ケーキを公平に分ける方法は一つではない

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ケーキを公平に分ける方法は、「公平」を何と定義するかで変わります。同じ重さにすること、自分の評価で全体の人数分の1以上をもらうこと、他人の取り分をうらやましく思わないことは、別々の条件です。数学の公平分割では、人によって好みが違うことを認めた上で、何を保証するかを明確にします。

同じ大きさでも、同じ価値とは限らない

いちごが好きな人と、クリームが好きな人を考えます。同じ100gの切れでも、どちらがうれしいかは人によって違います。ケーキの面積や質量だけでなく、各人がそれぞれの部分にどれだけ価値を置くかを表すのが、評価関数です。

基本的なモデルでは、ケーキは好きなだけ細かく分けられ、別々の部分を合わせた価値はそれぞれの価値の和とします。また、各人がケーキ全体の価値を1と評価するように尺度をそろえます。切ると壊れて価値がなくなる飾りや、「いちごとスポンジが一緒にあること」に特別な価値がある場合は、この単純な加法的モデルだけでは表せません。

公平さの主な基準

混同しやすい公平性
基準 何を求めるか
等量 質量・体積・面積など、決めた物理量が同じ
比例的 n人の各人が、自分の評価で全体の1/n以上を受け取る
無羨望 各人が、自分の取り分を他の誰の取り分以上に評価する
効率的(パレート効率的) 誰の評価も下げずに、誰かの評価を上げる分け直しが存在しない

全体を配り切る加法的モデルでは、無羨望なら比例的です。自分の取り分が他の全員の取り分以上なら、それはn個の平均である1/n以上だからです。ただし3人以上では、比例的でも誰かをうらやむことがあります。

例えば、ある人から見て三つの取り分の価値が40%・50%・10%で、その人が40%を受け取ったとします。3分の1以上なので比例的ですが、50%を受け取った人の方がうらやましい。この人の視点だけでも、二つの条件の違いが確認できます。

二人なら「一人が切り、もう一人が選ぶ」

Aさんが、自分にとって同じ価値になるよう二つに切り、Bさんが好きな方を選びます。Aさんが本当に半分ずつと評価して切れば、どちらが残っても自分にとって50%です。Bさんは二つのうち高く評価する方を選ぶので、自分の評価で50%以上を受け取れます。

さらにAさんは二つを同価値と思い、Bさんは自分で良い方を選んでいるため、双方に羨望がありません。この保証は、二人が同じ味の好みを持つことを前提にしていません。それぞれ自分の評価を使って行動することが大切です。

切る人が目測を誤った場合や、選ぶ人が中身を知らない場合には、理想モデルの保証がそのまま現実の満足を意味するわけではありません。また、相手の好みを知って戦略的に切る問題と、最低限の取り分を自分で守る問題も分けて考えます。

無羨望でも、もっと良い分け方が残ることがある

ケーキがいちご部分とチョコ部分に分かれ、Aさんはいちご部分だけ、Bさんはチョコ部分だけに価値を感じるとします。それぞれが両方の部分を半分ずつ受け取れば、自分の評価はどちらも全体の50%です。他人の取り分も50%なので羨望はありません。

しかし、Aさんへいちご部分の全部、Bさんへチョコ部分の全部を渡し直せば、双方の評価が100%になります。最初の分け方は無羨望でも、効率的ではありません。公平性を満たす分け方の中にも、改善の余地があるということです。

現実には、切り方の制約も決めておく

人数が増えると、二人用の切り分け手順をそのまま繰り返すだけでは、全員の無羨望は保証できません。最初に取った人と最後の人で選択肢が異なるためです。さらに「一人につき一続きの一切れ」「切る回数は少なく」「飾りは切らない」などを課すと、使える方法は変わります。

実際の場では、まず量をそろえたいのか、各人が好みの部分をもらうことを優先するのかを相談するとよいでしょう。数学の公平分割は、唯一の公平な答えを押し付けるものではありません。合意した基準に対して、その手順が何を保証し、何までは保証しないかを調べるための道具です。

参考資料

資料確認日:2026年10月2日。本文の数値例・模式図は、特記したものを除き本記事の説明用に作成しています。

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