微積1.4.3

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問題1.4.3

$\displaystyle \lim_{n \to \infty} a_n= \alpha$ならば、$\displaystyle \lim_{n \to \infty} \dfrac{a_1+2a_2 + \cdots +n a_n}{1+2+\cdots+n}= \alpha$を示せ。

 

《ポイント》

こちらは教科書に解答がありません。巻末の解答には例題1.4.1を参照せよとあります。例題1.4.1のものは「チェザロ平均」と呼ばれ、$\varepsilon$論法の有名な例題として扱われることの多いもので、この問題の平均は言うなれば「重み付きチェザロ平均」といった具合です。

$a_n$の正体が不明なので$\varepsilon$論法に頼らざるを得ません。難しめの問題です。

 


 

《解答例》

$b_n=\dfrac{a_1+2a_2+⋯+na_n}{1+2+⋯+n}$と定める。

$$\begin{align} |b_n-\alpha| &=\left|\dfrac{a_1+2a_2+⋯+na_n}{1+2+⋯+n}-\alpha \right|
\\ &=\left| \dfrac{(a_1-\alpha)+2(a_2-\alpha)+⋯+n(a_n-\alpha)}{1+2+⋯+n} \right| \ \cdots (\ast) \end{align}$$

いま、仮定より数列$\{a_n\}$は$\alpha$に収束するから、ある自然数$k$が存在して、$k$より大きい自然数$n$に対して$|a_n-\alpha|<\varepsilon_1$が成立している。・・・・・・($\clubsuit$)
ただし$\varepsilon_1$は任意の正の実数である。

ここで、数列$\{a_n\}$の初項から第$k$項までの各項と$\alpha$との差の絶対値
$|a_1-\alpha|$、$|a_2-\alpha|$、$\cdots$、$|a_k-\alpha|$のうち最大のものを$d_k$と置く。
ただし$0<k<n$とする。このとき、$\{a_n\}$の第$k$項までに関して、$$\begin{align} \dfrac{|a_1-\alpha|+2|a_2-\alpha|+⋯+k|a_k-\alpha|}{1+2+⋯+k} & \leqq \dfrac{d_k+⋯+kd_k}{1+2+⋯+k} \\ &=\dfrac{{1+2+⋯+k}}{1+2+⋯+k} d_k \\ &=d_k \end{align}$$となる。故に$$|a_1-\alpha|+2|a_2-\alpha|+⋯+k|a_k-\alpha| \leqq (1+2+⋯+k)d_k$$が成立するから、$$\dfrac{|a_1-\alpha|+2|a_2-\alpha|+⋯+k|a_k-\alpha|}{1+2+⋯+n} \leqq \dfrac{{1+2+⋯+k}}{1+2+⋯+n} d_k$$が成立する。$k$、$d_k$は定数だから、$\displaystyle \lim_{n \to \infty} \dfrac{1+2+⋯+k}{1+2+\cdots+n}d_k= 0$
である。よって$n>l$ならば常に$\dfrac{1+2+⋯+k}{1+2+⋯+n} d_k<\varepsilon_2$となるような自然数$l$が存在する ・・・・・・($\spadesuit$)

ただし$\varepsilon_2$は任意の正の実数である。

自然数$m$が$k$もしくは$l$のうち大きい方を表すとすると、($\clubsuit$)、($\spadesuit$)より、

$$\begin{align} (\ast) & \leqq \dfrac{|a_1-\alpha|+2|a_2-\alpha|+⋯+m|a_m-\alpha|}{1+2+⋯+n} \\ & \ \ \ \ +\dfrac{(m+1)|a_{m+1}-\alpha|+(m+2)|a_2-\alpha|+⋯+n|a_n-\alpha|}{1+2+⋯+n}
\\ & \leqq \dfrac{1+2+⋯+m}{1+2+⋯+n} d_m+\left\{ 1-\dfrac{1+2+⋯+m}{1+2+⋯+n} \right\} \varepsilon_1 \\ &<\varepsilon_2+\varepsilon_1 \end{align}$$

が成立する。$\varepsilon_2+\varepsilon_1=\varepsilon$と置けば、$\varepsilon$は任意の正の実数をとるから、$n>m$ならば$|b_n-\alpha|<\varepsilon$が成り立つようなある自然数$m$が存在していることが示された。

以上より$\displaystyle \lim_{n \to \infty} a_n= \alpha$ならば、$\displaystyle \lim_{n \to \infty} \dfrac{a_1+2a_2 + \cdots +n a_n}{1+2+\cdots+n}= \alpha$である。

 


 

《コメント》

大型の証明になりましたが、基本は極限値との差を各項毎に考えるという点に尽きます。上から抑えるための技が幾つか使われているので研究してみましょう。

 


 

復習例題は設定していません。

 


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