色々な現象名・効果名一覧

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     物理的な効果や現象

    シュリーレン現象(Schlieren)

    透明な媒質の中で場所により屈折率が違うとき、その部分にしま模様やもや状の影が見える現象。水溶液への溶質の溶解や、異なる温度の空気の層によって生じる陽炎などはシュリーレン現象の主な例である。

    図.氷砂糖が水に溶解する様子

    図.陽炎(かげろう)


    陽炎・逃げ水

    陽炎(かげろう;heat shimmer;heat haze)とは、密度の異なる大気が混ざり合うことで光が屈折し、背後の風景が揺らめくように見える現象のことを指す。強い日射・微風などの条件が揃うと、アスファルトの舗装上や自動車の屋根の上などで観察できる。 蜃気楼の意味でこの言葉を使うこともある。

    特にアスファルトは黒色であるため、太陽光を大部分を吸収して高温になり、周辺の空気を熱して強い陽炎を発生させる。このとき光の全反射が起こり、あたかも水面があるかのように見えることがある。この現象を「逃げ水」(road mirage)と呼ぶ。実際には水がある訳ではなく、追いかけても逃げていくことからこの名が付いている。逃げ水は砂漠でも時折見られる現象であり、オアシスと勘違いして追いかけてしまうのは命取りである。

    図.逃げ水(にげみず)

    図.砂漠の逃げ水


    フェーン現象(Foehn wind)

    山の斜面に当たった気流が山を越え、暖かく乾いた下降気流となって風下の気温が上がる現象。非常に乾燥した強い突風として吹き下ろすこともありしばしば山火事の原因にもなる。日本語では「風炎」と当て字されることもある。フェーン現象には、熱力学的な断熱変化によって起こるフェーン現象と力学的に起こるフェーン現象の二種類がある。空気中の水蒸気量の違いや温度差による密度の差がフェーン現象を引き起こすことが知られており、風上の斜面で降水をもたらすのが熱力学的なフェーン現象である。

    参考:「フェーン現象は通説と異なるメカニズムで生じていることを解明」:一般によく知られているのは熱力学的メカニズムだが、日本で発生するフェーン現象の大半は力学的メカニズムで発生しているとする筑波大学の研究報告。

    図.熱力学的フェーン現象の概略図


    ジャックナイフ現象

    トラクターやバイクなどの牽引自動車が、急ブレーキ又は急ハンドルをした際に運転席と荷台がくの字に折れ曲がる現象。トレーラーの荷台部分には大抵の場合重い積み荷が積載されており、この積み荷に慣性の法則が働くことによりジャックナイフのように荷台部分が折れ曲がる。これによりトラックの荷台が別車線や対向車線に進入してしまう危険性があるので、後続車や対向車のドライバーは注意しておきたい。なお「ジャックナイフ」とは折り畳み式の小形ナイフを指している。

    図.くの字に折れ曲がって停止したトラック


    コアンダ効果(Coandă effect)

    粘性を有する流体の流れが近傍の壁面へ引き寄せられたり、壁面との接触を保ち続けるように流れる現象。ルーマニアの発明家アンリ・コアンダがジェットエンジンの実験において指摘したものが最初とされる。

    例えば、薬品をビーカーに流し込む際に、ビーカーの壁面に当てたガラス棒に液体を伝わせて流し込む方法が取られることがある。これはコアンダ効果を利用したものである。また、下の動画のようにドライヤーの流風でピンポン玉を浮かせることもできるが、これもコアンダ効果の原理を応用したものである。


    ブロッケン現象

    太陽などの光が背後から差し込み、影の側にある雲粒や霧粒などのコロイド粒子によって光が散乱され、影の周囲に虹のような光の輪が現れる現象

    図.人の影によるブロッケン現象

    図.飛行機の影によるブロッケン現象


    チンダル現象

    コロイド状の物体に強い光を当てると光の筋が見える現象。霧の中で車のヘッドライトを付けたときや、雲の隙間から光の筋が見えるのはチンダル現象による。水蒸気はコロイドであるため、チンダル現象は自然界の至る所で観察される。

    図.チンダル現象


    エルニーニョ現象・ラニーニャ現象

    エルニーニョ現象」とは、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より高くなり、その状態が1年程度続く現象を指す。 「ラニーニャ現象」では逆に、同じ海域で海面水温が平年より低い状態が続く現象を指す。これらの現象はそれぞれ数年おきに発生しており、地球規模での気候変動に影響を与えていると考えられている。

    「エルニーニョ」”El Niño” はスペイン語で「男の子」や「イエス・キリスト」を意味するが、これは元々、地元の漁師が毎年クリスマスの時期にペルーとエクアドルの国境付近の海域で発生する海水温の上昇現象を指して呼んでいたことに由来する。一方で、エルニーニョ現象と逆に東太平洋の赤道付近で海水温が低下する現象は、スペイン語で「女の子」の意味である「ラニーニャ」”La Niña” と呼ばれるようになった。


    ヒートアイランド現象

    郊外に比べて都市部ほど気温が高くなる現象。地表面の人工化(アスファルトやコンクリート面の敷設)や人口排熱の増加などが原因となって引き起こされる。特に近年の日本(特に関東地方)の熱帯夜日数は増加傾向にある。


    チェレンコフ効果

    荷電粒子の速度がその媒質中を進む光速度よりも速い場合に光が放射される現象のこと。チェレンコフ放射ともいう。相対性理論では真空中の光速は常に一定と仮定しているが、空気や水などの媒質中を進む光の速度はこれよりも遅くなる。媒質中の光の速度よりも速い速度で荷電粒子が通過する際に放出される光が「チェレンコフ放射光」である。


    光電効果

    物質に光を照射すると、電子(特にこの場合「光電子」と呼ぶ)が物質の表面から放出される現象のこと。光のもつエネルギーが物質中の電子に与えられることによって電子殻から内殻電子が飛び出す。光電効果には外部光電効果と内部光電効果の2種類があり、単に光電効果という場合は外部光電効果を指すことが多い。19世紀中頃には既に報告されており、長らく物理学の難題とされてきたが、アインシュタインが光量子仮説を導入して光電効果のメカニズムの説明に成功。この業績によって、アインシュタインは1921年にノーベル物理学賞を受賞した。光電効果は固体の電子状態を調べる手法の一つである光電子分光法に応用されており、スウェーデンの物理学者カイ・シーグバーン (Kai M. Siegbahn) は高分解能光電子分光法を発明した功績で1981年のノーベル物理学賞を受賞している。


    コンプトン効果

    X線を物体に照射すると、散乱X線の波長が入射X線の波長より長くなる現象。電子によるX線の非弾性散乱によって起こる現象であり、散乱角$\phi$で散乱された散乱X線の波長を$\lambda^{\prime}$とすると波長の差は$$\Delta \lambda =\lambda^{\prime}-\lambda ={\frac {h}{m_{\text{e}}c}}(1-\cos \phi )$$で与えられる。光電効果と同様、コンプトン効果はX線(電磁波)が粒子性をもつこと、つまり光子として振る舞うことを示しており、光量子仮説を支持する結果を与えるものである。コンプトンはコンプトン効果を発見した功績により1927年にノーベル物理学賞を受賞した。


    ドップラー効果

    波の発生源が移動する、あるいは観測者が移動することで観測される周波数が変化する現象。ドップラー効果は波動に共通して生じる現象であり、音や光で観察される。音の場合は救急車のサイレンの音高の変化などが該当する。光の場合は天体の吸収スペクトルデータと本来の元素の吸収線との差から遠ざかる速度を見積もることなどに利用される(天体は速い速度で運動しているため光の周波数がずれる)。因みに、音が伝播する速度は媒質(および、その密度)によって決まっており、これを上回る速さで音源が移動すると衝撃波が発生する。


    ムペンバ効果

    水などの冷却時に、特定の条件下では高温の水のほうがより低温の水より速く凍結するという効果。1963年、タンザニアの中学生であったエラスト・B・ムペンバ (Erasto B. Mpemba) が発見したとされることに因む。再現性が悪い現象としてしられ、物理学的に眉唾物として扱われる向きもある。

    しかし2020年、Avinash Kumar氏とJohn Bechhoefer氏の研究チームは、水中におけるガラスのコロイド粒子の振る舞いを研究していた際に、高温のガラスが低温のガラスよりも速く冷却される現象を偶然発見した。これらの知見を基にNature誌上で指数関数的に速い冷却が観察されたとする論文を発表し、相転移を跨がない物質の温度変化(冷却過程)における一般的な現象としてムペンバ効果を定義することに成功した。将来的にムペンバ効果の研究は、マイクロプロセッサなどの局所的な熱源から熱を迅速に除去するための新手法の確立に繋がると期待されている。

    参考:A. Kumar and J. Bechhoefer, “Exponentially faster cooling in a colloidal system” Nature 584, 64–68 (2020)


    コリジョンコース現象

    等速直線運動をしている2つの車両や航空機同士が、互いから見えている相対的な位置(角度)が変わらないことから止まっているように錯覚してしまう現象のこと。この現象が起こると、視界が良好な場合であっても互いを早期に視認することが困難となり、避けきれずに衝突してしまうことから “Collision”(衝突)する “Course”(進路)との名が付いている。海上でも、見落としてしまったり、停泊中の船舶と見分けが付かなかったりして避けきれずに衝突してしまう事故が稀に発生する。英語圏では “Constant bearing, decreasing range (CBDR)” と呼ばれている。

    以下の動画は実際にコリジョンコース現象が原因となった交通事故の一例(事故シーンは3:56~)。運転の際は十分に気を付けたい。


    圧縮効果

    2つ以上の対象を遠くから撮影すると近くで撮った時よりも密集して(対象同士の距離が縮まって)見える効果。圧縮効果は望遠レンズによる撮影の際に多く見られる。遠近法による錯覚の一種。プロ野球中継でマウンドとバッターボックスの距離が近いように見えるのも圧縮効果の身近な例だと言える。


    レンズフレア・スミア現象

    周囲より極端に明るい光源を撮影するときに白い線が現れる現象を「スミア現象」という。また、そのような光源の周囲に現れる放射状の光の筋を「レンズフレア」という。

    図.レンズフレアの例


    内視現象

    眼球内部に原因を有する視覚効果全般を指す。例えば「飛蚊症」はガラス体内部の繊維が糸くず状のもやとして視界に現れる現象であり、内視現象の一種である。「眼内閃光」は眼球を瞼越しに圧迫するなどして網膜を刺激することで光を知覚したような感覚が生まれる現象であり、これも内視現象の一種である。これらの他にも、ブルーフィールド内視現象(シェーラー現象)、ハイディンガーのブラシ、網膜脈管視現象、プルキニエの像 (Purkinje images) といった現象が知られている。


    バタフライ効果

    些細な出来事が事象の遠因となり、引き起こされた一連の事象が繋がって次第に大きな現象へと至ること比喩的に表現した用語である。この概念を最初に発表した気象学者エドワード・ローレンツ(Edward Norton Lorenz)の講演の題名『Predictability: Does the Flap of a Butterfly’s Wings in Brazil Set Off a Tornado in Texas?(予測可能性:ブラジルでの蝶の羽ばたきはテキサスでトルネードを引き起こすか)』が名前の由来になっている。「蝶が羽ばたく程度の非常に小さな撹乱が遠方の気象に影響を与えうる」という主張がもし正しければ、現実世界の初期値鋭敏性が非常に高いことを意味し、長期的な気象予測を正確に行うことが困難(あるいは、一切の観測誤差を無くさない限り不可能)であることを示唆する。元々は気象学の用語だったが、カオス理論やタイムマシン関連の文脈で登場することが多い。

    以下の図はローレンツ方程式と呼ばれる3元連立非線形常微分方程式の解として得られる「ローレンツ・アトラクタ」と呼ばれるトラジェクトリの一例である。これは1963年にローレンツが論文中で提示したもので、決定論的な連立常微分方程式が初期値鋭敏性(予測不可能性)を有するという事実は当時の研究者に衝撃を与えた。

    図.ローレンツ・アトラクタ
    (別名「ローレンツ・バタフライ」)

     

     心理的な効果や現象

    不気味の谷現象

    実際の人間に不完全に似ている人間風の物体が、観察者に不気味さと嫌悪感を引き起こす現象のこと。「完全なロボット」から徐々に「人間との類似度」(擬人性)が増していくと、ある領域で違和感や恐怖感、嫌悪感(負の感情的反応)が顕著に表れる。これを「不気味の谷」と呼ぶ。この成因として、モノと人間の分類不可能性が嫌悪感を催しているという指摘や、不完全な人間らしさが死や非健常性を連想させるために恐怖を与えるという説がある。英語では “Uncanny valley” と呼ばれており、メカニズムについて研究が進められている。

    参考:「アンドロイドの表情に違和感が生じる要因候補を特定 ~顔皮膚の大局的流れにおける人との違いが明らかに~」:顔面の皮膚の大局的な流れが人と異なることが理由で、アンドロイドが表情を表出した際に違和感が生じるとする大阪大学の研究報告。


    ゲシュタルト崩壊

    全体性を有するまとまりのある構造(Gestalt:形態)から全体性が低下したように認識されてしまい、構成部分としてしか認識できなくなる現象。文字や記号、パターンの全体的印象が消失する一時的な視覚性失認の一種で、視覚的な「意味飽和」とも言われる。同じ文字を多数書き取るときなどに発生することが多い。例えば、以下の画像を眺めると何となく感覚的に理解できるかもしれない(ひらがなの「の」ではなく単なる模様に見えてくる)。

    図.ひらがなの「の」


    シミュラクラ現象(Simulacrum)

    3つの点が集まった図形が人の顔に見える現象。ヒトの脳の働きによるものと考えられている。大抵の心霊現象や心霊写真などはこの現象により説明できることが多い。

    図.コンセント
    (顔に見える?)


    ポップル錯視(文字列傾斜錯視)

    特定の文字列を繰り返すと文字列が傾いているように感じる錯視

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    ポップル錯視の例


    ツァイガルニク効果(Zeigarnik effect)

    人は、達成できなかった事柄や中断している事柄の方を、達成できた事柄よりもよく覚えているという現象。例外はあるだろうが「続きはCMの後で!」といった文句や「続きはWebで」などといった広告、シーンが断片的に流れる映画の予告等は、大抵この効果をベースにしたマーケティング戦略と考えられる。相手の中に未完の事象を経験させ、それについて頻繁に想起させることを狙った心理的戦略は、マーケティングだけでなく交渉や恋愛の場面でも応用される。


    コンコルド効果

    このまま投資を進めると損失が出ると分かっていても、これまでに投資した分を惜しみ、ついつい投資を継続してしまう心理的傾向のこと。 ファイナンスや経済学でもよく使用されている用語で、別名、コンコルドの誤謬、コンコルドの誤り、コンコルドの誤信、コンコルド錯誤ともいう。もしくは「サンクコストバイアス」ともいう。超音速旅客機コンコルドの商業的失敗に由来する言葉。


    損失回避の法則

    プロスペクト理論」によれば、人間は被る損失を避けようとする心理的傾向が強く、利益が得られる場合と比較して損失の程度に敏感に反応してしまうとされる。以下の例で考えてみると分かりやすい。

    (ケース1)
    A:100%の確率で10万円をもらえる
    B:10%の確率で100万円をもらえるが、90%の確率で何ももらえない

    (ケース2)
    A:100%の確率で10万円を支払わされる
    B:10%の確率で100万円を支払わされるが、90%の確率で何も支払わなくてよい

    ケース1ではAとBの選択肢を選ぶ割合が比較的割れるのに対し、ケース2では多くの人が金を一切支払わずに済む可能性があるBを選ぶ傾向にある(さらに桁を増やすと差がより顕著になる)。

    これは人間に損失を極力避けようとする本能が備わっていることを示していると考えられる。なお、直感的には選択肢Bの方が有利なように思われるが、数学的に考えるとAとBの損益の期待値は等しい。このように人間は目先の損失を前にすると合理的な選択ができなくなることがあり、株の狼狽売りなどもこの一種として説明される。得よりも損が重視されるという心理的傾向を利用したマーケティング戦略は身近なところに多く潜んでいる。因みに「プロスペクト」(prospect) とは「期待」や「予想」の意。


    ピグマリオン効果(ローゼンタール効果)

    ピグマリオン効果」または「教師期待効果」とは、周囲の期待に応じてその人の能力が向上することを指す。この現象はアメリカの心理学者ロバート・ローゼンタール(Robert Rosenthal)によって見出された。他者からの期待を受けることで学習や作業等の成果が上がるというピグマリオン効果に対して、教師が期待しないことによって学習者の成績が下がることは「ゴーレム効果」と呼ばれる。

    ピグマリオン効果については批判もあり、実験者効果によるバイアスの結果だと見なす流派もある。


    プラシーボ効果(プラセボ効果、偽薬効果)

    薬効の無い偽物の薬を処方しても、薬だと信じ込む事によって何らかの改善が見られる効果のこと。患者から見て投与される薬の真偽を不明にして行う試験法を「単盲検法」と言い、病状の改善が真の薬効かプラセボ効果によるものかを調べることができる。投与者(検査者)の評価に観察者バイアスが含まれるのを避けるため、一般には「二重盲検法」が用いられる。これは薬の真偽を第三者がシーリングして薬品の投与者にも不明にして行う試験法であり、薬の効果を正確に調べることができる信頼性のある方法である。例えば、新型コロナウイルスワクチンの臨床試験等でも二重盲検法が用いられている。


    カクテルパーティー効果

    人間には、カクテルパーティーのように大勢の人間がてんでんばらばらに話をしていても、自分に関連性の高いキーワードに対して無意識にその音声情報を聞き取る能力が備わっている、というもの。音声の選択的聴取を指す用語であり、選択的注意の一種。教室くらいの大きさの部屋で大勢が銘々話している時にどこかから自分の名前が発せられて「今誰か呼ばなかった?」と反応したという経験は無いだろうか?


    カラーバス効果(バーダー・マインホフ現象)

    一度知ったことについて、その後にそれを頻繁に見たり聞いたりする気になること。注意を向けているものにより気付くようになるという現象。「それまで知覚されなかったものが、それを知った途端に急に知覚されるようになること」とも表現される。選択的注意、認知バイアスの一種とされる。因みに「カラーバス効果」とは日本における造語であり、「ある一つの色を意識することでその色ばかりが目に付いて、普段よりもその色が多く感じてしまう心理効果」に由来する通称である。この現象は英語圏では “Frequency illusion“(頻度錯誤)という呼称で知られている。


    バーナム効果(Barnum effect)

    実際には誰にでも当てはまる情報が記載されているにもかかわらず、個人の性格に関する説明を自分によく当てはまっていると思い込んでしまう現象。心理学ではフォアラ効果(Forer effect)とも呼ばれる。よく観察すれば一般的な主張なのに、人間は自分だけに関する情報だと思ってしまう傾向がある。これを上手く利用すれば人を騙したり心理を誘導したりすることも可能である。

    占いやマジックなど、バーナム効果を利用したまじないの類は多く存在する。事前に情報収集することなく何気ない会話などから相手の気持ちを言い当てるテクニックは「コールドリーディング」と呼ばれる。人心掌握術の一種である。


    スモール・ワールド現象

    知り合い関係を芋づる式に辿っていけば世界中の誰にでも行き着くという仮説であり、日本における「世間は狭い」という表現に近しい。人間関係のネットワーク上で知り合いを数人程度(平均は6人程度とされる)辿れば世界の誰とでも繋がりがあるという。感染症の接触感染メカニズムとの関連が注目されている。


    エコーチェンバー現象

    閉鎖的空間内、あるいはコミュニティ内でのコミュニケーションを繰り返すことによって、特定の主張や信念が増幅されてしまう現象を比喩的に表現したもの。エコーチェンバー現象に陥った人々は自分たちの主張が異様に同化していることを疑問に思う事すらなく、反対意見を無条件に異端だと認識してしまう。近年のSNSにおける論争によく見られる構造であり、それぞれのコミュニティの「常識」を巡って不毛な争いが勃発することは茶飯事である。ここ数年で台頭した政治における「ポスト・トゥルース」は、まさにエコーチェンバー現象の成れの果てと言える。因みに、エコーとは「共鳴」、チェンバーとは「部屋」の意で、”Echo chamber” は「残響室」を意味する単語である。


    集団浅慮(グループシンク)

    集団で合意形成をする際に、前提条件やリスクを適切に判断できずに誤った(時に愚かな)決定を下してしまうこと。自分たちの主張の正当性を客観的に評価できていないという点でエコーチェンバー現象に近い現象と言える。「グループシンク」は、アメリカ合衆国の心理学者アーヴィング・ジャニスが政治分析に適用したのが祖とされ、戦時や開戦の可能性が高まるなど危機的状況下の政策決定において顕著に観察される。ジャニスは、結束力のある集団が、構造的な組織上の欠陥(情報不足や誤った前提)を抱え、刺激の多い状況(意思決定の困難な状況)に置かれるという3条件が重なったときに、組織は集団浅慮に陥ると考えた。なお、”groupthink” は文字通り「集団での思考」を意味する造語である。

    こうした現象は政治的な意思決定だけでなく現代のSNSコミュニティ内でも頻繁に見られる。政治、投資、反医療論(似非医学)等に関するコミュニティやオンラインサロンにおいて、(本人達は根拠があると思い込んでいるが)無根拠に自分達の主張を確信して「蜃気楼のような」意見形成が行われることがある。多くの場合、自身が集団浅慮に陥っていることは内発的に認知できないため、普段から注意深く生活する癖を付けるべきだと言える。


    ダニング=クルーガー効果

    図.ダニング=クルーガー曲線のイメージ

    ダニング=クルーガー効果」とは認知バイアスの一種で、能力の低い人ほど自らを過大評価してしまう傾向のこと。 自分の能力をメタ認知できず全体における自らの適格性を正しく評価できないことにより生じるもので、米国コーネル大学のデイヴィッド・ダニングジャスティン・クルーガーによって定義された。


    カリギュラ効果

    禁止されるほどやってみたくなる心理現象のこと。例えば「お前は見るな」とか「これは秘密!」など情報の閲覧・取得を禁止されると、むしろかえって見たくなる・知りたくなる心理現象が挙げられる。例えば狂言の演目の一つである「附子」では、強く禁じられるほど好奇心を掻き立てられる心理がもとで話が展開していく。


    ストライサンド効果

    ある情報を隠蔽しようとする努力が却ってその情報を広範囲に拡散させてしまうこと。2003年にアメリカの著名な歌手・女優であるバーブラ・ストライサンドが、自分の邸宅が写っていたネット上の画像の公開を差し止めようとして裁判を起こしたが、却って世間の関心を集める結果になってしまったことに由来する。


    ブーメラン効果

    物事の結果がその行為をした者自身に主に負の効果をもたらす現象のこと。ブーメランが飛び立った地点に帰ってくる軌道を描くことに由来し、結果的に(その人にとって)悪い状況に陥ってしまう場合に用いる。例えば、説得すれば説得するほど相手が反発してしまい、相手の意見がますます凝り固まっていく様子はまさにブーメラン効果である。カリギュラ効果やストライサンド効果などはブーメラン効果の一種と言える。


    セルフ・ハンディキャッピング

    自分自身にハンディキャップを課すことで失敗時の原因を外的条件に求め、成功の要因を内的条件に求める行為。これにより自分のせいで失敗した訳ではないと言い訳ができるようにして自尊心を守る。アメリカの社会心理学者エドワード・E・ジョーンズらによって提唱された。

    備考:東京大学前期試験(1994年)の英文要約のテーマとして扱われたことがある。


    傍観者効果

    ある事柄や出来事に対して、自分以外に傍観者がいる場合に率先して行動を起こさない集団心理のこと。傍観者の数が多いほど効果が増すと言われる。これは「他者が積極的に行動しないため緊急性を要しないと思い込む」、「他者と同調することで責任や非難が分散されると思い込む」、「自身の行動の結果に対する周囲からのネガティブな評価を恐れる」などの要因によって発生すると考えられる。

    図.傍観者効果とは異なるが事象としては似ている例

    参考:『しあわせアフロ田中』4巻、もしくは作者Twitter


    ストックホルム症候群

    立てこもり事件や誘拐事件の人質が、同じ空間で犯人と長時間ともにすることで犯人に愛着を抱くようになる心理。この名前は、1973年8月にストックホルムで発生した銀行強盗人質立てこもり事件(ノルマルム広場強盗事件)に由来する。この事件では、2人組の強盗が9人(最終的には4人)の人質をとって銀行の金庫室に5日間にわたって立てこもった。事件後に人質が犯人に協力して警察に敵対する行動を取っていたことが判明したことを受け、犯罪学者で精神科医でもあるニールス・ベジェロット (Nils Bejerot) がこの奇妙な現象を「ノルマルム広場症候群」を意味する Norrmalmstorgssyndromet と命名。それをスウェーデン国外のメディアは「ストックホルム症候群(Stockholm syndrome)」と報道した。

    逆に、加害者が被害者に親近感をいだく状態は「リマ症候群」という。こちらは1996年にペルーの首都リマにおいて発生した在ペルー日本大使公邸占拠事件に因んで命名された。このとき武装した一団は、各国の駐ペルー特命全権大使、日本企業のペルー駐在員ら約600人を人質にした(確保した人質の人数が多すぎたので順次解放された)。4か月以上という長い期間にわたって人質と犯人グループが同じ空間で生活したこともあり、実行犯らは人質に対してかなり同情的になっていたという。


    ウェルテル効果

    マスメディアの報道に影響されて自殺が増える事を指す。これを実証した社会学者ディヴィッド・フィリップスにより命名された。特に若年層が影響を受けやすいとされる。「ウェルテル」は、ゲーテの著書『若きウェルテルの悩み』に由来する。


    ランチメイト症候群

    「ランチメイト症候群」とは精神科医の町沢静夫によって名付けられたもので、学校や職場で一緒に食事をする相手(ランチメイト)がいないことに一種の恐怖を覚えるコミュニケーションの葛藤、それに付随する心理状態を指す。一緒に食事をする相手がおらず一人で食事を取るところを他人に見られたくないがためにトイレの個室で食事をとる「便所飯」というインターネットスラングが2000年代後半に広まった。これはランチメイト症候群に特有の「友だちがいないと見られることの不安」が表出した行動と言える。


    スノッブ効果

    多くの人が所有しているものには希少価値がないため「他人とは違うものが欲しい」という心理が働き、入手が困難なほど需要が増すという効果。 他者との差異化願望を具現化するような限定・希少性が価値を持つアイテムほど需要が増し、多くの場合高値で取引される(高値でも買い手が付く)。高額ブランドを購入する心理はこれで説明可能である。「スノッブ」(snob) とは「俗物」の意。


    ブーバ/キキ効果

    言語の音と図形の視覚的印象が連想される現象のこと。例えば、次の図形に名前を付けるとしたらどちらが「ブーバ」でどちらが「キキ」か考えてみて欲しい。

    「左の図形がキキで、右の図形がブーバだ」と答えた人は多いのではないだろうか。実際に、母語とする言語に依らず大多数の人が「ギザギザの図形がキキで、曲線の図形がブーバだ」と答えることが知られている。これは「ブーバ/キキ効果」(Bouba/kiki effect)と呼ばれる心理現象の一種で、インド出身のアメリカの心理学・神経科学者、ヴィラヤヌル・スブラマニアン・ラマチャンドラン(Vilayanur Subramanian Ramachandran)によって命名された。こうした現象そのものはドイツの心理学者であるヴォルフガング・ケーラー(Wolfgang Köhler)によって1929年に初めて報告されている。上の例はこの現象の代表的な例であり、2歳半の幼児でも同様の回答をする傾向があることが報告されている。

    因みに、ラマチャンドラン医師は幻肢痛に関する報告などでも有名な神経科医である。


    シャルパンティエ効果

    同じ重量の物体を比較した際に、体積の大きい方をより軽く、体積の小さい方をより重いと錯覚してしまう現象のこと。多くの人は、1kgの綿と1kgの金塊を比べたときに後者の方が重いと思い込んでしまう。


    クロノスタシス(Chronostasis)

    速い眼球運動の直後に目にした映像を見たときに時間が遅くなったように感じるという錯覚。秒針が1秒ごとに動くアナログ時計に素早く目を向けたときに、秒針の動きが一瞬だけ長く見えるという経験をしたことはないだろうか。眼球が速い運動(「サッカード運動」と呼ばれる)をするとき、時間の認識は僅かに伸びる。これは、脳が連続した意識体験を構築するために視覚情報による認識を補完するときに生じる遅延によるもの、という説明が有力視されている。クロノスタシスは視覚的感覚で顕著に現れるが、聴覚的感覚についても同様に生じるとされる。


    幻肢痛

    何らかの事由で身体の一部を欠損した人が、その失われているはずの部位における痛みを感じること。また、その痛みのことを指す。Phantom Pain(ファントム・ペイン)ともいう。また、こうした人々が、あるはずのない欠損部位があたかも存在するかのような感覚を抱くことがある。これを幻影肢、または幻肢という。


    プルースト効果

    特定のにおいや香りが、それに結び付く記憶や感情を想起させる現象。フランスの作家マルセル・プルーストの小説「失われた時を求めて」において、主人公がマドレーヌを紅茶に浸した際に、その香りで幼少時代を思い出す場面に因んで名付けられた。


    ジャネーの法則(Janet’s Law)

    主観的に記憶される年月の長さは年少者にはより長く、年長者にはより短く評価されるという現象。例えば、50歳の人間にとって1年の長さは人生の50分の1ほどであるが、5歳の人間にとっては5分の1に相当する。よって、50歳の人間にとっての10年間は5歳の人間にとっての1年間に当たり、5歳の人間の1日が50歳の人間の10日に当たることになる。

    In the 19th century, a French philosopher Janet invented a law. It is something like that the length of years that are memorized subjectively is evaluated as; longer for young persons, shorter for elders. According to Janet, for five-years-olds one year is one-fifth of their life, while for fifty-years-olds one year is one-fiftieth, so there is a difference of 10 times in the perceptions of their one year. It is also said that as we get older, fresh experiences decrease and lives become monotonous, so we become to feel like a year passes by faster. As long as we continue new challenges every day, we might be able to spend quality time at any age. (https://kano.ac/posts/2015-12-13_13-58.html)

     

     社会的・経済的な経験論

    シープスキン効果(Sheepskin effect)

    シープスキン効果は応用経済学の用語で、同等の勉強をしていたとしても、学歴を持たない人よりも学歴を修了している人の方が高収入を得ていることが多いという経験則である。 このような学歴の有無によるシグナリング効果は応用経済学における研究対象の一つである。「シープスキン」とは「羊革」のこと。シグナリング(signaling)の項も参照されたい。

    参考文献:”The Sheepskin Effect


    シグナリング(signaling)

    契約理論の用語。一方の当事者(”agent”;エージェント)が他方の当事者(” principal”;プリンシパル)に対して、自らに関する何らかの情報を信頼性をもって伝達するという考え方のこと。これによって投資や雇用などの場面において「情報の非対称性」が発生すると考えられている。「シグナリング」の概念は、2001年にノーベル経済学賞を受賞したマイケル・スペンス(Andrew Michael Spence)が1973年に発表した論文 “Job Market Signaling” の中で初めて言及された。

    シープスキン効果の場合だと「信頼性」を保証するものは最終学歴となる。


    割れ窓理論(signaling)

    軽微な犯罪であっても徹底的に取り締まることで、凶悪犯罪を含めた犯罪を抑止できるとする環境犯罪学における理論。アメリカの犯罪学者ジョージ・ケリング(George L. Kelling)が考案した。「建物の窓が割れているのを放置すると、誰も注意を払っていないと認識され、やがて他の窓も壊される」との考え方からこの名が付いている。英語ではそのまま “Broken windows theory” と呼ばれている。

    抑止対象は窓の破損だけでなく、不法投棄や違法駐輪などに対しても同様の考え方が有効である。違法駐輪で溢れ返っていた場所を徹底的に取り締まり、1台も自転車が駐輪していない状態を維持したところ、それ以降は一切の違法駐輪が無くなった、といったケースは割れ窓理論に基づいて集団心理のコントロールに成功した実践例と言える。


    マタイ効果

    科学社会学において「マタイ効果」とは、たとえ似た研究をしていたとしても、著名な科学者の方が比較的知られていない研究者よりも多くの信用を得るという現象のことを指す。「マタイ原理」とも呼ばれる。アメリカの社会学者ロバート・キング・マートンが1968年にScience誌上で発表した論文 “The Matthew Effect in Science: The reward and communication systems of science are considered.” において用いた造語である。条件に恵まれた研究者は優れた業績を挙げることでさらに条件に恵まれることはよくあり、科学以外の様々な分野でも同様の事象が観察できる。「マタイ効果」は資本主義を論じる文脈において「金持ちはより金持ちに、貧乏人はより貧乏に」と要約され、経済格差の拡大を批判する際に言及されることが多い。

    なお、綴りは “Matthew” (人名だと読み方は「マシュー」)なので注意。この語は新約聖書の「マタイによる福音書」に因むものである*。

    *与えられたものを上手に使う者はもっと多くのものが与えられ、ますます豊かになる。だが不忠実な者は、与えられたわずかなものさえ取り上げられてしまうのだ。— マタイの福音書 25章29節(口語訳)


    ムーアの法則

    インテル創業者の一人であるゴードン・ムーアGordon E. Moore)が1965年に電子技術誌「Electronics」で発表した論文上で唱えた「半導体の集積率は18か月で2倍になる」という半導体業界の経験則のこと。より単純化して「コンピュータの性能は1.5年で2倍になる」と表現されることもある。


    収穫加速の法則

    一つの重要な発明は他の発明を加速させ、次の重要な発明が生み出されるまでの期間を短縮して技術刷新の速度を加速するという経験則。この法則によれば、科学技術は直線的にではなく指数関数的に進歩するとされる。(前述のムーアの法則にも関連する)



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