素数は無数に存在する
(「スーパー素数」とは素数列における素数番目の素数を指す)

ルシャンドル予想(未解決)
(すべての自然数$n$に対し$n^2$と$(n+1)^2$の間に素数が存在するか?)

ベルトラン=チェビシェフの定理(1850年)
(すべての自然数$n$に対し、$n$と$2n$の間に必ず素数が存在する)

ディリクレの算術級数定理(1837年)
($a$と$b$が互素なら $an+b$ 型の素数が無数に存在する)

$m$、$n$ が整数のとき $m^2+n^2$ 型の素数が無数に存在する(オイラー(1754年))

Friedlander–Iwaniecの定理(フリードランダー-イワニエツの定理(1997年))
(ある整数 $m$、$n$ を用いて $m^2+n^4$ の形で表わせる素数が無数に存在する)

Heath Brownの定理(ヒース=ブラウンの定理(2001年))
(ある整数 $m$、$n$ を用いて $m^3+2n^3$ の形で表わせる素数が無数に存在する)

Bunyakovsky予想(ブニャコフスキー予想)(未解決)
(係数が互いに素な正整数である2次以上の既約な多項式$f(n)$が素数となる自然数$n$は無数に存在する)

$n^2+1$ 型の素数は無数に存在するか?(未解決)

※これはオイラーの結果やFriedlander–Iwaniecの定理の特殊な場合というだけで、これらの定理から導かれる訳ではありません。

$n^3+1$ 型の素数は無数に存在するか?(未解決)

($k$を$2$以上の自然数として)$n^k+1$ 型の素数は無数に存在するか?(未解決)

メルセンヌ素数は無数に存在するか?(未解決)

フェルマー素数は無数に存在するか?(未解決)

レピュニット素数は無数に存在するか?(未解決)

フィボナッチ素数は無数に存在するか?(未解決)

ウィルソン素数は無数に存在するか?(未解決)
($p^2$が$(p-1)!+1$を割り切るような素数$p$を「ウィルソン素数」という)

ウィーフェリッチ素数は無数に存在するか?(未解決)
($p^2$が$2^{p-1}-1$を割り切るような素数$p$を「ウィーフェリッチ素数」という)

ベル素数は無数に存在するか?(未解決)
($n$個の要素から成る集合の分割の個数をベル(Bell)数という)

階乗素数($n! \pm 1$ 型の素数)は無数に存在するか?(未解決)

素数階乗素数($n \text{#} \pm 1$ 型の素数)は無数に存在するか?(未解決)
(※「素数階乗$n \text{#} $」とは$n$以下のすべての素数の積を指す)

※一般的に、二次以上の多項式中に素数が無数に存在するか否かについてはほとんど分かっていません。指数関数や漸化式で定められる数列に関しても素数を無数に含むか否かについて自明なもの($2^n$など)以外はほとんど分かっていません。


◎指数型ディオファントス方程式に関する諸定理 および open problems

Zsigmondyの定理(ジグモンディの定理)

【和の場合】
($a,b$を $a>b$ を満たす互いに素な正の整数とし、$n$を$2$以上の正の整数とする。
「$(a,b,n)=(2,1,3)$」のときを除いて以下が成り立つ。「$a^n+b^n$ の素因数で、$1 \leqq k \leqq n-1$ を満たすすべての整数$k$について $a^k+b^k$ の素因数でないものが存在する」)

【差の場合】
($a,b$を $a>b$ を満たす互いに素な正の整数とし、$n$を$2$以上の正の整数とする。
「$(a,b,n)=(2,1,6)$」のとき、および「$n=2$ かつ $a+b$ が$2$の巾乗」のときを除いて以下が成り立つ。「$a^n-b^n$ の素因数で、$1 \leqq k \leqq n-1$ を満たすすべての整数$k$について $a^k-b^k$ の素因数でないものが存在する」)

Catalan予想(カタラン予想)
(Mihăilescuの定理(ミハイレスクの定理))

($a,b \in \mathbb{N}>1$かつ $x^a-y^b=1$ を満たす$2$以上の非負整数組$(x,y)$は $\begin{cases} a=2 \\ b=3 \end{cases}$ のときの $\begin{cases} x=3 \\ y=2 \end{cases}$ に限る)
(※2002年にミハイレスクにより証明済み)

Tijdemanの定理
($x^m+1=y^n$ を満たす整数組$(m,n,x,y)$は高々有限個しか存在しない)

フェルマーの最終定理(フェルマー・ワイルズの定理)
($3$以上の整数$n$について、$x^n+y^n=z^n$ を満たす整数組$(x,y,z)$は存在しない)
(1995年にワイルズらによって解決済み)

Beal予想(ビール予想)(未解決)
(フェルマーの最終定理の一般化:$3$以上の整数$p,q,r$について、$x^p+y^q=z^r$ を満たすいずれも互いに素な整数組$(x,y,z)$は存在しない)
(※これは「フェルマー・カタラン予想」:「$\dfrac{1}{p}+\dfrac{1}{q}+\dfrac{1}{r}<1$ を満たす正整数$p,q,r$について、$x^p+y^q=z^r$ を満たすいずれも互いに素な$2$以上の整数組$(x,y,z)$は高々有限個しか存在しない」より強い予想です)
(※因みにこれを解決した人物には100万ドルの賞金が与えられることになっています)


◎単位分数・冪乗・階乗を含むディオファントス方程式に関する諸定理 および open problems

ヤコビの二平方定理
(自然数$n$の正の約数のうち、$4$で割ると$1$余るものが$a$個、$4$で割ると$3$余るものが$b$個存在するとき、方程式 $x^2+y^2=n$ の整数解$(x,y)$は、$4(a-b)$個存在する(※正整数組に限定すれば$a-b$個))

・素数$p$を$2$つの平方数(順不同)で表す方法は高々$1$通りである

ウェアリングの問題
(すべての自然数は幾つかの非負 $k \ (\geqq 2)$乗数の和で表すことができる)
(※1909年にヒルベルトによって解決済み)

Erdős–Straus(エルデス・シュトラウス)の予想(未解決)
($2$以上の任意の整数$n$について、$\dfrac{4}{n} = \dfrac{1}{x} + \dfrac{1}{y} + \dfrac{1}{z}$ を満たす正の整数$x,y,z$が存在する)

リュカのキャノンボール問題
($\displaystyle \sum_{n=1}^{N} n^2=M^2$)

Brocard(ブロカール)の問題(未解決)
($m!+1=n!$:一般化「$m!+A=n!$」)
(※ABC予想が真なら一般化した「$m!+A=n!$」の解の個数が高々有限個しか存在しないことが系として得られる)
(2017/12/17追記:ABC予想が望月教授によって肯定的に解決されたため、「$m!+A=n!$」の解の個数が有限個しか存在しないことが示されました!)

ラマヌジャン・ナーゲルの定理
($2^n – 7 = x^2$の自然数解が存在するのは$n=3$、$4$、$5$、$7$、$15$のときに限る)


◎その他の数論分野に関する諸定理 および open problems

Collatz予想(コラッツ予想(3n+1問題))(未解決)
任意の正の整数$n$を取り、

1.$n$が偶数の場合、$n$を$2$で割る
2.$n$が奇数の場合、$n$に$3$をかけて$1$を足す

という操作を次々に繰り返すと、あらゆる$n$に対して必ず有限回の操作で$1$に辿り着き、$1 \to 4 \to 2 \to 1$ と繰り返す。
(※2011年のセンター試験数ⅡB第6問で上記の演算に関する出題がありました)

・【定理】偶数の完全数は $2^{n-1}(2^n+1)$ で表され、かつ $2^n+1$ が素数であるものに限る。

偶数の完全数は無数に存在するか?(未解決)

奇数の完全数は存在するか?(未解決)

ゲルフォント=シュナイダーの定理(Gel’fond-Schneider’s theorem)
($\alpha$を$0$、$1$以外の代数的数、$\beta$を有理数ではない代数的数としたとき、$\alpha ^{\beta}$は、超越数である。)
※これにより$2^{\sqrt{2}}$や${\sqrt{2}}^{\sqrt{2}}$などが超越数であることが従う。


◎豆知識

♠ペル方程式の性質

方程式 $x^2-dy^2=1$ は無数の整数解を持つ。


♠レピュニット数$r_n$の性質など

※$r_{n+1}=10r_n+1$ で定められる数列を「repunit number」という。

 $r_n=\underbrace{111 \cdots 111}_{n個}$ と表される。

・$10$進法の性質
($12345678987654321$は平方数である)
$11^2=121$、
$111^2=12321$、
$1111^2=1234321$
$\ \ \ \ \ \ \vdots$
$111111111^2=12345678987654321$
$1111111111^2=1234567900987654321$

・数列$\{ r_n \}$の項で平方数であるものは $r_1=1$ のみである($\text{mod} \ 4$から示される)

・$2$、$5$を除くすべての素数が数列$\{ r_n \}$の何項目かの素因数として現れる(鳩ノ巣論法から示される)

・$r_n$の素因数には$r_1$、$r_2$、・・・、$r_{n-1}$のいずれの項の素因数でもないものが含まれる(Zsigmondyの定理から示される)


♠「ほとんど整数」である数(almost integer)

$e^{\pi}-\pi=19.9990999791895…$(ゲルフォントの定数と円周率の差)

$\cos\left(\log_e(\pi+20)\right)=-0.99999999924368013…$

$\sin 11=-0.9999902065507…$(※$11$はラジアンです)

$e^{\pi \sqrt{163}}=262537412640768743.99999999999925007…$(ラマヌジャンの定数)

$22 {\pi}^4=2143.0000027480532…$

$\pi^3-\dfrac{\pi}{500}=30.999993494992640…$

$88\log_e 89=395.0000005364…$

$\dfrac{1}{\sqrt[3]{3} \log_e 2}=1.0003088720501…$

$\dfrac{40 \pi}{\sqrt{3}+\sqrt{5}+\sqrt{7}}=19.0000263562872…$

$\log_e (3 \sin e +6 \pi)=2.9998189…$

$\sin 4 + \dfrac{3}{4} =-0.0068024953…$

$\dfrac{1}{2}e+e^{\frac{1}{2}}=3.0078621…$

$\dfrac{\pi^9}{e^8}=9.999838797804…$

$\dfrac{355}{\pi}=113.00000959524…$(この式は古代中国の数学者である祖沖之が得た円周率$\pi$の近似値$\dfrac{355}{113}$に由来する)

$\dfrac{1}{\pi}\ln\left(\dfrac{10+\sqrt{36+(\ln 2)^2}}{\ln 2}\right)=0.9999999840339956…$(楕円積分のLanden変換公式を背景とする)

$\dfrac{4034 \sqrt[5]{2}}{\pi}=1475.000000004168…$

$163(\pi-e)=68.9996644963…$

$\dfrac{2017 \cdot 2^{6/5}}{\pi}=1475.000000004168…$

$\left(\dfrac{23}{9}\right)^5=109.00003387…$

${45}^\frac{\gamma}{2}=3.000060964747…$($\gamma$はオイラーの定数)

$10(\gamma^{-\frac{1}{2}}-1)^2=0.999998036092…$($\gamma$はオイラーの定数)

など(この他の「almost integer」も絶賛募集中!)


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