雑題ログ:カテナリー曲線に関する問題

カテナリー曲線(懸垂曲線)に関する問題

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「カテナリー曲線」または「懸垂曲線」とは、ロープや電線などの一様な紐の両端を固定して垂らしたときにできる曲線です。数学のみならず、力学や建築学の分野でもお目にかかることのある曲線で、身近なところではロープ式パーテーションや吊り橋などで見られます。吊り橋と言えばドイツの観光名所である吊り橋 “Hängeseilbrücke Geierlay” が有名ですね。この吊り橋が描く弧はカテナリーになっています。

ハゲタカ谷吊り橋 (ラインラント=プファルツ州, ドイツ)

また、重力がどの部分にも均等にかかることから、アーチ状の建造物にカテナリー曲線が採用されます。セントルイス市のシンボルにもなっている記念公園 “Jefferson National Expansion Memorial” のゲートウェイ・アーチは、高さ192m、最大幅192mという巨大なアーチ状建造物です。

ゲートウェイ・アーチ (セントルイス市, ミズーリ州, アメリカ)

スペインの建築家アントニ・ガウディの作品にもアーチ(カテナリー曲線)が多用されており、よくTVなどでは「放物線状のアーチ」と紹介されてしまうのですが、これは数学的に正しくありません。

カテナリー曲線の式は$$y=a\,\cosh\left(\dfrac {x}{a}\right)=a\left(\dfrac{e^{\frac{x}{a}}+e^{-\frac{x}{a}}}{2}\right)$$で与えられ、力学の知識により立式される微分方程式を解くことで得られます。カテナリー曲線は出題頻度こそ高くはないものの、大学入試でも時々取り上げられることがあるので、名前や背景を知っておいて損は無いと思います。


大阪大学(1969年/前期(理科系/経済)第6問)


防衛医科大学(1976年/第5問)


防衛医科大学(1978年/第4問)


横浜国立大学(1979年/前期(工)第4問)

連続関数$f(x)$がすべての実数に対して$$f(x)=\displaystyle \int_{0}^{x} t f(x-t) d t+2$$を満たすとき、次の問に答えよ。

(1)$g(x)=f(x)+f^{\prime}(x)$ とおく、$g(x)$の満たす微分方程式をつくり、$g(x)$を求めよ。

(2)$h(x)=f(x)-f^{\prime}(x)$ とおく。$h(x)$を求めよ。

(3)$f(x)$を求めよ。


旭川医科大学(1984年/(医)第1問)


大阪大学(1995年/前期理系第4問)


埼玉大学(1996年/後期(理/工)第1問)

曲線 $y=e^{x}+e^{-x}$ 上に点$P(\alpha,\,\beta)$をとる。ただし、$\alpha>0$ とする。

(1)$P$における接線の方程式を求めよ。

(2)$P$における接線と$x$軸の交点を$Q$とする。$PQ$の長さを$\beta$を用いて表せ。

(3)$PQ$の長さの最小値を求めよ。


信州大学(1996年/後期(理学部)第3問)

関数$f(x)$の導関数を$f^{\prime}(x)$、第2次導関数を$f^{\prime \prime}(x)$とする。関数 $f^{\prime \prime}(x)=\dfrac{e^{x}+e^{-x}}{2}$ を満たし、$f(0)=1$、$f^{\prime}(0)=0$ となるものとする。

(1)$f(x)$を求めよ。

(2)$x_1>0$ とする。曲線 $y=f(x)$ $\left(0 \leqq x \leqq x_{1}\right)$ の長さを $l$ とし、この曲線、$x$軸、$y$軸および直線 $x=x_1$ で囲まれる図形の面積を $S$ とする。$l$ と $S$ との関係を求めよ。


横浜国立大学(2001年/前期(工)第5問)

半径$1$の円$K$が、曲線$C: y=\dfrac{1}{2}\left(e^{x}+e^{-x}\right)$ に接しながら、すべることなく、反時計まわりに回転して移動する。ただし、$K$と$C$が接するとは、共有点において共通の接線をもつことをいう。最初、$K$の中心は原点にあり、点$\mathrm{A}(0,\,1)$において$K$と$C$は接している、$K$が移動するとき、$K$と$C$の接点を$\mathrm{T}(u,\,v)$、$K$の中心を$\mathrm{Q}(p,\,q)$、最初$\mathrm{A}$と一致していた$K$の点を$\mathrm{P}(X, Y)$とする。$\mathrm{A}$から$\mathrm{T}$までの$C$の長さを$s$で表す。次の問いに答えよ。

(1)$u$、を$s$を用いて表せ。

(2)$T$における$K$と$C$の共通の接線の傾きを$s$を用いて表せ。

(3)$p$、$q$を$s$を用いて表せ。

(4)$X$、$Y$を$s$を用いて表せ。


防衛医科大学(2003年/第4問)


金沢大学(2003年/後期(工)第2問)


東京理科大学(2006年/(工)第2問(2))

※$y=\dfrac{e^{x}+e^{-x}}{2}$ の $y \leqq 5$ の部分の長さ


横浜国立大学(2008年/後期(工)第4問)

$xy$平面上に曲線$C: y=\dfrac{e^{x}+e^{-x}}{2}(x>0)$ がある。$C$上の点$\mathrm{P}\left(t, \dfrac{e^{t}+e^{-t}}{2}\right)$ における$C$の接線と$x$軸との交点を$\mathrm{Q}$、$\mathrm{P}$における$C$の法線と軸との交点を$\mathrm{R}$とする。$\mathrm{APQR}$の面積を$S$とする。次の問いに答えよ。

(1)$\mathrm{Q}$と$\mathrm{R}$のむ座標をもで表せ。

(2)$\mathrm{P}$における$C$の接線の傾きを$m$とする。$S$を$m$で表せ。

(3)$\mathrm{P}$が$C$上を動くとき、$S$の最小値を求めよ。


名古屋市立大学(2017年/中期(薬)第2問)

$xy$平面上の曲線$C:=f(x)$に関し、以下の問いに答えよ。ただし、$$f(x)=\frac{e^{x}+e^{-x}}{2}$$である。

(1)$f(x)$は以下の関係式を満たすことを示せ。
 (i) $\{f(z)\}^2- \{f^{\prime}(z)\}^2=1$
 (ii) $f^{\prime \prime}(x)=f(x)$
ただし、$f(x)$および $f^{\prime \prime}(x)$は、それぞれ、$f(x)$のに関する1階および2階の導関数を表す。

(2)曲線$C$上の点$\mathrm{A}(a,f(a))$と点$\mathrm{B}(0,f(0))$の間の曲線の長さ$L$を求めよ。ただし、$a$は$a \geqq 0$を満たす定数である。

(3)点$\mathrm{A}$における曲線$C$の接線上に点$\mathrm{P}(X,Y)$を$\mathrm{AP}$の距離が$L$に等しくなるようにとる。ただし、$X \leqq a$とする。このとき、$X$および$Y$を、$a$を用いて表せ。

(4)点$\mathrm{A}$を動かしたときに点$\mathrm{P}$の描く曲線を$D$とする。$a>0$のとき、曲線$C$の点$\mathrm{A}$における接線と曲線のの点$\mathrm{P}$における接線は常に直交することを示せ。


北海道大学(2018年/後期第4問)

$f(x)=\dfrac{1}{2}\left(e^{x}+e^{-x}\right)$ とし, 曲線 $y=f(x)$ を $C$ とする。また, $s>1$ とし, $0 \leqq x \leqq \log s$ の範囲における $C$ の長さを $L(s)$ とする。ただし, $\log s$ は$s$の自然対数であり, $e$ は自然対数の底である。

(1)$L(s)$ を $s$ で表せ。

(2)$P$ を $x$ 座標が $\log s$ であるような $C$ 上の点とし, この点での $C$ の接線を $l$ とする。 $Q(v, w)$ を $v<\log s$ かつ $PQ=L(s)$ を満たす $l$ 上の点とするとき, $v$ と $w$ を $s$ で表せ。

(3)(2)において, $s$ が$1$より大きい実数を動くとき, 点 $R(-v+\log s, w)$ の軌跡を座標平面上に図示せよ。


京都府立医科大学(2019年/前期第1問)


富山大学(2020年/推薦:人間発達科学部小論文・人間環境システム学科人間情報コミュニケーションコース)


慶応義塾大学(2021年/(医)第4問)


札幌医科大学(2021年/前期第4問)

$a>0$ に対して $f(x)=\dfrac{a}{2}\left(e^{\frac{x}{a}}+e^{-\frac{x}{a}}\right)$ とする。曲線 $y=f(x)$ 上の点 $\mathrm{P}(a,f(a))$における接線を $\ell$ とし、直線 $\ell$、直線 $x=0$、曲線 $y=f(x)$ で囲まれる領域を$D$とする。

(1)直線 $\ell$ の切片を$a$を用いて表せ。

(2)曲線 $y=f(x)$ と直線 $\ell$ は、点 $\mathrm{P}$以外に共有点を持たないことを示せ。

(3)領域$D$の面積を$a$を用いて表せ。

(4)領域$D$を軸のまわりに1回転させてできる立体の体積を$a$を用いて表せ。


大阪公立大学(2022年/後期第1問)


 

 


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