問題1.3.4
双曲線関数について、以下の関係式が成り立つことを示せ。
(1)$\cosh^2 x -\sinh^2 x =1$
(2)$\sinh (x \pm y)=\sinh x \cosh y \pm \cosh x \sinh y$
(3)$\cosh (x \pm y)=\cosh x \cosh y \pm \sinh x \sinh y$
《ポイント》
$x=\cos \theta$、$y=\sin \theta$というパラメータ表示された点$(x,y)$は円$x^2+y^2=1$を描きますが、全実数$t$を用いて$x=\cosh t$、$y=\sinh t$とパラメータ表示された点$(x,y)$は双曲線$x^2-y^2=1$の右側($x>0$の部分)を描きます。これが双曲線関数という名前の由来です(これを知っていれば多少は忘れにくくなるはず)。このことを確認するのが(1)です。
数Ⅲの双曲線の積分などでは$x =\dfrac{e^t+e^{-t}}{2}$といった置換が有効なのですが、これは$\cosh t$に他なりません。
問題を解くにあたって、$\sinh x =\dfrac{e^x-e^{-x}}{2}$、$\cosh x =\dfrac{e^x+e^{-x}}{2}$という定義をまず覚えてしまいましょう。
《解答例》
(1)
$\begin{align} \cosh^2 x -\sinh^2 x &= \left( \dfrac{e^x+e^{-x}}{2} \right)^2 \left( \dfrac{e^x-e^{-x}}{2} \right)^2 \\ &=\dfrac{e^2x+2+e^{-2x}}{4}-\dfrac{e^2x-2+e^{-2x}}{4} \\ &=1\end{align}$
$\therefore \cosh^2 x -\sinh^2 x =1$
(2)
$\sinh (x \pm y)=\dfrac{e^{x \pm y}-e^{-x \mp y}}{2}$ である。また、
$\begin{align} & \ \ \ \ \sinh x \cosh y \pm \cosh x \sinh y \\ &=\dfrac{e^x-e^{-x}}{2} \cdot \dfrac{e^y+e^{-y}}{2} \pm \dfrac{e^x+e^{-x}}{2} \cdot \dfrac{e^y-e^{-y}}{2} \\ &=\dfrac{e^{x + y}-e^{-x + y}+e^{x – y}-e^{-x – y}}{4} \pm \dfrac{e^{x + y}+e^{-x + y}-e^{x – y}-e^{-x – y}}{4} \\ &=\dfrac{e^{x \pm y}-e^{-x \mp y}}{2} \end{align}$
であるから、$\sinh (x \pm y)=\sinh x \cosh y \pm \cosh x \sinh y$が成立する。
(3)
$\cosh (x \pm y)=\dfrac{e^{x \pm y}+e^{-x \mp y}}{2}$ である。また、
$\begin{align} &\ \ \ \ \cosh x \cosh y \pm \sinh x \sinh y \\ &=\dfrac{e^x+e^{-x}}{2} \cdot \dfrac{e^y+e^{-y}}{2} \pm \dfrac{e^x-e^{-x}}{2} \cdot \dfrac{e^y-e^{-y}}{2} \\ &=\dfrac{e^{x + y}+e^{-x + y}+e^{x – y}+e^{-x – y}}{4} \pm \dfrac{e^{x + y}-e^{-x + y}-e^{x – y}+e^{-x – y}}{4} \\ &=\dfrac{e^{x \pm y}+e^{-x \mp y}}{2} \end{align}$
であるから、$\cosh (x \pm y)=\cosh x \cosh y \pm \sinh x \sinh y$が成立する。
《コメント》
慎重に計算すればOKです。目的の式がはっきりしているので式変形にも困らないでしょう。
復習例題1.3.4
曲線 $y=\cosh x$、曲線 $y=\sinh x$、$y$軸および直線 $x=1$ で囲まれた図形を$x$軸のまわりに1回転してできる立体の体積を求めよ。
(※積分は範囲外ですが、(1)で示した性質が利用できるので掲載します)