整数第1章第3節

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1.3 入試数学の中の数論

前節では「整数問題」が「数論」という学問の入り口としての役割を持っていると述べました。

それは一体どういうことなのか、具体的な例を取り上げて見ていきましょう。

次の問題を見てください。


$n$、$n+2$、$n+4$がすべて素数となる整数$n$をすべて求めよ。

(2016年自治医科大学前期改題)


これは「双子素数」と呼ばれる特殊な素数と密接に関係している問題です。2004年に早稲田大学でも類題(というか全く同じ問題)が出題されています。

「双子素数」とは、例えば「3と5」、「17と19」、「197と199」のように差が2となる素数のペアのことを指します。双子素数に関しては未だに分かっていないことも多く、とても興味深い数論のトピックの一つです。例を挙げれば、素数は無数に存在することが分かっていますが、双子素数が無数に存在するのか否かは分かっていません。

この問題で問われている整数$n$の個数とは、2組の連続する「双子素数」の組み合わせの個数と同じ意味です。そしてこのような組み合わせはあらゆる整数の中でもたった1組しかないのですが、皆さんはそれがどのような組だか分かりますか?

解答例は第3章に譲るとして、他の問題も紹介しましょう。

 


「$n$を$2$より大きい自然数とするとき $x^n+y^n=z^n$ を満たす整数解$x、y、z(xyz≠0)$は存在しない。」というのはフェルマーの最終定理として有名である。しかし多くの数学者の努力にもかかわらず一般に証明されていなかった。ところが1995年この定理の証明がワイルスの100ページを超える大論文と、テイラーとの共著論文により与えられた。当然 $x^3+y^3=z^3$ を満たす整数解$x、y、z(xyz≠0)$は存在しない。
さて、ここでフェルマーの定理を知らないものとして、次を証明せよ。$x、y、z$を$0$でない整数とし、もしも等式 $x^3+y^3=z^3$ が成立しているならば$x、y、z$のうち少なくとも1つは$3$の倍数である。

(1998年信州大学理・経済前期)


この問題は文中にあるように、17世紀に活躍した数学家ピエール・ド・フェルマーが遺した予想に関する問題です。その名も「フェルマーの最終定理」。何だか強そうな名前ですね(笑)。

予想自体は非常に分かりやすいのですが、証明は極めて難しく、今までに何人もの数学者の人生を狂わせてきた曰く付きの難問です。数学者アンドリュー・ワイルスが高度な数学的理論や手法を用いて見事に解決しましたが、彼も相当苦労したようです。フェルマーの最終定理については、一般向けの書籍が多く出版されているので、興味を持った方は是非書店の数学コーナーで探してみて下さい。

信州大のこの問題自体は特に難しい問題ではありません。教科書レベルの知識で解答できてしまいます。

 


自然数$n$のすべての正の約数の和を表す関数を$f(n)$、正の約数の個数を表す関数を$g(n)$とおく。ただし、$1$および$n$も$n$の正の約数であり$f(1)=g(1)=1$とする。例えば、$n=12$のとき、$n$の正の約数は$1、2、3、4、6、12$なので $$\begin{align} f(12) &=1+2+3+4+6+12=28 \\ g(12) &=6 \end{align}$$ である。以下の問いに答えよ。

(1)$f(24)、g(24)$の値を求めよ。

(2)$g(n)$の値が奇数となる$n$は、ある自然数の平方であることを証明せよ。

以下の問題では、$n$は偶数とする。

(3)$m$を正の整数とし、$n=2^{m-1} (2^m-1)$とおく。このとき、$2^m-1$が素数ならば$f(n)=2n$となることを証明せよ。

(4)平方数ではない偶数$n$が$f(n)=2n$を満たしているとする。このとき、$n$のすべての正の約数の逆数の和はある一定の数に等しいことを示し、その数を求めよ。

(2016年浜松医科大学前期)


続いてはメルセンヌ数と完全数に関する話題です。メルセンヌ数とは、$2n−1$という形で表せる数であり、完全数とは、自然数$N$について、$N$を含むすべての約数の和$S$がちょうど$2N$になる数のことです。因みに$S>2N$となる数を過剰数、$S<2N$となる数を不足数と呼んだりします。

メルセンヌ数については1986年群馬大、2000年佐賀大、2002年九州大、2007年千葉大など過去に様々な大学の入試で取り上げられてきました。

現在知られている完全数はすべて偶数であり、奇数の完全数は見つかっていません。また、完全数は無数にあるのか、それとも有限個しかないのか、ということも分かっていません。しかし偶数の完全数はある特定の形で表せることが知られており、本問のように入試問題としても手頃なレベルで出題できるのです。そのため過去に様々な大学で出題されており、今後もこの傾向は続くと思われます。来年もどこかでメルセンヌ数が登場するかもしれませんね。

 


 

このように、大学受験数学のなかには数論にまつわる話題がちりばめられているのです。もちろん入試問題はこれだけではありません。特殊な背景を持つ問題は至る所で出題されており、その探求の過程でその分野への親しみが増すのです。

整数分野は他の分野との関わりが薄いためか、積み重ねの勉強が重要な数学という科目の一分野であるにも関わらず、学校ではあまり相手にされていないように思います。しかし見方を変えれば、整数分野とは過去の数学の成績に関係なく力を付けることのできる分野だと言えます。力が付き、解ける問題が多くなればなるほど数学は楽しくなります。そして楽しくなると数学が好きになります。ですから私は、数学が嫌いなら整数をやれ、と言いたいのです(笑)。


・・・とは言っても何から手を付ければ良いのかよく分からないのが整数の厄介なところです。続く第2章では整数のイロハのイから解説していきますので、必要に応じて読み漁っていっていただければと思います。

勉強を続けるコツは、まず諦めないこと。それから、自発的な意思に基づいて主体的に勉強すること、つまり、

「私は自分の意思で学んでるんだ!」

という意識を持ち続けることです。

勉強に意味を見出そうとするのはまだまだ二流。楽しいから勉強する、というレベルになって初めて一流のlearnerです。皆さんには数学を通して、是非とも一流のlearnerになって欲しいと思います。

 

それでは今日も頑張っていきましょう!

 

 

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