物理は数学を「使う」学問である

物理Topページに戻る


ここでは高校物理と微分積分の関わりについての管理人の個人的な意見を述べています。興味が無ければ読み飛ばして頂いて構いません。

物体の運動を解析するための「数学的な道具」には「ベクトル」や「三角関数」だけでなく「微分」や「積分」も含まれています。日本の高校の教育課程では、微分積分と物理の関連性が意図的に希薄化されて教えられています。その方が数学科目のカリキュラムともうまく整合するため、数式に不慣れな生徒にとっても分かりやすくなるという考えからでしょう。確かにそういう面はあると思います。

しかし、このような教え方は物理の成り立ちの歴史から見ても、日本の科学分野の将来的な発展にとっても大きな損失と言わざるを得ません。これから物理を勉強するにあたって、力学における多くの現象が微分積分の知識によって明快に説明できることを知らないまま物理を学び続けるのは非常に勿体無いことです。物理学、特に力学は微分積分という道具と切っても切れない縁で結ばれているのです。

少しでも筋良く物理学を学んでみたいという気持ちがあるなら――多くの物理教師は難色を示すでしょうが――微分積分の知識を使うことを避けるべきではありません。少なくとも管理人はそう考えています。しかし、世の中(特に日本)には微分積分を使って物理を学べる教材や教えてくれる人材が身近に少ないのが難点です。当サイトでも要点ごとに記事をシリーズ化して、少しでもそうしたニーズに応える企画を始めることにしました。

管理人は物理の専門家という訳ではありませんが、高校までに習う物理について人並み程度には理解できていると思っています。そんな管理人でも、自分自身が高校で物理を履修したときは、どちらかというと物理は苦手科目でした。しかし物理の考え方の根底には必ず数学(特に微分積分)の知識があるということを知ってから、視野が開けました。先ほども述べたように、物理は数学を使う学問なのです。もっと言えば、物理は微分積分が根底にある学問なのです。このことを認識できているのといないのとでは物理という学問の見通しに大きく影響します。

言い換えれば、日本の高等学校教育は数式の苦手な人にも分かりやすく組まれているのです。これは、物理で落ちこぼれる学生を極力減らしたいという良心とも捉えられますが、一方では物理という学問の見通しを悪くしてしまう、諸刃の剣でもあります。

公式さえ覚えればよい物理」の方がコストパフォーマンスが良いと思うのなら、それはそれで構わないと思います。実際、覚えるのが得意な人にとっては物理は意外に穴場となる科目です。ですが、管理人なら「微分積分で公式を導く物理」を選びます。なぜなら微分積分の知識を積極的に使った方が面白いからです。

もちろん、暗記型の物理を先に体験してから微積物理を学ぶというのもアリです。むしろその方が感激の度合いは増すかもしれません(笑)。でも、大学やその先の物理学では微積分学を切り離して考えるということはあり得ません。物理学とは本来、微分積分などの解析学の知見の上に立脚している学問です。それゆえ、微分積分を使う物理の勉強は(歴史的には)正統な学び方と言えます。

・・・などと散々言っておきながら何ですが、微分積分を前面に押し出して物理を学ぶか否かは完全に趣味の範疇です。どちらの方針で物理を学ぶのかは個人の自由です。しかし、微分積分を使って物理を学ぶという選択肢もあるのだということを、皆さんには是非知っておいて欲しいと思います。

最近はいわゆる「脱ゆとり」の流れを受けてやや発展的な解説も教科書で紹介されるようになりましたが、体系的に学ぶというには程遠い状況です。ただ、常に微分積分を使う必要は無く、どうしてその数式が公式として登場するのか?という疑問に対して微分積分の知識が役に立つ、という認識を持っているだけでも物理に対する「得体の知れなさ」が軽減するのではないかと思います。

微積の知識は高校物理を美味しいとこ取りするスパイスの一種だと思って下さい(笑)。気楽に行きましょう!


物理Topページに戻る