教育についての短い雑談

こんにちは。vinesと申します。今回は教育に関して少し真面目な話。


皆さんは文科省が告示している学習指導要領というものをご存知でしょうか?恐らく大半の方はご存知でしょうが、その中身まではよく知らないという方が多いと思います。

そもそもなぜ学習指導要領というものがあり、それを改訂しなければならないのかについて考えていきます。

日本の教育を論じる前にまず現状の問題点を考えてみましょう。

OECD(経済協力開発機構)の加盟国では、義務教育の終わりにあたる15歳の生徒を対象にPISA調査と呼ばれる調査を行っており、読解力、数学的知識、科学的知識の3カテゴリについて隔3年毎に調査しています。直近では2015年に科学的リテラシーに関する調査が行われました。これらの調査の結果から、日本の児童生徒について以下の課題が浮かび上がっています。

① 思考力・判断力・表現力等を問う読解力や記述式問題,知識・技能を活用する問題に課題

② 読解力で成績分布の分散が拡大しており,その背景には家庭での学習時間などの学習意欲,学習習慣・生活習慣に課題

③ 自分への自信の欠如や自らの将来への不安,体力の低下といった課題

以上の3点は現行の学習指導要領改訂の「第1章 総説」から抜粋したものです。①については以前から言われていることで、この点を改善しようという動きは国内にも広がっています。教育学などを専攻すれば今流行りのアクティブ・ラーニングについて様々な先駆的試みを紹介されるはずです。しかし日本全土でこうした「新しい」教育スタイルが浸透しているかというと、実際には難しい課題が残されています。②については近年問題になっている「子どもの貧困」が要因の一つとして挙げられます。家計を支えるためにアルバイトをしなければならない子供たちがいるという現状を、一体どれだけの人が深刻に受け止めているのでしょうか。家庭での学習時間を増やしましょうと言っても、勉強したくてもできない子供たちには絵空事にしか取られません。貧困の連鎖を食い止める仕組みは今の日本には皆無です。③については日本人特有の気質というか、社会の雰囲気が若干15歳の若者達を覆っているのではないかと心配になります。

こうした状況を踏まえ、以下の方針を掲げて改訂されたのが現行の学習指導要領です。

① 改正教育基本法等を踏まえた学習指導要領改訂
② 「生きる力」という理念の共有
③ 基礎的・基本的な知識・技能の習得
④ 思考力・判断力・表現力等の育成
⑤ 確かな学力を確立するために必要な授業時数の確保
⑥ 学習意欲の向上や学習習慣の確立
⑦ 豊かな心や健やかな体の育成のための指導の充実

現行の学習指導要領は、高校が平成21年11月に、中学が平成20年7月に、小学が平成20年6月に改訂されたもので、既に10年近くが経とうとしていますから、最新の社会情勢を反映できているとは言い難い面もあります。しかしここに掲げられた方針は、国を造っていく人材を育てるのに必要なものであるということに異議は挟めないでしょう。

教育が国を造るという考えは吉田松陰に始まったのではないでしょうか。彼の門下生には久坂玄瑞、高杉晋作、吉田稔麿、伊藤博文、山縣有朋といった歴史の教科書に出てくるような人物が何人もいますが、実際に吉田松陰が教鞭を執っていたのは2年ほどだと言います。その中でこれほどの人物らを育て上げたというのは現代の教育者からしても刮目すべき点でしょう。松陰がかなり常識外れな人物であることには違いありませんが、彼の教育方針や思想から学べる事柄は決して少なくないでしょう。

例えば松陰が教鞭を執っていた松下村塾において、松陰はいわゆる「教える」という姿勢ではなく、「共に学ぶ」という姿勢を貫いていたようで、一般的な授業という形式ではなく議論という形で勉強を進めていました。当然、現代で学ぶ理科や数学というものは扱っていなかったでしょうが、ただ通り一遍の「答え」を教え込まれるだけの現代日本の学校教育と比較すれば、塾生の勉強に対するアクティビティは遥かに高かったことでしょう。勿論、入塾を希望した人物が並々ならぬ才を持ち合わせていたということはあるにせよ、長州のみならず日本全国でそのような指導・教育が可能となれば、もはや国だけに留まらず、世界を動かすほどの力を持った人材が次々に生まれることでしょう。

勿論、教育とは理念だけで片付くものではありません。教育の現場を如何に変えていくかが教育者に求められる仕事であるということは、教育を為す者が最も気を付けておくべきことです。その点で話題のアクティブ・ラーニングというのはそうした現状打破の試みの一つなのです。旧来の教育方法、つまり教壇のある教室で全ての生徒が黒板に向かい教師と対面するという授業を一概に否定し去ることは難しいでしょうが、こうした授業スタイルが問題の要因となっている可能性も否定できません。教育現場は確かに新しい風を必要としているのです。


 

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