問題4.1.3
次の関数 $z=f(x,\ y)$ の原点における連続性を調べよ。
(1) $z=\begin{cases} \dfrac{x^3+y^3}{x^2+y^2} \ \ &((x,\ y) \ne (0,\ 0)) \\ \ \ \ \ \ \ 0 \ \ &((x,y)=(0,\ 0)) \end{cases}$
(2) $z=\begin{cases} \dfrac{x^2+y^2}{x^2+2y^2} \ \ &((x,\ y) \ne (0,\ 0)) \\ \ \ \ \ \ \ 0 \ \ &((x,\ y)=(0,\ 0)) \end{cases}$
(3) $z=\begin{cases} \dfrac{x^4+x^2+y^2+y^3}{x^2+2y^2} \ \ &((x,\ y) \ne (0,\ 0)) \\ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ 1 \ \ &((x,\ y)=(0,\ 0)) \end{cases}$
《ポイント》
連続性に関する議論を苦手とする人が多いですが、苦手意識を持っている人は大抵の場合、1変数関数の連続性の証明なども苦手であることがほとんどです。1変数関数の場合は数直線上の議論で事足りたのに対して、2変数関数の場合は「円」で考える必要があります。これによりあらゆる方向からの近付け方が網羅できることになります。
大半の問題は原点での連続性が問題となりますが、たまに原点以外の点での連続性が問題となることがあります。本質的な考え方として、ある点$\mathrm{P}(a,\ b)$における連続性を調べたい場合は点$\mathrm{P}$を中心とする円を考えればよいので、$$\begin{cases} x=a+r\cos \theta \\ y=b+r\sin \theta \end{cases}$$と置き換えるのが常道です。大抵の問題では $a=b=0$ の場合について訊かれるため、原点以外の点での連続性を証明させる問題を出すと忽ちペンが止まる人が出てきますが、やっていることの数学的な意味を理解していれば何ということもないですよね?
《解答例》
(1) $z=\begin{cases} \dfrac{x^3+y^3}{x^2+y^2} \ \ &((x,\ y) \ne (0,\ 0)) \\ 0 \ \ &((x,y)=(0,\ 0)) \end{cases}$
$(x,\ y) \ne (0,\ 0)$ のとき、$x^2+y^2 \ne 0$ であるから$z$は連続である。よって問題になるのは原点における連続性であるから、極限$\displaystyle \lim_{(x,y) \to (0,0)} \dfrac{x^3+y^3}{x^2+y^2}$が存在するかどうかを確かめればよい。
そこで、$x=r\cos \theta$、$y=r\sin \theta$ と置くと、
$$\begin{align} \displaystyle \lim_{(x,y) \to (0,0)} \dfrac{x^3+y^3}{x^2+y^2} &=\displaystyle \lim_{r \to 0} \dfrac{r^3 (\cos^3 \theta +\sin^3 \theta)}{r^2} \\ &=\displaystyle \lim_{r \to 0}\ r(\cos^3 \theta +\sin^3 \theta) \\ &=0 \end{align}$$となる。$x$、$y$の近付け方によらず極限が $0$ に一致するので、$(x,y) \to (0,0)$ における$z$の極限値は $0$ である。故に$z$は原点において連続である。
(答)連続
※問題文中に「原点における連続性を調べよ」とあるので、いきなり $x=r\cos \theta$、$y=r\sin \theta$ と置くところから始めても構わないでしょう。
(2) $z=\begin{cases} \dfrac{x^2+y^2}{x^2+2y^2} \ \ &((x,\ y) \ne (0,\ 0)) \\ 0 \ \ &((x,\ y)=(0,\ 0)) \end{cases}$
$(x,\ y) \ne (0,\ 0)$ のとき、$x^2+2y^2 \ne 0$ であるから$z$は連続である。よって問題になるのは原点における連続性であるから、極限$\displaystyle \lim_{(x,y) \to (0,0)} \dfrac{x^2+y^2}{x^2+2y^2}$が存在するかどうかを確かめればよい。
$x=0$ とすると$$\begin{align} \displaystyle \lim_{(x,y) \to (0,0)} \dfrac{x^2+y^2}{x^2+2y^2} &=\displaystyle \lim_{y \to 0} \dfrac{y^2}{2y^2} \\ &=\dfrac{1}{2} \end{align}$$となり、$y=0$ とすると$$\begin{align} \displaystyle \lim_{(x,y) \to (0,0)} \dfrac{x^2+y^2}{x^2+2y^2} &=\displaystyle \lim_{x \to 0} \dfrac{x^2}{x^2} \\ &=1 \end{align}$$となる。これより$x$、$y$の近付け方によって極限が異なるため、極限値$\displaystyle \lim_{(x,y) \to (0,0)} \dfrac{x^2+y^2}{x^2+2y^2}$は存在しない。したがって$z$は原点において連続でない。
(答)不連続
(3) $z=\begin{cases} \dfrac{x^4+x^2+y^2+y^3}{x^2+y^2} \ \ &((x,\ y) \ne (0,\ 0)) \\ 1 \ \ &((x,\ y)=(0,\ 0)) \end{cases}$
$(x,\ y) \ne (0,\ 0)$ のとき、$x^2+y^2 \ne 0$ であるから$z$は連続である。よって問題になるのは原点における連続性であるから、極限$\displaystyle \lim_{(x,y) \to (0,0)} \dfrac{x^4+x^2+y^2+y^3}{x^2+y^2}$が存在するかどうかを確かめればよい。
そこで、$x=r\cos \theta$、$y=r\sin \theta$ と置くと、
$$\begin{align}&\displaystyle \lim_{(x,y) \to (0,0)} \dfrac{x^4+x^2+y^2+y^3}{x^2+y^2} \\ &=\displaystyle \lim_{r \to 0} \dfrac{r^2 (r^2\cos^4 \theta +\cos^2 \theta+\sin^2 \theta+r\sin^3 \theta)}{r^2} \\ &=\displaystyle \lim_{r \to 0} \dfrac{r^2 (r^2\cos^4 \theta +1+r\sin^3 \theta)}{r^2} \\ &=\displaystyle \lim_{r \to 0} r(r\cos^4 \theta +\sin^3 \theta)+1 \\ &=1 \end{align}$$となる。$x$、$y$の近付け方によらず極限が $1$ に一致するので、$(x,y) \to (0,0)$ における$z$の極限値は $1$ である。故に$z$は原点において連続である。
(答)連続
復習例題未設定