整数第2章第2節 4.式変形のバリエーション

2.4 式変形のバリエーション

以下に基本的な式変形を示します。

《二項式の変形》

$\begin{align} a^2 \pm 2ab +b^2 &= (a \pm b)^2 \\ a^3 \pm 3a^2 b +3ab^2 \pm b^3 &= (a \pm b)^3 \\ a^n \pm {}_n\mathrm{C}_1 a^{n-1}b+ \cdots \pm {}_n\mathrm{C}_{n-1} ab^{n-1}+b^n &= (a \pm b)^n & \text{($n$は偶数)} \\ a^n \pm {}_n\mathrm{C}_1 a^{n-1}b+ \cdots + {}_n\mathrm{C}_{n-1} ab^{n-1} \pm b^n &= (a \pm b)^n & \text{($n$は奇数)} \end{align}$

《その他の重要な式変形》

$\begin{align} a^2+b^2 &= (a+b)^2-2ab \\ a^2-b^2 &= (a+b)(a-b) \\ a^3 \pm b^3 &= (a \pm b)(a^2 \mp ab +b^2) \\ &= (a \pm b)^3 \mp 3ab(a \pm b) \\ a^n-b^n &= (a-b)(a^{n-1} + a^{n-2}b+ \cdots + ab^{n-2}+b^{n-1}) \\ (a+b+c)^2 &=a^2+b^2+c^2+2(ab+bc+ca)  \\ a^3+b^3+c^3-3abc &= (a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca) \end{align}$

このうち最後の2式は3文字の対称式を扱うときに重宝します。

いずれも基本的な変形ですから、試験中でもすぐに復元できるようにしっかりマスターしておきましょう。

 


次にやや高度な式変形術を紹介します。

《ブラーマグプタの恒等式》(Brahmagupta’s identity)

$\begin{align} (a^2+b^2)(c^2+d^2) &=(ac-bd)^2+(ad+bc)^2 \\ &=(ac+bd)^2+(ad-bc)^2 \end{align}$

$\begin{align} (a^2+nb^2)(c^2+nd^2) &=(ac-nbd)^2+n(ad+bc)^2 \\ &=(ac+nbd)^2+n(ad-bc)^2 \end{align}$

これらはあまり使いどころの多くない式ですが、実際の入試ではこれを知らないと解答できない問題も出題されています。ブラーマグプタの恒等式によれば、2つの平方数の和を掛け合わせたものは再び2つの平方数の和となることが言えます。このことを利用した問題が時々出題されています。

この恒等式はベクトルや複素数の大きさと成分の関係から導出できます。

ブラーマグプタの恒等式の導出について、詳しくはこちら。


《因数定理の利用》

因数定理:

多項式$f(x)$が$f(a)=0$を満たすとき、$f(x)$は$x-a$を因数に持つ。

これを利用して多項式を因数分解することができます。

(例題)$2n^3-2n^2-3n-2$を因数分解せよ。

$2n^3-2n^2-3n-2$に$n=2$を代入すると$0$になりますから与式は$n-2$を因数に持ちます。よって$$2n^3-2n^2-3n-2=(n-2)(2n^2+2n+1)$$と因数分解できます。

多項式の因数分解には整式同士の割り算計算が必要になることがありますが、そのときに重宝するのが「組み立て除法」という方法です。筆算では因数を有効利用した計算ができませんが、組み立て除法は因数をダイレクトに利用して計算できます。

「組み立て除法」について、詳しくはこちら。


《平方完成・平方の差の利用》

これは例題で確認した方が理解できると思います。

(例題)$80+2n-n^2$が素数となるような自然数$n$をすべて求めよ。

$\ \ \begin{align} 80+2n-n^2 &= 81-(1-2n+n^2) \\ &= 9^2-(1-n)^2 \\ &= (9+(1-n))(9-(1-n)) \\ &= (10-n)(8+n) \end{align}$

と変形します。$8+n \ge 2$ ですから $(10-n)(8+n)$ が素数となるためには $10-n=1$ とならなければなりません。よって$n=9$を得ます。またこのとき$80+2 \cdot 9-9^2=17$となり素数となっていますから必要十分です。故に求める自然数は $n=9$ となります。

 

(例題)$5x^2-2xy+2y^2=5$を満たす正の整数$x、y$の組をすべて求めよ。

左辺は$5x^2-2xy+2y^2=(x+y)^2+(2x-y)^2$と変形できますから、与式は$$(x+y)^2+(2x-y)^2=5$$となります。$(x,y)=(1,1)$のとき左辺は最小値$5$をとります。よってこれを満たすような正の整数$x、y$の組は $(x,y)=(1,1)$ のみです。

例なので簡単な問題にしましたが、これが2次式ではなくさらに複雑になった場合でも、平方完成と平方の差のコンビで因数分解を簡単に済ませられることが時々あります。偶数の次数を見かけたら、平方完成や平方の差による変形も考えながら式変形してみましょう。


《ソフィー・ジェルマンの恒等式》(Sophie Germain’s identity)
$$a^4+4b^4=(a^2+2b^2+2ab)(a^2+2b^2-2ab)$$

この恒等式が利用される問題はまず出題されません。観賞用の恒等式です(笑)。出題されたとしても、ちゃんと誘導が付くはずです。

 

次項では文字を利用した証明の例を見ていきます。

 

 

前に戻る 次へ進む 目次へ戻る