【高校化学】原子の構造のまとめ

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原子の構造のまとめ

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原子の構造を学ぶには、まず正しい原子モデルの確立に至るまでの歴史を知っておく必要があります。

 

「ドルトンの原子説」

イギリスの化学者・物理学者であるジョン・ドルトン(John Dalton, 1766年~1844年)は、「それ以上分割できず、化学的変化によって生成も消滅もしない粒子」として「原子」の存在を提唱しました。原子とは、物質を構成する最小の基本粒子のことです。この「ドルトンの原子説」が発表されたのは、19世紀末以降、色々な実験によって、原子がさらに小さい素粒子で構成されていることが示される前のことでした。

※「原子論」の起こり自体はかなり早く、古代ギリシャ時代には存在していたと言われています。原子論(atomism)とは、あらゆるものは、それ以上分割できない極小のもの(atom)が集まって構成されている、とする哲学的な理論・仮説・主義のこと。

実は20世紀初頭になっても、多くの科学者は物質に構成単位が存在するというドルトンの原子説に懐疑的で、原子のような分割不可能な構成要素が存在するとは認めていませんでした。 余談ですが、19世紀末の電子発見以前の時点で存在が確認されていた最小の物体は「ウイルス」でした(もっとも、当時はそれがウイルスというものだとは認識されていなかったようです)。

 

 電子の発見

初めて見つかった素粒子は電子であり、1897年にイギリスの物理学者ジョゼフ・ジョン・トムソン(Joseph John Thomson, 1856年~1940年)によって発見されました。

トムソンは真空放電の実験によって、陰極の金属から放出された放射線の一種(陰極線)がガラスの蛍光板に入射すると光ることを確かめました。この放射線に電圧を加えると陰極線は正極側に曲がることから、陰極線は負電荷を持った粒子の流れであることが見出されました。これが歴史に残る電子の発見です。

図.トムソンの真空放電の実験
General Chemistryより引用・改変)
(この実験は物理学でも重要なので覚えておきましょう)

 

 原子モデル

真空放電の実験において、陰極線は陰極の金属の種類を色々変えても発生したため、電子というものは原子に例外なく含まれているものと考えられます。物質が電気的に中性という事実は古くから認識されており、原子も電気的に中性が保たれていると考えるのが自然です。

そこでトムソンが提唱した「ブドウパンモデル」または「プラムプディングモデル」(plum pudding model)は、以下のような正電荷の”スープ”の中に電子が点在している原子モデルでした。

図.トムソンのブドウパンモデル

これに対して、日本の物理学者である長岡半太郎(1865年~1950年)は、中央に正電荷をもつ原子核があり、その周りを電子が軌道を描いて回っているという「土星型原子モデル」を提唱しました。

図.長岡半太郎の土星型原子モデル

※今でこそ軌道を描くという構造はよく知られている原子構造にそっくりに見えますが、当時としてはかなり大胆な発想だったそうです。

これらの他にも色々な原子モデルが提案されていたようですが、原子内部の構造を実験的に明らかにしたのは、専らイギリスで活躍したニュージーランド出身の物理学者かつ化学者であるアーネスト・ラザフォード(Ernest Rutherford, 1871年~1937年)が行った金泊を用いた実験でした。

ラザフォードは1911年、真空中で黒薄い金箔にラジウムから放射されるアルファ線を照射する実験を行いました。ここで$\alpha$線とはヘリウム原子核$\ce{He^2+}$のことで、放射性ラジウムの崩壊によって発生します。

図.ラザフォードのアルファ線の実験
CK-12より引用・改変)
(この実験は物理学でも重要なので覚えておきましょう)

照射されたほとんどのアルファ線はまっすぐに金箔を突き抜けましたが、ごくわずかのアルファ線は進行方向が大きく曲がりました。ラザフォードはこの実験から、原子の占める体積の大部分は密度の低い空間であり、原子の質量の大部分は原子の中心部分に集中しているというモデルを提唱しました。これが原子核の発見です。

 

 原子の構造

こうして、原子の中心部には正電荷を持つ原子核が存在することが分かりました。実際の原子核は陽子と電荷を持たない中性子からなり、原子核の周りを負電荷を持つ幾つかの電子が取り巻いています。原子中の正電荷をもつ陽子の数と負電荷を持つ電子の数は等しく、原子全体としては電気的な中性が保たれています。

原子の大きさは約$10^{-10}$メートル程度です。これは原子核の直径に比べてかなり大きく、$10^4$~$10^5$倍程度のサイズです。実はこのスケール感はラザフォードの実験結果から見積もることができます。

ラザフォードの実験結果によると、厚さ 5000 Å の金箔にアルファ線を照射すると10万本に1本の割合でアルファ線が逆方向に跳ね返されたそうです。金原子の直径をおよそ 5 Å とすると約1000個の金原子が層をなしている計算になるので、金箔を限りなく薄くして金原子1個分の厚さの層に延ばしたと仮定すれば、アルファ線が跳ね返される割合は $10^5 \times 1000 =10^8$ 個に1個の割合になります。 

アルファ線の総数と跳ね返されたアルファ線の割合が、原子の断面積に対する原子核の断面積の割合に等しいとすると、$$\small \dfrac{\text{原子核の断面積}}{\text{原子の断面積}}=\dfrac{\pi \times (\text{原子核の半径})^2}{\pi \times (\text{原子の半径})^2}=\dfrac{1}{10^8}$$より、$$\small \dfrac{\text{原子核の半径}}{\text{原子の半径}}=\dfrac{1}{10^4}$$となり、原子核は原子のおよそ1万分の1程度の大きさであることが見積もられます。

結局、長岡半太郎が提案した「土星型原子モデル」は良い線を行っていたのですが、実際の原子核のサイズは非常に小さいことが実験により確かめられたのです。


その後、ラザフォードの弟子であるイギリスの物理学者ジェームズ・チャドウィック(James Chadwick, 1891年~1974年)は、ベリリウム原子にアルファ線を衝突させると、電荷を持たない粒子が放出されることを発見しました。これが中性子です。

繰り返しになりますが、原子の中心部には原子核が存在し、正電荷を持つ陽子と電荷を持たない中性子でできています。原子核の周りには負電荷を持つ電子が存在しており、原子全体で見ると電気的に中性です。


ここで、現在の原子モデルについても触れておきましょう。実は電子は決まった円周軌道を描いているわけではなく、原子核の周囲に確率的に分布しており、原子核を電子雲が包んでいる、という構造をしています。

以下の図はヘリウム原子の模式図ですが、電子が周回する軌道は描かれていません。それもそのはずで、電子はあたかも「雲」のように原子核の周りに分布しているだけなのです。

図.ヘリウム原子の模式図
Wikipediaから引用)

大抵の高校化学の教科書には電子の回る「環」が描かれており、化学教師も教科書の内容にしたがって授業をしています。しかし、これはあくまでも分かりやすさのために正確さを犠牲にしているのであって、実際の原子の描像としては不適切なものであるという認識を持っておきましょう。電子にはそれぞれ周回軌道がある、というのは大学受験が終わったら一早く捨てるべき認識です。

 


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