問題1.1.5b
(3)無限小数$\alpha$が循環小数ならば$\alpha$は有理数であることを示せ。
(4)任意の実数$\alpha$は有限または無限小数で表されることを示せ。
(5)任意の実数$\alpha$はある単調増加な有理数列の極限となることを示せ。
《ポイント》
抽象的な議論であっても、できるだけ具体的に考えましょう。まず(3)では無限小数とはどのような数であったかを思い出しましょう。$\alpha$を具体的に表して示します。
《解答例》
(3)
十進法で表記して$\alpha=0.\underline{abc \cdots xyz}abc \cdots$のとき、循環部分(下線部分)が計$n$桁だとすると、
$10^n \alpha – \alpha=abc \cdots xyz$(整数)
となり、$\alpha=\dfrac{abc \cdots xyz}{10^n-1}$と表せるから$\alpha$は有理数である。
$\alpha$の循環部分が小数第$k$位から始まっているとき、$\alpha$に$10^k$を乗じることで同様に$10^k \alpha$が有理数であることが示される。$10^k \alpha$が有理数のとき、$\alpha$も有理数である。
さらに$\alpha$に整数部分があるとき、$\alpha$の小数部分について上記同様の議論が可能であり、$\alpha$の小数部分が有理数だから、$\alpha$自体も有理数である。
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(4)、(5)
$a_n=0.m_1 m_2 \cdots m_n$と置き、$\alpha$の小数部分を$〈\alpha〉$ と表す。ただし$m_i$($i$:自然数)は$0$~$9$のいずれかの自然数である。
任意の$\alpha$に対して
$$a_n=0.m_1 m_2 \cdots m_n \leqq〈\alpha〉< a_n+\dfrac{1}{10^n}=0.m_1 m_2 \cdots m_n+\dfrac{1}{10^n}$$
を満たす数列$\{a_n\}$が定義できて、ある$n$で等号が成立するとき$\alpha$は有限小数として表せる。すべての$n$で等号不成立のとき$a_n$の小数第$n$位の数$m_n$は無数に存在し、不等式$〈α〉-\dfrac{1}{10^n} <a_n<〈α〉$と実数の連続性により$$\displaystyle \lim_{n \to \infty} a_n=〈α〉$$であるから、$\alpha$は無限小数として表せる。
以上より任意の実数$\alpha$は有限または無限小数として表せる。
また、上記の数列$\{a_n\}$は単調な有理数列であるから、任意の実数$\alpha$は単調な有理数列の極限となることが示された。
《コメント》
(3)は実数の種類で場合分けしてすべての場合を考える必要があります。
(4)、(5)はまとめて示すことができるように十進法による表示をそのまま数列として設定しました。教科書の「無限小数」の項に書いてあることをマジメにやると解答例のような操作になります。
本問のような実数の表記法をテーマとした問題は大学入試にも時々出題されています。(cf.2016年東大理科前期etc…)
この問題に復習例題は設定していません。