問題4.4.7b
次の関数$f(x,y)$の、$D=\{(x,y)\ |\ x^2+y^2 \le 1\}$における最大値、最小値を求めよ。(ヒント:円の内部における極値(2変数関数の極値)と円周上での極値(条件付き極値)を調べよ。)
(2)$f(x,y)=x^2+y^2-x-y$
《ポイント》
ある有界閉集合$D$において関数$f$が連続であれば、$D$において$f$を最大・最小にする点が存在します。一般にはラグランジュの未定乗数法から求めた極大・極小値が最大・最小値に一致します。問題文では特に触れられていないので取っつきにくい問題ですが、これらの事実は既知として解答して差し支えないでしょう。解答の流れは基本的に問題文中のヒントに従います。
《解答例》
(2)$f(x,y)=x^2+y^2-x-y$
$x^2+y^2 < 1$ のときを考える。
$f_{x}=2x-1$、$f_{y}=2y-1$ となるから、関数$f(x,y)$が極値をもつとしたら$$\begin{cases} 2x-1=0 \\ 2y-1=0 \end{cases}$$の解である点$(x,y)$に限る。この連立方程式の解は $(x,y)=\left(\dfrac{1}{2},\dfrac{1}{2}\right)$ であり、これは$D$内の点であるから、これが極値を与える点の候補となる。$f_{xx}=2$、$f_{xy}=0$、$f_{yy}=2$ となるので、判別式は$$\begin{align}&\ \ \ \ f_{xx}f_{yy}-{f_{xy}}^2 \\ &= 2 \cdot 2 – 0^2 \\ &=4>0 \end{align}$$となる。$D$が正なので点$\left(\dfrac{1}{2},\dfrac{1}{2}\right)$において関数$f(x,y)$は極小値$-\dfrac{1}{2}$をとる。
次に $x^2+y^2 = 1$ のときを考える。$$f(x,y,\lambda)=x^2+y^2-x-y-\lambda(x^2+y^2-1)$$と置くと$$\begin{cases} F_x=2x-1-2\lambda x=0 &\cdots ① \\ F_y=2y-1-2\lambda y=0 &\cdots ② \\ -F_{\lambda}=x^2+y^2-1=0 &\cdots ③ \end{cases}$$となる。$①-②$より$$2(x-y)-2\lambda(x-y)=0$$ $$\therefore (1-\lambda)(x-y)=0$$ $$\therefore \lambda=1 \ \ \ \text{or} \ \ \ y=x$$を得る。$\lambda=1$ とすると$①$より $-1=0$ となり不合理。$y=x$ とすると$③$より$$\therefore x=y=\pm \dfrac{1}{\sqrt{2}}$$を得る。故に極値をとるためには $(x,y)=\left(\pm \dfrac{1}{\sqrt{2}}, \pm \dfrac{1}{\sqrt{2}}\right)$ であることが必要である。点$\mathrm{P}_1\left(\dfrac{1}{\sqrt{2}},\dfrac{1}{\sqrt{2}}\right)$の近傍における陰関数 $y=\varphi_1(x)$ を$③$に代入して両辺を繰り返し微分すると、$$\begin{cases} 2x+2\varphi_1(x)\varphi_1^{\prime}(x)=0 &\cdots ④ \\ 2+2\{\varphi_1^{\prime}(x)\}^2+2\varphi_1(x)\varphi_1^{\prime\prime}(x)=0 &\cdots ⑤ \end{cases}$$となる。$④$、$⑤$より $x=\dfrac{1}{\sqrt{2}}\ \left(\varphi_1\left(\dfrac{1}{\sqrt{2}}\right)=\dfrac{1}{\sqrt{2}}\right)$ とすると$$\varphi_1^{\prime}\left(\dfrac{1}{\sqrt{2}}\right)=-1、\varphi_1^{\prime\prime}\left(\dfrac{1}{\sqrt{2}}\right)=-2\sqrt{2}$$となる。$p(x)=x^2+\{\varphi_1(x)\}^2-x-\varphi_1(x)$ と置くと、$$\begin{cases} p^{\prime}(x)=2x+2\varphi_1(x)\varphi_1^{\prime}(x)-1-\varphi_1^{\prime}(x) \\ p^{\prime\prime}(x)=2+2\{\varphi_1^{\prime}(x)\}^2+2\varphi_1(x)\varphi_1^{\prime\prime}(x)-\varphi_1^{\prime\prime}(x) \end{cases}$$となるから、$$p^{\prime}\left(\dfrac{1}{\sqrt{2}}\right)=0、p^{\prime\prime}\left(\dfrac{1}{\sqrt{2}}\right)=2\sqrt{2}>0$$となる。よって$p(x)$は $x=\dfrac{1}{\sqrt{2}}$ で極小値 $1-\sqrt{2}$ をとる。
点$\mathrm{P}_2\left(-\dfrac{1}{\sqrt{2}},-\dfrac{1}{\sqrt{2}}\right)$についても同様に調べると、$q(x)=f(x,\varphi_2(x))=x^2+\{\varphi_2(x)\}^2-x-\varphi_2(x)$ は $x=-\dfrac{1}{\sqrt{2}}$ で極大値 $1+\sqrt{2}$ をとる。
以上より、$f(x,y)=x^2+y^2-x-y$ は範囲$D$において点$\left(-\dfrac{\sqrt{2}}{2},-\dfrac{\sqrt{2}}{2}\right)$で最大値 $1+\sqrt{2}$、点$\left(\dfrac{1}{2},\dfrac{1}{2}\right)$で最小値 $-\dfrac{1}{2}$ をとる。
復習例題は設定していません。