強い順に並べられないサイコロ

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サイコロAはBに勝ちやすく、BはCに勝ちやすい。それなのに、CはAに勝ちやすい。数字の大小で勝負するだけでも、このような「じゃんけん」の関係を作れます。この性質を非推移性といい、そのような組を非推移的サイコロと呼びます。

六つの面を、次の数字にする

ここでは、各面が同じ確率で出る六面体を3個使います。普通のサイコロと違って、同じ数字を複数の面に書いて構いません。2人がそれぞれ1個を選んで独立に振り、出た数の大きい方を勝ちとします。

今回使うサイコロの目
サイコロ 六つの面 出る数の平均
A 2、2、4、4、9、9 5
B 1、1、6、6、8、8 5
C 3、3、5、5、7、7 5

この組では、異なるサイコロ同士の同点はありません。平均はいずれも5ですが、勝つ確率まで同じになるわけではありません。平均は数字の大きさを足し合わせた指標で、勝敗は相手の数字を何通り上回るかで決まるからです。

36通りを数えると、強さが一周する

6面と6面を組み合わせた結果は36通りで、どれも同じ確率です。同じ数字の面も別々の面として数えます。AがBに勝つのは、Aの2でBの1を出した場合が4通り、Aの4でBの1を出した場合が4通り、Aの9が出た場合が12通り。合計20通りです。

$$P(A>B)=\frac{4+4+12}{36}=\frac59\approx55.56\%$$

全36通りを列挙して得た勝敗
対戦 左側が勝つ 左側が負ける 同点
A 対 B 20通り 16通り 0通り
B 対 C 20通り 16通り 0通り
C 対 A 20通り 16通り 0通り

B対Cでは、Bの1は一度も勝てず、6はCの3・5に勝ち、8はCの全ての面に勝ちます。したがって0+8+12=20通り。C対Aでは、Cの3はAの2に勝ち、5と7はAの2・4に勝つため、4+8+8=20通りとなります。

つまり「勝率が2分の1を超える」を矢印で表すと、A→B→C→Aという輪になります。どれを最強にしようとしても、そのサイコロに勝ちやすい相手が残ります。

普通の大小関係との違い

数そのものなら、a>bかつb>cであればa>cです。これは大小関係に推移性があるためです。一方、「確率変数AがBを上回る確率が2分の1より大きい」という関係には、同じ性質が保証されません。比較のたびに、相手となる数の分布が変わっています。

Aは小さな目を出しがちですが9が強く、Bは1で負ける代わりに6と8を持ち、Cは中間の目が並びます。こうした分布のかみ合わせが、相性の輪を生みます。「Aの方が強い」とだけ書くと誤解しやすいので、「1回振って大きい方が勝つルールでは、AがBに勝つ確率は9分の5」と比較条件まで示すのが正確です。

後から選ぶ側は、少し有利になる

相手が先に選び、そのサイコロを見てから残りを選べるなら、相手がAのときはC、BのときはA、CのときはBを選びます。毎回の勝率は約55.56%です。ただし、必ず勝てるという意味ではありません。1回だけなら約44.44%の確率で負けますし、有限回の勝負では負け越すこともあります。

また、2個を振った合計、何回かの合計点、最大の出目などにルールを変えれば、比較する分布も変わります。ここで計算した9分の5を、そのまま別の遊び方へ持ち込むことはできません。サイコロの面を入れ替えて独自の組を作った場合も、平均ではなく、各対戦の36通りを数え直すのが確実です。

なお、この話は形のいびつなサイコロで出目を偏らせる仕掛けではありません。各面が公平に出ると仮定した上で、数字の割り当てだけで起きる現象です。配置そのものの違いについては、向かい合う目が7でも、サイコロは同じ配置にならないも参照して下さい。

参考資料

資料確認日:2026年10月2日。本文の数値例・模式図は、特記したものを除き本記事の説明用に作成しています。

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