問題5.3.6
平面の領域$D$の境界上に原点が存在しなければ、次が成り立つことを示せ。$$\displaystyle \int_{\partial D}\dfrac{-ydx+xdy}{x^2+y^2}=\begin{cases} 2\pi &((0,0) \in D) \\ \ 0 &((0,0) \not\in D) \end{cases}$$
《ポイント》
問題5.3.4で証明した事実を利用します。教科書の中でも少し触れられていますが、グリーンの定理は領域内に不連続な点(特異点)が存在すると適用できないので、領域$D$の内部に原点が存在する場合は、原点を含む領域と含まない領域に分割する必要があります。
《解答例》
$(0,0) \not\in D$ のとき $P(x,y)=\dfrac{-y}{x^2+y^2}$、$Q(x,y)=\dfrac{x}{x^2+y^2}$ は領域$D$において$C^1$級で$$P_y(x,y)=Q_x(x,y) \left(=\dfrac{-x^2+y^2}{(x^2+y^2)^2}\right)$$を満たす。よって、$$\begin{align}\displaystyle \int_{\partial D}\dfrac{-ydx+xdy}{x^2+y^2}&=\int_{\partial D}P(x,y)dx+Q(x,y)dy \\ &=\iint_{D}\left(Q_x(x,y)-P_y(x,y)\right)dxdy \\ &=0 \end{align}$$となる。
$(0,0) \in D$ のとき、領域$D$を、原点を含む半径$r$の円$C\ (\in D)$と、領域$D$から領域$C$を除いた領域$E$に分ける。このとき、$$\displaystyle \int_{\partial D}\dfrac{-ydx+xdy}{x^2+y^2}=\int_{E}\dfrac{-ydx+xdy}{x^2+y^2}+\int_{C}\dfrac{-ydx+xdy}{x^2+y^2}$$となる。領域$E$は原点を含まないので、$\displaystyle \int_{E}\dfrac{-ydx+xdy}{x^2+y^2}$は前半の議論により$0$となる。したがって$$\displaystyle \int_{\partial D}\dfrac{-ydx+xdy}{x^2+y^2}=\int_{C}\dfrac{-ydx+xdy}{x^2+y^2}$$となる。
ここで $\theta$($\theta:0 \to 2\pi$)をパラメータとして $x=r \cos \theta$、$y=r \sin \theta$ と置くと、$dx=-r \sin \theta \ d\theta$、$dy=r \cos \theta \ d\theta$ となるから、$$\begin{align}&\ \ \ \ \ \displaystyle \int_{C}\dfrac{-ydx+xdy}{x^2+y^2} \\ &=\int^{2\pi}_{0}\dfrac{-r \sin \theta\cdot (-r \sin \theta)+r \cos \theta \cdot r \cos \theta}{r^2}d\theta \\ &=\int^{2\pi}_{0}(\sin^2 \theta+\cos^2 \theta)d\theta \\ &=\int^{2\pi}_{0}d\theta \\ &=2\pi \end{align}$$と求められる。
以上により、関係式$$\displaystyle \int_{\partial D}\dfrac{-ydx+xdy}{x^2+y^2}=\begin{cases} 2\pi &((0,0) \in D) \\ \ 0 &((0,0) \not\in D) \end{cases}$$が成り立つことが示された。
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※領域$D$を分割する際、原点を含む領域は必ずしも円である必要はないのですが、その後の計算のしやすさを考えると円で分割するのが最も適切な方法だと言えます。
復習例題は設定していません。