問題4.1.2
次の$W$はベクトル空間 $\boldsymbol{R}[x]_{3}$ の部分空間となるかどうか調べよ。
(1)$W=\left\{f(x) \in \boldsymbol{R}[x]_{3} \mid f(0)=0, f(1)=0\right\}$
(2)$W=\left\{f(x) \in \boldsymbol{R}[x]_{3} \mid f(0)=1, f(1)=0\right\}$
(3)$W=\left\{f(x) \in \boldsymbol{R}[x]_{3} \mid f(3)=0, f(2)=0\right\}$
(4)$W=\left\{f(x) \in \boldsymbol{R}[x]_{3} \mid f(1) \leqq 0, f(2)=0\right\}$
(5)$W=\left\{f(x) \in \boldsymbol{R}[x]_{3} \mid f^{\prime}(3)=0, f(1)=0\right\}$
(6)$W=\left\{f(x) \in \boldsymbol{R}[x]_{3} \mid f^{\prime \prime}(x)-2 x f^{\prime}(x)=0\right\}$
ポイント
部分空間ベクトル空間$V$の部分集合$W$が$V$の和とスカラー倍によってベクトル空間となるとき、$W$を$V$の部分空間といいます。
定理4.1.1にある通り、ベクトル空間$V$の部分集合$W$が部分空間である必要十分条件は次の(ⅰ)、(ⅱ)、(ⅲ)のすべてが満たされることです。
(ⅰ) $0 \in W$
(ⅱ) $\boldsymbol{u}, \boldsymbol{v} \in W$ ならば $\boldsymbol{u}+\boldsymbol{v} \in W$
(ⅲ) $\boldsymbol{u} \in W, c \in \boldsymbol{R}$ ならば $c \boldsymbol{u} \in W$
ベクトル空間 $\boldsymbol{R}^{3}$ の部分空間かどうか調べるには、この3条件を満足しているかどうかを確かめます。部分空間でないことを言うには、この3条件を満たさないような何らかの反例を示せばOKです。
解答例
(1)
$W=\left\{f(x) \in \boldsymbol{R}[x]_{3} \mid f(0)=0, f(1)=0\right\}$
(ⅰ) $f_{0}=0$ とすると$$f_{0}(0)=0, \quad f_{0}(1)=0$$であるから、 $\boldsymbol{R}[x]_{3}$ の零ベクトル $f_0$ は $W$ の元である。
(ⅱ) $f, g \in W$ とすると、$$f(0)=f(1)=g(0)=g(1)=0$$である
よって$$\begin{array}{l}
(f+g)(0)=f(0)+g(0)=0+0=0 \\
(f+g)(1)=f(1)+g(1)=0+0=0
\end{array}$$となるので $f+g \in W$ となる。
(ⅲ) $f \in W$、$c \in \boldsymbol{R}$ とすると$$\begin{array}{l}
(c f)(0)=c f(0)=c \cdot 0=0 \\
(c f)(1)=c f(1)=c \cdot 0=0
\end{array}$$よって $cf \in W$ となる。
以上より、$W$はベクトル空間 $\boldsymbol{R}[x]_{3}$ の部分空間である。
(2)
$W=\left\{f(x) \in \boldsymbol{R}[x]_{3} \mid f(0)=1, f(1)=0\right\}$
$f_{0}=0$ とすると、$f_{0}$ は $\boldsymbol{R}[x]_{3}$ の零ベクトルである。$f$ が $W$ に入る条件は $f(0)=1$ であるが、 $f_{0}$ は恒等的に$0$であるから、$f_{0}(0)=0 \ne 1$ となるので $W$ の元ではない。
よって $W$ は定理4.1.1の条件(i)を満たさないため、$W$はベクトル空間 $\boldsymbol{R}[x]_{3}$ の部分空間ではない。
(3)
$W=\left\{f(x) \in \boldsymbol{R}[x]_{3} \mid f(3)=0, f(2)=0\right\}$
(ⅰ) $f_{0}=0$ とすると$$f_{0}(3)=0, \quad f_{0}(2)=0$$であるから、 $\boldsymbol{R}[x]_{3}$ の零ベクトル $f_0$ は $W$ の元である。
(ⅱ) $f, g \in W$ とすると、$$f(3)=f(2)=g(3)=g(2)=0$$となる。よって$$\begin{array}{l}
(f+g)(3)=f(3)+g(3)=0+0=0 \\
(f+g)(2)=f(2)+g(2)=0+0=0
\end{array}$$となるので $f+g \in W$ である。
(ⅲ) $f \in W$、$c \in \boldsymbol{R}$ とすると$$\begin{array}{l}
(c f)(3)=c f(3)=c \cdot 0=0 \\
(c f)(2)=c f(2)=c \cdot 0=0
\end{array}$$よって $cf \in W$ となる。
以上より、$W$はベクトル空間 $\boldsymbol{R}[x]_{3}$ の部分空間である。
(4)
$W=\left\{f(x) \in \boldsymbol{R}[x]_{3} \mid f(1) \leqq 0, f(2)=0\right\}$
(ⅰ) $f_{0}=0$ とすると $f_{0}^{\prime}=0$ である。$$f_{0}^{\prime}(3)=0, \quad f_{0}(1)=0$$であるから、 $\boldsymbol{R}[x]_{3}$ の零ベクトル $f_0$ は $W$ の元である。
(ⅱ) $f, g \in W$ とすると、$$f^{\prime}(3)=f(1)=g^{\prime}(3)=g(1)=0$$であるから、$$\begin{array}{l}
(f+g)^{\prime}(3)=f^{\prime}(3)+g^{\prime}(3)=0+0=0 \\
(f+g)(1)=f(1)+g(1)=0+0=0
\end{array}$$となるので $f+g \in W$ となる。
(ⅲ) $f \in W$、$c \in \boldsymbol{R}$ とすると$$\begin{array}{l}
(c f)^{\prime}(1)=c f^{\prime}(1)=c \cdot 0=0 \\
(c f)(1)=c f(1)=c \cdot 0=0
\end{array}$$よって $cf \in W$ となる。
以上より、$W$はベクトル空間 $\boldsymbol{R}[x]_{3}$ の部分空間である。
(6)
$W=\left\{f(x) \in \boldsymbol{R}[x]_{3} \mid f^{\prime \prime}(x)-2 x f^{\prime}(x)=0\right\}$
$f_{0}=0$ とすると $f_{0}^{\prime}=f_{0}^{\prime\prime}=0$ であるから、$$f^{\prime\prime}-2xf^{\prime}=0$$となり、$f_0$ は $W$ の元である。
(ⅱ) $f, g \in W$ とすると、$f^{\prime \prime}-2 x f^{\prime}=0$、$g^{\prime \prime}-2 x g^{\prime}=0$ であるから、$$\begin{aligned}
& \quad \, (f+g)^{\prime \prime}-2 x(f+g)^{\prime} \\ &=\left(f^{\prime \prime}-2 x f^{\prime}\right)+\left(g^{\prime \prime}-2 x g^{\prime}\right) \\
&=0
\end{aligned}$$となるので $f+g \in W$ となる。
(ⅲ) $f \in W$、$c \in \boldsymbol{R}$ とすると$$\begin{aligned}
& \quad \, (c f)^{\prime \prime}-2 x(c f)^{\prime} \\
&=c f^{\prime \prime}-2 c x f^{\prime} \\
&=c\left(f^{\prime \prime}-2 x f^{\prime}\right) \\
&=c \cdot 0 \\
&=0
\end{aligned}$$よって $cf \in W$ となる。
以上より、$W$はベクトル空間 $\boldsymbol{R}[x]_{3}$ の部分空間である。