「右手を壁につければ迷路を出られる」はいつ正しい?

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右手を壁につけて歩く方法は、迷路の形と出発点に条件があります。典型的には、有限の平面迷路で、壁に独立した「島」がなく、入口と出口が外周にあり、通路がつながっている場合に使えます。立体迷路や、中央の独立した壁から歩き始める場合まで、必ず出口へ着くとはいえません。

右手法は「同じ壁の境界をたどる」方法

右手法では、右の壁を見失わないように歩き続けます。格子状の通路を歩くなら、曲がり角で「右へ行ければ右、無理なら直進、それも無理なら左、行き止まりなら引き返す」という順序になります。行き止まりで引き返すのもルールの一部です。途中で右手法と左手法を都合よく切り替えると、別の歩き方になります。

理由を考えるときは、通路の複雑さより、触れている壁がどこにつながっているかに注目します。全ての壁が外周につながる平面迷路なら、枝分かれした壁を伸び縮みさせて考えても、壁の縁をたどるという関係は保たれます。外周の入口から始めて同じ側の壁を追えば、外周にある出口へ到達できます。

これは、入口から出口までに多くの曲がり角があっても変わりません。逆に、「曲がり角が少ないから簡単」という見た目だけで、右手法の保証は判断できません。壁と通路のつながり方が本質です。

独立した壁の島では、一周してしまう

外周に出口がある部屋の中央に独立した四角い壁があり、その周囲を時計回りの矢印が一周する模式図
失敗例の模式図。右手を中央の壁につけると、出口のある外周へ移れません。

広い部屋の中央に、外周から離れた四角い壁があるとします。出口へ行ける空間は十分にあるのに、この四角へ右手をつけて歩くと、ぐるりと一周して元の場所へ戻ります。手を離さない限り、何周しても同じです。

この例は「出口が存在する」だけでは保証にならないことを示します。触れている境界と、目指す出口の境界が違うためです。迷路の中央に置かれたゴールを目指す場合にも、外周の壁をたどるだけではゴールに近づけないことがあります。なお、島がある迷路でも、出発点と出口の位置次第では右手法で成功します。「島があると必ず失敗」ではなく、一般的な保証が失われるということです。

出口へ着いても、最短とは限らない

右手法は目印や全体図がなくても実行しやすい反面、長い行き止まりの枝を往復することがあります。入口のすぐ左に短い出口ルートがあっても、右へ延びる壁を先にたどれば、大きく遠回りするでしょう。

最短経路を求めるなら、各交差点を頂点、通路を辺として表し、通路の距離を考えた探索が必要です。全ての通路を同じ長さとみなすなら幅優先探索、距離が異なるならその長さを反映した方法を使います。「いずれ着く」と「一番短く着く」は別の目標です。

迷路全体が分からないなら、通った道を記録する

より一般的な迷路では、通路や分岐に印を付け、未探索の道へ進み、行き止まりや探索済みの枝から戻る方法が役立ちます。グラフ上の深さ優先探索やトレモーの方法は、この発想に基づきます。

実装する場合には、交差点を再訪したときに同じ場所と認識できることが必要です。有限の通路網で、同じ辺を無制限に往復せず、未探索の枝を系統的に調べれば、出発点から到達可能な出口を見つけられます。右手法で同じ場所へ同じ向きのまま戻ったと気付いたら、単に歩き続けるのではなく、記録を使う方法へ切り替える理由があります。

現実の建物では、避難案内を優先する

ここまでの議論は、通路が変化せず、移動可能な向きに制限がない数学的なモデルです。階段や橋で上下に交差する立体構造、片方向の扉、閉鎖区画などがあると、そのままでは当てはまりません。実際の避難では、右手法を万能な脱出法と考えず、誘導灯、施設の案内、係員の指示に従って下さい。

参考資料

資料確認日:2026年10月2日。本文の数値例・模式図は、特記したものを除き本記事の説明用に作成しています。

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