問題#C020

問題#C020 ★★★☆

$a、b$ は $a \geqq b>0$ を満たす整数とし、$x$ と $y$ の2次方程式

$x^2+ax+b=0$、$y^2+by+a=0$

がそれぞれ整数解を持つとする。

(1)$a=b$ のとき、条件を満たす整数 $a$ をすべて求めよ。

(2)$a>b$ のとき、条件を満たす整数の組$(a,b)$をすべて求めよ。


《ポイント》

本問のように対称性が高い方程式を前にするとどこから手を付けたらよいのか分からなくなってしまう人が多いのですが、ここはまず整数解を仮定して解と係数の関係から条件を炙り出していきましょう。


《解答例》

(1)

$x^2+ax+a=0$ の2解を $\alpha$、$\beta$ と置くと$$\begin{cases} \alpha+\beta=-a \\ \alpha \beta=a \end{cases}$$となる。これより$a$を消去すると$$\alpha+\beta+\alpha \beta =0$$ $$\therefore (\alpha+1)(\beta+1)=1$$となる。

$\alpha+1=1$ かつ $\beta+1=1$ とすると$a$が正であることに反するから

$\alpha+1=-1$ かつ $\beta+1=-1$

$\therefore \alpha=\beta=-2$

となる。よって $a=4$ である。

《(1)別解 》

$x^2+ax+a=0$ より $$\begin{align} a &=-\dfrac{x^2}{x+1} \\ &=-(x-1)-\dfrac{1}{x+1} \end{align}$$となる。整数解を $x=m$ とすると$$a=-(m-1)-\dfrac{1}{m+1}$$となるから、$m+1$ は$1$の約数であることが必要である。故に $m=0、-2$ であり、それぞれについて $a=0、4$ を得るが、$a$は正なので $a=4$ である。

(答)$a=4$

(2)

$x^2+ax+b=0$ の2解を $\alpha$、$\beta$ ($\alpha \leqq \beta$)と置き、$y^2+by+a=0$ の2解を $\gamma$、$\delta$ ($\gamma \leqq \delta$)と置くと$$\begin{cases} \alpha+\beta=-a \ \cdots ①\\ \alpha \beta=b \ \cdots ②\\ \gamma+\delta=-b \ \cdots ③\\ \gamma\delta=a  \ \cdots ④\end{cases}$$となる。 $a \geqq b>0$ より $\alpha$、$\beta$、$\gamma$、$\delta$ はすべて負の整数であるから$$\alpha \leqq \beta \leqq -1 \ \cdots (\ast)$$となる。ここで $a>b$ であるから①、②より $$-(\alpha+\beta)>\alpha \beta$$ $$\therefore (\alpha+1)(\beta+1)<1 \ \cdots (\clubsuit)$$となる。$(\ast)$ より $\alpha+1 \leqq \beta+1 \leqq 0$ となるが仮に $\alpha+1$、$\beta+1$ がともに負だとすると$(\clubsuit)$に反するから、少なくとも$$\beta+1=0$$ $$\therefore \beta=-1$$が必要である( $\because \alpha+1 \leqq \beta+1$ )。

$\beta=-1$ および①、②より $a=1-\alpha$、$b=-\alpha$ となる。 これと③、④より$$\therefore \begin{cases} \gamma+\delta=\alpha \\ \gamma\delta=1-\alpha \end{cases}$$となるので、この2式から$\alpha$を消去して$$\gamma+\delta+\gamma \delta=1$$ $$\therefore (\gamma+1)(\delta+1)=2 \ \cdots (\spadesuit)$$を得る。$(\ast)$式と同様に考えると $\gamma+1 \leqq \delta+1 \leqq 0$ となるから、$(\spadesuit)$を満たす組$(\gamma+1,\delta+1)$は$(-2,-1)$に限られる。故に$$\therefore (\gamma,\delta)=(-3,-2)$$となるから $\alpha=-5$、よって$$a=6、b=5$$を得る。

また、$a=6、b=5$ のとき、確かに $x^2+ax+b=0$、$y^2+by+a=0$ はそれぞれ整数解 $x=-5、-1$ および $y=-3、-2$ を持つから、条件を満たす整数の組$(a,b)$は$$(a,b)=(6,5)$$である。

(答)$(a,b)=(6,5)$


《コメント》

上記の解答例ではかなり周到に議論を進めているため、簡潔にまとまった解答になっています。ある程度範囲を絞っておけばシラミ潰しでも十分対応できますが、見かけ以上にハードな問題かもしれません。因みに名古屋大の整数問題は良問揃いですので、基礎ができている学生のレベルアップに丁度良い演習問題になると思います。

(出典:名古屋大2011年理系第4問)


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