問題4.1.1
極限値を求めよ。
(1) $\displaystyle \lim_{(x,y) \to (0,0)} \dfrac{x^2 y}{x^2+y^2}$
(2) $\displaystyle \lim_{(x,y) \to (0,0)} \dfrac{x^2-2y^2}{x^2+y^2}$
(3) $\displaystyle \lim_{(x,y) \to (0,0)} \dfrac{x^2+2y^2}{2x^2+y^2}$
(4) $\displaystyle \lim_{(x,y) \to (0,0)} \dfrac{x^3+x^2 y}{2x^2+y^2}$
(5) $\displaystyle \lim_{(x,y) \to (0,0)} \dfrac{x\sqrt{|y|}}{\sqrt{x^2+y^2}}$
(6) $\displaystyle \lim_{(x,y) \to (0,0)} \dfrac{xy^2}{x^2+y^4}$
《ポイント》
2変数関数の極限値を問う問題はこの単元の基礎になっています。まずは分母に着目し、どのような近付け方が適切か、またどのような不等関係による評価が必要なのか、よく吟味する必要があります。
《解答例》
(1)
$x=r\cos \theta$、$y=r\sin \theta$ と置くと、
$$\begin{align} \displaystyle \lim_{(x,y) \to (0,0)} \dfrac{x^2 y}{x^2+y^2} &=\displaystyle \lim_{r \to 0} \dfrac{r^3 \cos^2 \theta \sin \theta}{r^2} \\ &=\displaystyle \lim_{r \to 0}\ r\cos^2 \theta \sin \theta \\ &=0 \end{align}$$となる。これより$x$、$y$の近付け方によらず極限が一致し、極限値 $0$ が存在する。
(答)$0$
(2)
$x=0$ とすると$$\begin{align} \displaystyle \lim_{(x,y) \to (0,0)} \dfrac{x^2-2y^2}{x^2+y^2} &=\displaystyle \lim_{y \to 0} \dfrac{-2y^2}{y^2} \\ &=-2 \end{align}$$となり、$y=0$ とすると$$\begin{align} \displaystyle \lim_{(x,y) \to (0,0)} \dfrac{x^2-2y^2}{x^2+y^2} &=\displaystyle \lim_{x \to 0} \dfrac{x^2}{x^2} \\ &=1 \end{align}$$となる。これより$x$、$y$の近付け方によって極限が異なるため、極限値は存在しない。
(答)存在しない
(3)
$x=0$ とすると$$\begin{align} \displaystyle \lim_{(x,y) \to (0,0)} \dfrac{x^2+2y^2}{2x^2+y^2} &=\displaystyle \lim_{y \to 0} \dfrac{2y^2}{y^2} \\ &=2 \end{align}$$となり、$y=0$ とすると$$\begin{align} \displaystyle \lim_{(x,y) \to (0,0)} \dfrac{x^2+2y^2}{2x^2+y^2} &=\displaystyle \lim_{x \to 0} \dfrac{x^2}{2x^2} \\ &=\dfrac{1}{2} \end{align}$$となる。これより$x$、$y$の近付け方によって極限が異なるため、極限値は存在しない。
(答)存在しない
(4)
$x=r\cos \theta$、$y=r\sin \theta$ と置くと、
$$\begin{align} \displaystyle \lim_{(x,y) \to (0,0)} \dfrac{x^3+x^2 y}{2x^2+y^2} &=\displaystyle \lim_{r \to 0} \dfrac{r^3 (\cos^3 \theta+ \cos^2 \theta \sin \theta)}{r^2(2\cos^2 \theta+ \sin^2 \theta)} \\ &=\displaystyle \lim_{r \to 0}\ r\dfrac{\cos^3 \theta+ \cos^2 \theta \sin \theta}{2\cos^2 \theta+ \sin^2 \theta} \\ &=0 \end{align}$$となる。これより$x$、$y$の近付け方によらず極限が一致し、極限値 $0$ が存在する。
(答)$0$
(5)
$x=r\cos \theta$、$y=r\sin \theta$ と置くと、
$$\begin{align} \displaystyle \lim_{(x,y) \to (0,0)} \dfrac{x\sqrt{|y|}}{\sqrt{x^2+y^2}} &=\displaystyle \lim_{r \to 0} \dfrac{r^{\frac{3}{2}} \cos \theta \sqrt{|\sin \theta|}}{r} \\ &=\displaystyle \lim_{r \to 0}\ r^{\frac{1}{2}} \cos \theta \sqrt{|\sin \theta|} \\ &=0 \end{align}$$となる。これより$x$、$y$の近付け方によらず極限が一致し、極限値 $0$ が存在する。
(答)$0$
(6)
$x=0$ とすると$$\begin{align} \displaystyle \lim_{(x,y) \to (0,0)} \dfrac{xy^2}{x^2+y^4} &=\displaystyle \lim_{y \to 0} \dfrac{0}{y^4} \\ &=0 \end{align}$$となり、$y=\sqrt{x}$ とすると$$\begin{align} \displaystyle \lim_{(x,y) \to (0,0)} \dfrac{xy^2}{x^2+y^4} &=\displaystyle \lim_{x \to 0} \dfrac{x^2}{2x^2} \\ &=\dfrac{1}{2} \end{align}$$となる。これより$x$、$y$の近付け方によって極限が異なるため、極限値は存在しない。
(答)存在しない
※上記の解答例では直線 $x=0$ に沿った近付け方と曲線 $y=\sqrt{x}$ に沿った近付け方を比較していますが、曲線 $y=-\sqrt{x}$ や曲線 $y=\sqrt{-x}$ に沿った近付け方と比較しても構わないでしょう。
復習例題は設定していません。