問題#Ⅰ016


問題#Ⅰ016 ★★★☆

$N$を$2$以上の自然数とする。

(1)関数 $f(x)=(N−x) \log x$ を $1 \leqq x \leqq N$ の範囲で考える。このとき、曲線 $y=f(x)$ は上に凸であり、関数$f⁡(x)$は極大値を$1$つだけとる。このことを示せ。

(2)自然数の列$a_1$、$a_2$、$\cdots$、$a_N$を$$a_n=n^{N−n} \ (n=1,2,\cdots,N)$$で定める。$a_1$、$a_2$、$\cdots$、$a_N$のうちで最大の値を$M$とし、$M=a_n$ となる$n$の個数を$k$とする。このとき $k \leqq 2$ であることを示せ。

(3)(2)で $k=2$ となるのは、$N$が$2$のときだけであることを示せ。


《ポイント》

(1)は $f^{\prime\prime}(x)<0$ かつ、$y=f'(x)$ が $1 \leqq x \leqq N$ の範囲で解を一つだけもつことを示せばOKです。(2)はグラフを描いてイメージを掴むと良いでしょう。


《解答例》

(1)

関数 $f(x)=(N−x) \log x$ の導関数は$$\begin{align} f'(x) &=-\log x+(N−x)\cdot \dfrac{1}{x} \\ &=\dfrac{N}{x}-(\log x+1) \end{align}$$となる。よって第二次導関数は$$\begin{align} f^{\prime\prime}(x) &=-\log x+(N−x)\cdot \dfrac{(-\log x-2)x-(N-x \log x -x)}{x^2} \\ &=-\dfrac{x+N}{x}\ (<0)\end{align}$$となるから、$f(x)$は上に凸である。

 

$f^{\prime\prime}(x) < 0$ より、$f^{\prime}(x)$は単調減少である。これと、

$f^{\prime}(1) =N-1\,(>0)$、$f^{\prime}(N)=-\log N\,(<0)$

より、$y=f^{\prime}(x)$ は $1 \leqq x \leqq N$ の範囲で唯一つの解をもつ。故に関数$f⁡(x)$は極大値を$1$つだけとる。

 

(2)

$a_n=n^{N-n} \ (n=1,2,\cdots,N)$ について自然対数をとると、$$\log a_n = (N-n)\log n$$となる。これは(1)の関数$f(x)$により $a_n=f(n)$ と表せるので、$a_n$が最大となる$n$と$f(n)$が最大となる$n$は等しく、これを$M$と置く。$f(x)$は $1 \leqq x \leqq N$ の範囲で極大を一つだけ有するから、直線 $y=M$ と $y=f(x)$ の交点を考えることにより、$M=a_n$ となる$n$の個数$k$は高々$2$である。したがって$$k \leqq 2$$が成り立つ。

 

(3)

(2)より、$k=2$ となるのは$$a_{n}=a_{n+1}=M$$の場合のみである。これより$$n^{N-n}=(n+1)^{N-(n+1)}$$ $$\therefore (n+1)n^{N-n}=(n+1)^{N-n}$$ $$\therefore n+1=\left(\dfrac{n+1}{n}\right)^{N-n}$$を得る。左辺は整数であるので、$\dfrac{n+1}{n}$もまた整数であることが必要である。$n$ と $n+1$ が互いに素であることに注意すると、右辺が整数になるためには

$n=1$ または $N-n=0$

が必要となるが、$a_{N+1}$は定義されていないので、$n=1$ の場合に限る。これより$$1+1=\left(\dfrac{1+1}{1}\right)^{N-1}$$ $$\therefore 2=2^{N-1}$$ $$\therefore N-1=1$$ $$\therefore N=2$$となる。

したがって $k=2$ となるのは、$N$が$2$のときだけである。


《コメント》

抽象的な問題ではありますが、関数からアプローチする誘導設問が付いているので発想自体は難しくないと思います。(1)では極大が1つだけしか存在しないことを示しているので、(2)はこの事実から $M=a_n$ となる$n$の個数が高々$2$であることがあっさり言えます。(3)は式変形で手が止まる人も多いかと思いますが、解答例のように次数に注目して式変形すれば上手くまとまります。

(出典:大阪大学 2008年)


戻る