問題#Ⅰ020


問題#Ⅰ020 ★★★★

$2$以上の整数$n$に対して方程式$$x_1+x_2+\cdots+x_n=x_1 x_2 \cdots x_n$$の整数解$(x_1,x_2,\cdots \cdots,x_n)$を考える。ただし、たとえば$(1,2,3)$と$(3,2,1)$は異なる解とみなす。このとき次の問に答えよ。

(1)$n=2$ および $n=3$ のときの解をすべて求めよ。

(2)解が1つしかないような$n$をすべて求めよ。

(3)任意の$n$に対して解は少なくとも1つ存在し、かつ有限個しかないことを示せ。


《ポイント》

このタイプの方程式は整数第3章第1節の問題#C015でも取り上げており、実際の入試でも時々見掛けることがありますが、本問のように一般化して出題されることはほとんどありません。文字が$n$と$x$の2種類登場しますが、どちらに注目して議論すればよいかを見極める必要があります。

多くの人が(3)で行き詰まると思います。解が少なくとも1つ存在することを示すには、具体的な解を一つ構成すればOKです。 $n=4$ の場合を考えると突破口が見えてくるかもしれません。また、有限個しか存在しないことを示すためには、まず解の取り得る値に上限が存在することを示すことになります。不等条件を自分で設定して上手く議論しましょう。


《解答例》

(1)

$n=2$ のとき$$x_1+x_2=x_1 x_2$$ $$\therefore (x_1-1)(x_2-1)=x_1 x_2$$より、$$(x_1,x_2)=(2,2)$$を得る。

$n=3$ のとき $x_1 \leqq x_2 \leqq x_3$ とすると、$$x_1 + x_2 +x_3 = x_1 x_2 x_3 \leqq 3 x_3 \tag*{・・・①}$$ $$\therefore x_1 x_2 \leqq 3$$となる。これより、$$(x_1,x_2)=(1,1),(1,2),(1,3)$$に絞られ、このうち等式$①$を満たすのは$$(x_1,x_2,x_3)=(1,2,3)$$の組に限られる。この並べ替えを考えて

$(x_1,x_2,x_3)=(1,2,3)$,$(1,3,2)$,$(2,1,3)$,$(2,3,1)$,$(3,1,2)$,$(3,2,1)$

を得る。

(答)$n=2$ のとき $(x_1,x_2)=\color{red}{(2,2)}$

$n=2$ のとき $(x_1,x_2,x_3)=\color{red}{(1,2,3)}$、$(1,3,2)$、$(2,1,3)$、$(2,3,1)$、$(3,1,2)$、$(3,2,1)$

 

(2)

解が1つしかないとき、$x_1=x_2= \cdots = x_n$ が必要である。この値を$x$とすると$$nx=x^n$$ $$\therefore x^{n-1}=n \tag*{・・・②}$$を得る。$n \geqq 2$ より $x \geqq 2$ である。

(ⅰ)$x=2$ のとき $n=2$ は(1)より適する。$n \geqq 3$ のときは$$\begin{align} 2^{n-1} &= (1+1)^{n-1} \\ &=1+{}_{n-1}\mathrm{C}_1+{}_{n-1}\mathrm{C}_2+\cdots \\ &> 1+n-1 \\ &=n \end{align}$$となるので等式$②$を満たず不適。

(ⅱ)$x \geqq 3$ のときは$$x^{n-1} > 2^{n-1} \geqq n $$(等号成立は $n=2$ のとき)となるので等式$②$を満たず不適。

以上より求める$n$は$$n=2$$である。

(答)$\color{red}{n=2}$

 

(3)

(1)より、$n=2,3$ のとき、方程式$$x_1+x_2+\cdots+x_n=x_1 x_2 \cdots x_n$$の整数解は少なくとも1つ存在し、かつ有限個しかない。

$n \geqq 3$ のとき $x_1=x_2=\cdots=x_{n-2}=1$,$x_{n-1}=2$,$x_n=n$ が解となる。これより整数解は少なくとも1つ存在することが示された。

次に解が有限個しかないことを示す。

$x_1 \leqq x_2 \leqq \cdots \leqq x_n$ とすると、$$x_1 + x_2 + \cdots + x_n \leqq n x_n$$ $$\therefore x_1 x_2 \cdots x_{n-1} \leqq n$$ よって $x_i$($i=1,2,\cdots,n-1$)はいずれも$n$以下の値をとる。また、$x_1 x_2 \cdots x_{n-1} \ne 1$ であるから、$$x_n=\dfrac{x_1 + x_2 + \cdots + x_{n-1}}{x_1 x_2 \cdots x_{n-1}-1} \leqq n(n-1)$$となる。よって$x_n$に最大値が存在するから解は有限個しか存在しない。

 


《コメント》

本問は整数問題というよりは場合の数の問題ですね。なかなか抽象的な問題だと思いますが、難関大学を志望する受験生であれば大小関係の設定はできてほしいところです。難度を★★★★としてはいますが、論証問題に対応する上で必要な要素が良く詰まった丁度良いレベルの良問だと思います。

(出典:東京工業大学 1996年)


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