問題7.1.6
次の微分方程式を、積分因子を求めて解け。
(1)$(x+2y)dx+dy=0$
(2)$y^3 dx+(2xy^2+3y)dy=0$
《ポイント》
完全微分形ではない微分方程式 $P(x, y) d x+Q(x, y) d y=0$ に対して関数 $M(x,y)$ を掛けた$$M(x,y)P(x, y) d x+M(x,y)Q(x, y) d y=0$$が完全微分形になることがあります。このとき関数 $M(x,y)$ をこの微分方程式の積分因子と言います。
積分因子の求め方
(ⅰ)$\dfrac{P_{y}-Q_{x}}{Q}$が$x$のみの関数の場合は$$M(x)=\exp \left(\int \frac{P_{y}-Q x}{Q} d x\right)$$
(ⅱ)$\dfrac{Q_{x}-P_{y}}{P}$が$y$のみの関数の場合は$$M(y)=\exp \left(\int \frac{Q x-P_{y}}{P} d y\right)$$
(ⅲ)$P(x, y)$、$Q(x, y)$が多項式のときは $M(x,y)=x^a y^b$とおいて比較することにより、積分因子となるような定数$a$、$b$がみつかることもある
《解答例》
(1)$(x+2y)dx+dy=0$
$P(x, y)=x+2 y$、$Q(x, y)=1$ と置くと、$P_{y}=2$、$Q_{x}=0$ であるから$$\dfrac{P_y(x,y)-Q_x(x,y)}{Q(x,y)}=2$$となる。よって$$M(x)=\exp \left(\int 2\, d x\right)=e^{2 x}$$が積分因子となるから、$$e^{2 x}(x+2y)dx+e^{2 x}dy=0$$は完全微分形である。
よって、$$\begin{aligned} F(x, y) &=\int_{0}^{x} s e^{2 s} d s+\int_{0}^{y} e^{2 x} d t \\ &=\left[s \cdot \frac{1}{2} e^{2 s}\right]_{0}^{x}+\int_{0}^{x} \frac{1}{2} e^{2 s} d s+e^{2 x}[t]_{0}^{t} \\ &=\frac{1}{4} e^{2 x}(2 x+4 y-1)-\frac{1}{4} \end{aligned}$$であるから、求める解は$$\frac{1}{4} e^{2 x}(2 x+4 y-1)-\frac{1}{4}=c_{1}$$ $$\therefore (2 x+4 y-1) e^{2 x}=c \quad \cdots (\text{答})$$となる。ただし、$c$ は任意の実数である。
※ $\tilde{P}(x, y)=e^{2 x}(x+2y)$、$\tilde{Q}(x, y)=e^{2 x}$ と置いて完全微分形の微分方程式$$\tilde{P}(x, y) d x+\tilde{Q}(x, y) d y=0$$を解くことと同じです。
(2)$y^3 dx+(2xy^2+3y)dy=0$
$P(x, y)=y^3$、$Q(x, y)=2xy^2+3y$ と置くと、$P_{y}=3y^2$、$Q_{x}=2y^2$ であるから$$\dfrac{P_y(x,y)-Q_x(x,y)}{Q(x,y)}=-\dfrac{1}{y}$$となる。よって$$M(x)=\exp \left(\int -\dfrac{1}{y} d y\right)=\dfrac{1}{y}$$が積分因子となるから、$$y^2 dx+(2xy+3)dy=0$$は完全微分形である。
よって、$$\begin{aligned}
F(x, y) &=\int_{0}^{y}(2 x t+3) d t \\
&=[2 x t+3]_{0}^{y} \\
&=x y^{2}+3 y
\end{aligned}$$であるから、求める解は$$x y^{2}+3 y=c \quad \cdots (\text{答})$$となる。ただし、$c$ は任意の実数である。
復習例題は設定していません。