問題1.4.4
$\displaystyle \lim_{n \to \infty} (a_{n+1} -a_n)= \alpha$ならば、$\displaystyle \lim_{n \to \infty} \dfrac{a_n}{n}= \alpha$を示せ。
《ポイント》
$a_{n+1} -a_n=b_n$などと置けば、例題1.4.1と全く同じになります。$a_n$のままでも証明できますが、階差数列を設定した方が簡単です。
《解答例》
$b_n=a_n-a_{n-1}\ (n>2)$、$b_1=a_1$と定めると、
$a_n=b_n+b_{n-1}+\cdots+b_2+b_1$と表せるから、
$\dfrac{a_n}{n}=\dfrac{b_n+b_{n-1}+\cdots+b_2+b_1}{n}$となる。よって
$\begin{align} \left|\dfrac{a_n}{n}-\alpha \right| &=\left| \dfrac{b_n+b_{n-1}+\cdots+b_2+b_1}{n}-\alpha \right| \\ &=\left|\dfrac{(b_1-\alpha)+(b_2-\alpha)+\cdots+(b_n-\alpha)}{n} \right| \ \cdots (\ast) \end{align}$
いま、仮定より数列$b_n$は$\alpha$に収束するから、ある自然数$k$が存在して、$k$より大きい自然数$n$に対して$|b_n-\alpha|<\varepsilon_1$が成立している。・・・($\clubsuit$)
ただし$\varepsilon_1$は任意の正の実数である。
ここで、数列$\{ b_n \}$の初項から第$k$項までの各項と$\alpha$との差の絶対値$|b_1-\alpha|、|b_2-\alpha|、\cdots、|b_k-\alpha|$のうち最大のものを$d_k$と置く。
ただし$0<k<n$とする。このとき$b_n$の第$k$項までに関して、
$$ \dfrac{|b_1-\alpha|+\cdots+|b_k-\alpha|}{k} \leqq \dfrac{d_k+\cdots+d_k}{k}=d_k $$
であり、$|b_1-\alpha|+\cdots+|b_k-\alpha| \leqq k \cdot d_k$が成立するから、
$$\dfrac{|b_1-\alpha|+\cdots+|b_k-\alpha|}{n} \leqq \dfrac{k}{n} d_k$$
が成立する。$k$、$d_k$は定数だから、$\displaystyle \lim_{n\to \infty} \dfrac{k}{n} d_k =0$である。よって$n>l$ならば常に$\dfrac{k}{n} d_k<\varepsilon_2$となるような自然数$l$が存在する。・・・($\spadesuit$)
ただし$\varepsilon_2$は任意の正の実数である。
自然数$m$が$k$もしくは$l$のうち大きい方を表すとすると、($\clubsuit$)、($\spadesuit$)より、
$\begin{align} (\ast) & \leqq \dfrac{|b_1-\alpha|+\cdots+|b_m-\alpha|}{n}+\dfrac{|b_{m+1}-\alpha|+\cdots+|b_n-\alpha|}{n} \\ & \leqq \dfrac{m}{n} d_m+\left(1- \dfrac{m}{n} \right) \varepsilon_1 \\ & <\varepsilon_2+\varepsilon_1 \end{align}$
が成立する。$\varepsilon_2+\varepsilon_1=\varepsilon$と置けば、$\varepsilon$は任意の正の実数であるから、$n>m$ならば$|\dfrac{a_n}{n}-\alpha|<\varepsilon$が成り立つようなある自然数$m$が存在していることが示された。
以上より$\displaystyle \lim_{n \to \infty} (a_{n+1} -a_n)= \alpha$ならば、$\displaystyle \lim_{n \to \infty} \dfrac{a_n}{n}= \alpha$である。
《コメント》
問題1.4.3に続いて難しめの問題です。ポイントの欄でも述べましたが、本問は教科書の例題1.4.1
「$\displaystyle \lim_{n \to \infty} a_n= \alpha$ならば、$\displaystyle \lim_{n \to \infty} \dfrac{a_1+a_2 + \cdots +a_n}{n}= \alpha$を示せ。」
と同一です。
復習例題は設定していません。