級数のギャラリー――収束・導出・誤差までわかる公式集

無限級数は、項を無限に並べた式を形式的に計算するものではなく、有限個を足した部分和の極限として定義します。このページでは、和の公式を解法別に分類し、成立条件、導出の考え方、近似したときの誤差まで整理します。

発展:無限和の操作と振動する級数

解法を選ぶ理由、条件・例外、解答付き演習をまとめました。各解説には、例題の設計や誤答の分岐を説明する「作問者の視点」を設けています。

まず収束判定と望遠和を読み、等比級数・べき級数へ進むと、高校数学から大学初年級の解析へつながります。二項係数の母関数やフーリエ級数を使う部分には、発展と表示しています。$\ln$は自然対数、$\binom nk$は二項係数、$H_n=\sum_{k=1}^n1/k$は調和数です。

1.和を求める前に、収束を確かめる

$S_N=\sum_{n=1}^N a_n$が有限の値$S$へ収束するとき、$\sum_{n=1}^{\infty}a_n=S$と定義します。級数が収束するためには$a_n\to0$が必要ですが、十分ではありません。調和級数$\sum1/n$は一般項が0へ近づいても発散します。

また、$\sum|a_n|$が収束するときは絶対収束、$\sum a_n$が収束して$\sum|a_n|$が発散するときは条件収束と呼びます。条件収束する級数では、項の並べ替えを自由に行えません。

判定法適用条件と結論向いている形
一般項の判定$a_n\not\to0$なら発散。$a_n\to0$だけでは未判定最初に必ず確認
比較判定十分大きい$n$で$0\le a_n\le b_n$、$\sum b_n$収束なら$\sum a_n$も収束有理式、根号、対数
極限比較$a_n,b_n>0$、$a_n/b_n\to c\in(0,\infty)$なら収束・発散が一致主要項が見える式
比の判定$L=\lim|a_{n+1}/a_n|$が存在するとき、$L<1$なら絶対収束、$L>1$なら発散。$L=1$は未判定階乗、指数、二項係数
根の判定$L=\limsup |a_n|^{1/n}$について、$L<1$なら絶対収束、$L>1$なら発散全体が$n$乗の形
積分判定十分大きい$x$で$f(x)\ge0$、連続・単調減少なら、$\sum f(n)$と$\int^\infty f(x)\,dx$は同時に収束または発散$1/n^p$、$1/[n(\ln n)^p]$
交代級数判定$b_n\ge0$が単調減少し0へ収束すれば$\sum(-1)^{n-1}b_n$は収束符号が交互に変わる級数
ディリクレの判定〔発展〕$\sum_{k=1}^n a_k$が有界、$b_n$が単調に0へ近づくなら$\sum a_nb_n$は収束$\sin(nx)/n$など

対数を含む境界は「次数」だけで判断しない

$$\sum_{n=1}^{\infty}\frac1{n^p}\text{ は }p>1\text{ のとき、かつそのときに限り収束},$$ $$\sum_{n=2}^{\infty}\frac1{n(\ln n)^p}\text{ は }p>1\text{ のとき、かつそのときに限り収束}.$$

後者は$t=\ln x$で$\int dx/[x(\ln x)^p]=\int t^{-p}\,dt$となることから分かります。特に$p=1$では$\ln\ln x$が無限に増えるため発散します。開始添字は$n=2$です。$n=1$では$\ln1=0$となり、項が定義されません。

同様に$\sum1/\sqrt{n(n+1)}$は、$1/n$との比が1へ近づくため発散します。「分母に2つの$n$がある」だけでは、平方根を取った後の大きさを見落とします。

2.望遠和・部分分数分解

次の公式はすべて絶対収束します。$m,k$は正の整数、$H_m=1+1/2+\cdots+1/m$とします。式の分解は、無限和へ移る前に有限和で行います。

番号級数と和導出の手掛かり
S01$\displaystyle\sum_{n=1}^\infty\frac1{n(n+1)}=1$$1/n-1/(n+1)$
S02$\displaystyle\sum_{n=1}^\infty\frac1{n(n+m)}=\frac{H_m}{m}$$[1/n-1/(n+m)]/m$
S03$\displaystyle\sum_{n=1}^\infty\frac1{n(n+1)(n+2)}=\frac14$隣り合う2因子の逆数の差
S04$\displaystyle\sum_{n=1}^\infty\frac1{(n+2)(n+3)(n+4)}=\frac1{24}$S03の開始位置をずらす
S05$\displaystyle\sum_{n=1}^\infty\frac1{n(n+1)\cdots(n+k)}=\frac1{k\,k!}$$k\ge1$。一般の望遠和
S06$\displaystyle\sum_{n=1}^\infty\frac{2n+1}{n^2(n+1)^2}=1$$1/n^2-1/(n+1)^2$
S07$\displaystyle\sum_{n=1}^\infty\frac1{n(n+1)^2}=2-\frac{\pi^2}{6}$$1/n-1/(n+1)-1/(n+1)^2$
S08$\displaystyle\sum_{n=1}^\infty\frac{2n+1}{n(n+1)^2}=\frac{\pi^2}{6}$$1/n-1/(n+1)+1/(n+1)^2$
S09$\displaystyle\sum_{n=1}^\infty\frac1{n^2(n+1)^2}=\frac{\pi^2}{3}-3$$1/n^2+1/(n+1)^2-2/[n(n+1)]$
S10$\displaystyle\sum_{n=1}^\infty\frac{2n-1}{n^2(n+1)^2}=7-\frac{2\pi^2}{3}$S06からS09の2倍を引く
S11$\displaystyle\sum_{n=1}^\infty\frac{n^2+1}{n^2(n+1)^2}=\frac{\pi^2-8}{2}$$1/n^2+2/(n+1)^2-2/[n(n+1)]$
S12$\displaystyle\sum_{n=1}^\infty\frac1{4n^2-1}=\frac12$$[1/(2n-1)-1/(2n+1)]/2$
S05の導出:何項にも一般化できる理由

$A_n=1/[n(n+1)\cdots(n+k-1)]$とおくと、$A_n-A_{n+1}=k/[n(n+1)\cdots(n+k)]$です。したがって部分和は$(A_1-A_{N+1})/k$。$A_1=1/k!$、$A_{N+1}\to0$から公式が得られます。

例えば$\sum(1/n-1/(n+1))$を、発散する2つの和$\sum1/n-\sum1/(n+1)$に分離してはいけません。有限和で引き算してから極限を取ります。

3.等比級数から作る公式

この節では$|x|<1$です。収束半径の内部では、べき級数を項別に微分・積分できます。

番号公式操作
S13$\displaystyle\sum_{n=0}^\infty x^n=\frac1{1-x}$有限等比和の極限
S14$\displaystyle\sum_{n=1}^\infty nx^n=\frac{x}{(1-x)^2}$$x\,d/dx$を1回
S15$\displaystyle\sum_{n=1}^\infty n^2x^n=\frac{x(1+x)}{(1-x)^3}$$x\,d/dx$を2回
S16$\displaystyle\sum_{n=1}^\infty n^3x^n=\frac{x(1+4x+x^2)}{(1-x)^4}$$x\,d/dx$を3回
S17$\displaystyle\sum_{n=1}^\infty\frac{x^n}{n}=-\ln(1-x)$S13を0から$x$まで積分
S18$\displaystyle\sum_{n=1}^\infty\frac{x^n}{n(n+1)}=1+\frac{1-x}{x}\ln(1-x)$S17をもう1回積分。$x=0$は連続延長で0
S19$\displaystyle\sum_{n=0}^\infty\binom{n+k}{k}x^n=\frac1{(1-x)^{k+1}}$$k\ge0$は整数。S13を$k$回微分
S20$\displaystyle\sum_{n=1}^\infty H_nx^n=-\frac{\ln(1-x)}{1-x}$$H_n$を有限和に開いて順序を交換

数値を代入して得られる代表例

$$\sum_{n=1}^\infty\frac1{2^n}=1,\qquad \sum_{n=1}^\infty\left(\frac1{2^n}+\frac1{3^n}\right)=\frac32,$$ $$\sum_{n=1}^\infty\frac n{2^n}=2,\qquad \sum_{n=1}^\infty\frac{n^2}{2^n}=6,\qquad \sum_{n=1}^\infty\frac{n^3}{2^n}=26,$$ $$\sum_{n=1}^\infty\frac{2n-1}{2^n}=3,\qquad \sum_{n=1}^\infty\frac1{n2^n}=\ln2,\qquad \sum_{n=1}^\infty\frac{H_n}{2^n}=2\ln2.$$
S20の導出:二重和の形に直す

$|x|<1$なら絶対収束するため、$\sum_{n\ge1}\sum_{k=1}^n x^n/k=\sum_{k\ge1}(1/k)\sum_{n\ge k}x^n$と交換できます。内側の等比和は$x^k/(1-x)$なので、S17を使って結論が出ます。交換の正当化には、$\sum_{k\ge1}|x|^k/[k(1-|x|)]<\infty$を確認すれば十分です。

4.基本関数のべき級数と端点

番号公式実数$x$での成立範囲
S21$\displaystyle e^x=\sum_{n=0}^\infty\frac{x^n}{n!}$すべての実数
S22$\displaystyle\sin x=\sum_{n=0}^\infty\frac{(-1)^nx^{2n+1}}{(2n+1)!}$すべての実数
S23$\displaystyle\cos x=\sum_{n=0}^\infty\frac{(-1)^nx^{2n}}{(2n)!}$すべての実数
S24$\displaystyle\ln(1+x)=\sum_{n=1}^\infty\frac{(-1)^{n-1}x^n}{n}$$-1<x\le1$。$x=1$は条件収束
S25$\displaystyle\arctan x=\sum_{n=0}^\infty\frac{(-1)^nx^{2n+1}}{2n+1}$$-1\le x\le1$。両端で条件収束
S26$\displaystyle\arcsin x=\sum_{n=0}^\infty\frac{\binom{2n}{n}x^{2n+1}}{4^n(2n+1)}$$-1\le x\le1$。両端でも絶対収束
S27$\displaystyle(1+x)^\alpha=\sum_{n=0}^\infty\binom\alpha n x^n$$|x|<1$、$\alpha$は実数。非負整数なら有限の二項定理

一般化した二項係数は$\binom\alpha0=1$、$\binom\alpha n=\alpha(\alpha-1)\cdots(\alpha-n+1)/n!$です。S21~S23はテイラーの定理から導けます。例えば$e^x$の$n$次までの剰余は、固定した$x$について$e^{|x|}|x|^{n+1}/(n+1)!$以下であり、0へ近づきます。

S24とS25は$1/(1+x)$、$1/(1+x^2)$の等比展開を積分すると得られます。端点では内部での項別積分だけでは証明が完了しないため、交代級数の収束とアーベルの定理を使います。逆三角関数の級数はNIST DLMF §4.24でも成立範囲と併せて確認できます。

$$\sum_{n=1}^\infty\frac{(-1)^{n-1}}n=\ln2,\qquad \sum_{n=0}^\infty\frac{(-1)^n}{2n+1}=\frac\pi4,$$ $$\sum_{n=0}^\infty\frac1{(2n)!}=\frac{e+e^{-1}}2,\qquad \sum_{n=0}^\infty\frac1{(2n+1)!}=\frac{e-e^{-1}}2.$$

収束半径は端点の答えを決めない

$\sum c_nx^n$では、$1/R=\limsup|c_n|^{1/n}$により収束半径$R$を求められます。$|x|<R$では絶対収束、$|x|>R$では発散ですが、$x=\pm R$は別に判定します。例えば$\sum x^n/n$は$R=1$でも、$x=1$では発散、$x=-1$では条件収束します。

5.逆数のべき・ゼータ関数

実数$s>1$について$\zeta(s)=\sum_{n=1}^\infty n^{-s}$と定義します。以下の値と一般公式はNIST DLMF §25.6に整理されています。

番号公式関係・条件
S28$\displaystyle\sum_{n=1}^\infty\frac1{n^2}=\frac{\pi^2}{6}$バーゼル問題
S29$\displaystyle\sum_{n=1}^\infty\frac1{n^4}=\frac{\pi^4}{90}$偶数次のゼータ値
S30$\displaystyle\sum_{n=1}^\infty\frac1{n^6}=\frac{\pi^6}{945}$偶数次のゼータ値
S31$\displaystyle\sum_{n=1}^\infty\frac1{(2n-1)^s}=(1-2^{-s})\zeta(s)$$s>1$。偶数項を除く
S32$\displaystyle\sum_{n=1}^\infty\frac{(-1)^{n-1}}{n^s}=(1-2^{1-s})\zeta(s)$ここでは$s>1$。絶対収束する和を分ける
S33$\displaystyle\sum_{n=0}^\infty\frac1{(2n+1)^2}=\frac{\pi^2}{8}$S28とS31
S34$\displaystyle\sum_{n=1}^\infty\frac{(-1)^{n-1}}{n^2}=\frac{\pi^2}{12}$S28とS32
S35$\displaystyle\sum_{n=0}^\infty\frac{(-1)^n}{(2n+1)^2}=G$$G=0.915965\ldots$はカタラン定数
S28の導出〔発展〕:フーリエ級数で求める

$[-\pi,\pi]$上の$x^2$を周期延長すると、フーリエ級数は$x^2=\pi^2/3+4\sum_{n\ge1}(-1)^n\cos(nx)/n^2$です。定数係数は積分で$\pi^2/3$、余弦係数は2回の部分積分で$4(-1)^n/n^2$と求まります。係数の絶対和が収束し、区分的に滑らかな周期関数へのフーリエ収束定理を使えるので$x=\pi$を代入できます。$\pi^2=\pi^2/3+4\sum1/n^2$から$\sum1/n^2=\pi^2/6$です。

$s=1$でS32にそのまま代入して「$0\times\infty$」を計算することはできません。交代調和級数の値$\ln2$は、S24などから別に求めます。また、解析接続による$\zeta(-1)=-1/12$は、通常の意味で$1+2+3+\cdots$が収束するという主張ではありません。

6.二項係数を含む級数

番号公式条件
S36$\displaystyle\sum_{n=0}^\infty\binom{2n}{n}x^n=\frac1{\sqrt{1-4x}}$$|x|<1/4$
S37$\displaystyle\sum_{n=0}^\infty\frac1{n+1}\binom{2n}{n}x^n=\frac{1-\sqrt{1-4x}}{2x}$$|x|\le1/4$。$x=0$は連続延長で1
S38$\displaystyle\sum_{n=1}^\infty\binom{n+2}{3}x^n=\frac{x}{(1-x)^4}$$|x|<1$。$n=1$から開始
S39$\displaystyle\sum_{n=1}^\infty\frac1{\binom{n+k}{n}}=\frac1{k-1}$整数$k\ge2$
S40$\displaystyle\sum_{n=1}^\infty\frac{\binom{n+2}{n}}{2^n(n+1)^2}=\ln2$絶対収束
S41$\displaystyle\sum_{n=1}^\infty\frac1{n^2\binom{2n}{n}}=\frac{\pi^2}{18}$絶対収束
S42$\displaystyle\sum_{n=1}^\infty\frac{(-1)^{n-1}}{n^3\binom{2n}{n}}=\frac25\zeta(3)$絶対収束。発展公式
S36~S40の導出

S36はS27に$\alpha=-1/2$、変数$-4x$を代入すると得られます。S37はS36を0から$x$まで積分して$x$で割った式です。端点の絶対収束は$\binom{2n}{n}/4^n$が$n^{-1/2}$の定数倍に漸近することから分かります。S38はS19の$k=3$で添字を1つずらします。

S39では$\binom{n+k}{n}^{-1}=k!/\{(n+1)\cdots(n+k)\}$を使い、S05の開始位置をずらすと$1/(k-1)$になります。例えば$k=3,4$なら、それぞれ$1/2,1/3$です。

S40の一般項は$\frac1{2^{n+1}}(1+\frac1{n+1})$です。等比和とS17を使えば$\frac12+\frac12(2\ln2-1)=\ln2$になります。

S41の導出〔発展〕:逆正弦関数の平方

$F(z)=2(\arcsin(z/2))^2$とおくと、$(4-z^2)F”-zF’=4$、$F(0)=F'(0)=0$を満たします。$F(z)=\sum_{n\ge1}c_nz^{2n}$を代入すると$c_1=1/2$、$c_{n+1}=n^2c_n/[2(n+1)(2n+1)]$です。この漸化式を満たす係数は$c_n=1/[n^2\binom{2n}{n}]$。よって$|z|<2$で$F(z)=\sum z^{2n}/[n^2\binom{2n}{n}]$となり、$z=1$でS41が得られます。

S42はDLMF 25.6.9の公式です。ここでは既知の発展公式として掲載し、初等的な導出を示したS36~S41とは区別します。

$$\sum_{n=1}^\infty\frac{\binom{n+2}{3}}{3^n}=\frac{27}{16},\qquad \sum_{n=0}^\infty\frac{\binom{2n}{n}}{8^n}=\sqrt2,\qquad \sum_{n=0}^\infty\frac{\binom{2n}{n}}{4^n(n+1)}=2.$$

7.三角関数と部分分数展開〔発展〕

番号公式実数パラメータの条件
S43$\displaystyle\sum_{n=1}^\infty\frac{\sin(nx)}n=\frac{\pi-x}{2}$$0<x<2\pi$
S44$\displaystyle\sum_{n=1}^\infty\frac{\cos(nx)}n=-\ln\!\left(2\sin\frac x2\right)$$0<x<2\pi$
S45$\displaystyle\sum_{n=1}^\infty\frac{\cos(nx)}{n^2}=\frac{\pi^2}{6}-\frac{\pi x}{2}+\frac{x^2}{4}$$0\le x\le2\pi$
S46$\displaystyle\sum_{n=1}^\infty\frac1{n^2-a^2}=\frac1{2a^2}-\frac{\pi}{2a}\cot(\pi a)$$a\notin\mathbb Z$
S47$\displaystyle\sum_{n=1}^\infty\frac1{n^2+a^2}=\frac{\pi a\coth(\pi a)-1}{2a^2}$$a>0$
S48$\displaystyle\sum_{n=1}^\infty\frac1{(n^2+a^2)^2}=\frac{\pi\coth(\pi a)}{4a^3}+\frac{\pi^2}{4a^2\sinh^2(\pi a)}-\frac1{2a^4}$$a>0$

$\coth t=\cosh t/\sinh t$です。S43とS44はディリクレの判定で収束を確認できます。証明には、まず$0<r<1$で$\sum r^ne^{inx}/n=-\log(1-re^{ix})$を使い、アーベルの定理で$r\uparrow1$を取ります。実部がS44、虚部がS43です。S45は、減衰因子$r^n$を入れてS43を積分した後、極限を取ると導けます。

S46は余接関数の部分分数展開に$z=\pi a$を代入したものです。S47は同じ展開に$z=i\pi a$を代入し、$\cot(it)=-i\coth t$を使います。S48はS47を$a$で微分して$-1/(2a)$を掛けた式です。$a>0$の任意のコンパクト区間で導関数級数が一様収束するため、この項別微分を行えます。

$$1-\sum_{n=1}^{\infty}\frac2{25n^2-1} =\frac\pi5\cot\frac\pi5 =\frac\pi5\sqrt{1+\frac2{\sqrt5}}.$$

これはS46の$a=1/5$です。S46の式に$a=0$を直接代入することはできませんが、極限を取るとS28が戻ります。

8.積分と級数をつなぐ

番号公式条件・導出
S49$\displaystyle\sum_{n=1}^\infty\frac{H_n}{n(n+1)}=\frac{\pi^2}{6}$非負の二重和の順序交換
S50$\displaystyle\sum_{n=1}^\infty\frac1{n^22^n}=\frac{\pi^2}{12}-\frac{(\ln2)^2}{2}$二重対数関数の反射公式
S51$\displaystyle\sum_{n=0}^\infty\frac{(-1)^n}{4n+3}=\frac{\pi-2\ln(1+\sqrt2)}{4\sqrt2}$$\int_0^1x^2/(1+x^4)\,dx$へ変換
S52$\displaystyle\sum_{n=0}^\infty\frac{(-1)^n}{4n+1}=\frac{\pi+2\ln(1+\sqrt2)}{4\sqrt2}$$\int_0^1 1/(1+x^4)\,dx$へ変換
S53$\displaystyle\sum_{n=1}^\infty\frac1{n^s}=\frac1{\Gamma(s)}\int_0^\infty\frac{x^{s-1}}{e^x-1}\,dx$実数$s>1$
S54$\displaystyle\sum_{n=1}^\infty\frac1{n^n}=\int_0^1x^{-x}\,dx$非負項の展開と積分
S55$\displaystyle\sum_{n=1}^\infty\frac{(-1)^{n-1}}{n^n}=\int_0^1x^x\,dx$絶対積分可能性で項別積分
S49・S50の導出

S49では$\sum_{n\ge1}\sum_{k=1}^n1/[k n(n+1)]$の順序を交換します。固定した$k$に対して$\sum_{n=k}^\infty1/[n(n+1)]=1/k$なので、全体は$\sum1/k^2$です。すべて非負の項なのでトネリの定理が使えます。

S50では$\operatorname{Li}_2(x)=\sum_{n\ge1}x^n/n^2$を使います。$0<x<1$で、$\operatorname{Li}_2(x)+\operatorname{Li}_2(1-x)+\ln x\ln(1-x)$を微分すると0になります。$x\downarrow0$で値は$\zeta(2)$なので、$x=1/2$を代入して求まります。定義と関連公式はNIST DLMF §25.12にあります。

S51・S52の導出:有限等比和の剰余を使う

$1/(1+x^4)=\sum_{n=0}^{N}(-1)^nx^{4n}+(-1)^{N+1}x^{4N+4}/(1+x^4)$です。$[0,1]$で積分した剰余の絶対値は$1/(4N+5)$以下で、0へ近づきます。$x^2$を掛けた場合も同様です。従って項別積分が正当化されます。$x^4+1=(x^2+\sqrt2x+1)(x^2-\sqrt2x+1)$で部分分数分解し、対数と逆正接の原始関数を0と1で評価すれば表の値になります。

S53はゼータ関数の積分表示です。$1/(e^x-1)=\sum_{n\ge1}e^{-nx}$を使うと、各項の積分が$\Gamma(s)/n^s$になります。原点付近では被積分関数が$x^{s-2}$と同程度なので、収束条件は$s>1$です。

S54・S55の導出:$x^{\pm x}$の展開

$x^{-x}=e^{-x\ln x}$を指数級数に展開します。$\int_0^1x^n(-\ln x)^n\,dx=n!/(n+1)^{n+1}$なので、$n!$が消えて$\sum_{n\ge0}1/(n+1)^{n+1}$が得られます。積分公式は$t=-\ln x$でガンマ積分へ直すと導けます。$x^x=e^{x\ln x}$では各項に$(-1)^n$が付きます。絶対値を積分した和がS54の収束級数で抑えられるので、こちらも項別積分ができます。

9.代数方程式から和を求める〔発展〕

二項係数の添字に$3n,4n$が現れる場合、代数方程式を満たす母関数が役立ちます。母関数とは、数列をべき級数の係数としてまとめた関数です。ここでは整数$m\ge2$に対して$F=1+zF^m,\ F(0)=1$で定まる枝を使います。

$$F(z)=\sum_{n=0}^\infty\frac1{(m-1)n+1}\binom{mn}{n}z^n,\qquad G_m(z)=\sum_{n=0}^\infty\binom{mn}{n}z^n=\frac{F}{m-(m-1)F}.$$

前者はIra Gesselの論文「Lagrange inversion」で扱われるラグランジュ反転公式から導けます。後者は$G_m=F+(m-1)zF’$を使い、$F=1+zF^m$を微分して整理したものです。収束半径は$(m-1)^{m-1}/m^m$です。

S56 既存の4項二項係数級数を導く

$$\sum_{n=0}^\infty\frac{5^{3n}\binom{4n}{n}}{6^{4n}}=3.$$

$m=4,\ z=125/1296$では、$F=6/5$が$F=1+zF^4$を満たします。$F(0)=1$から連続につながる小さい正の枝を選んでおり、$F<4/3$です。したがって$G_4=F/(4-3F)=3$。方程式の別の根を選ぶと、元の級数とは違う値になります。

S57 既存の3項二項係数級数を導く

$$\sum_{n=0}^\infty\binom{3n}{n}\frac{9n^2-3n-1}{(3n-1)(3n-2)} \left(\frac2{27}\right)^n=\frac14.$$
母関数による導出

$F=1+zF^3,\ F(0)=1$とします。ラグランジュ反転から$n\ge1$で$[z^n]F^{-2}=-4(2n-1)\binom{3n}{n}/[3(3n-1)(3n-2)]$です。$[z^n]$は$z^n$の係数を表します。従って左辺の母関数は$G_3(z)-\frac94F(z)^{-2}+\frac34$です。最後の定数は、$n=0$の項を$-1/2$に合わせるために必要です。

$z=2/27$では選ぶべき根は$F=\frac32(\sqrt3-1)$です。$G_3=F/(3-2F)$とともに代入すると$1/4$が得られます。このように開始添字の0の項も含めて照合します。

10.誤差を指定して和を近似する

小数が安定して見えることと、誤差が保証されたことは違います。次の評価を使うと、必要な項数を事前に見積もれます。

番号対象第$N$項までで打ち切る誤差
S58$\sum_{n=0}^\infty ar^n,\ |r|<1$$\left|S-\sum_{n=0}^Nar^n\right|=|a r^{N+1}/(1-r)|$
S59$\sum_{n=1}^\infty(-1)^{n-1}b_n$、$b_n$は非負・単調減少し0へ収束$|S-S_N|\le b_{N+1}$
S60$\sum_{n=1}^\infty n^{-p},\ p>1$$\dfrac{(N+1)^{1-p}}{p-1}\le S-S_N\le\dfrac{N^{1-p}}{p-1}$

収束の遅い式から、速い式へ変える

$\ln2=1-1/2+1/3-\cdots$で誤差を$10^{-6}$以下に保証するには、S59ではおよそ100万項が必要です。一方、S17を$x$と$-x$で引くと

$$\ln\frac{1+x}{1-x}=2\sum_{n=0}^{\infty}\frac{x^{2n+1}}{2n+1}\qquad(|x|<1)$$

が得られます。$x=1/3$なら左辺は$\ln2$です。$n=0,\ldots,N$で打ち切った残りは

$$0<R_N\le \frac{2x^{2N+3}}{(2N+3)(1-x^2)} \qquad(0<x<1).$$

$N=5$、すなわち6項で誤差は約$1.09\times10^{-7}$以下です。値が同じでも計算に適した級数は異なります。

浮動小数点計算では、打切り誤差とは別に丸め誤差もあります。大きい正負の項を打ち消す式では桁落ちが生じるため、誤差評価とともに式の数値的な安定性も確認します。

11.和・極限・微分・積分の交換で確認すること

  • べき級数の内部:収束半径より内側のコンパクト区間では一様収束し、項別積分・項別微分ができます。端点では別の議論が必要です。
  • 非負の項:二重和や積分との交換にはトネリの定理、増加する部分和の極限には単調収束定理が使えます。有限値であるかどうかはさらに確認します。
  • 符号が混在する場合:絶対値を積分・総和した量が有限であることや、可積分な関数で一様に抑えられることが、交換を正当化する代表的な条件です。
  • 条件収束:項の順番を変えたり、無限個をまとめ直したりする操作を、有限和と同じ感覚で使わないようにします。

12.確認問題

  1. $\sum_{n=1}^\infty1/[n(n+3)]$を求める。
  2. $\sum_{n=1}^\infty n/3^n$を求める。
  3. $\sum_{n=1}^\infty n^2/3^n$を求める。
  4. $\sum_{n=1}^\infty(-1)^{n-1}/\sqrt n$の絶対収束・条件収束を判定する。
  5. $\sum_{n=2}^\infty1/[n(\ln n)^2]$の収束を判定する。
  6. $\sum_{n=1}^\infty1/[n^2(n+1)]$を求める。
解答
  1. S02より$H_3/3=11/18$。
  2. S14より$(1/3)/(2/3)^2=3/4$。
  3. S15より$(1/3)(4/3)/(2/3)^3=3/2$。
  4. 交代級数判定で収束しますが、絶対値の級数は$p=1/2$の$p$級数なので発散。条件収束です。
  5. 積分判定で収束します。$\int_2^\infty dx/[x(\ln x)^2]=1/\ln2$です。これは積分の値であり、級数の和そのものではありません。
  6. $1/[n^2(n+1)]=1/n^2-1/n+1/(n+1)$なので$\zeta(2)-1=\pi^2/6-1$。