運動方程式 $ma=F$ を立てたあと、何を求めれば「解けた」と言えるのでしょうか。この記事では、力から加速度を求め、初めの位置と速度を使って、時刻ごとの位置 $x(t)$ を決めるところまで進みます。
前半は一定の力による運動です。後半は、ばねの運動から大学の微分方程式へ進みます。微分に不慣れな方は、「位置の変化を表すのが速度、速度の変化を表すのが加速度」という関係を頼りに読んでみてください。
求めるものは時刻ごとの位置
例えば $2q=6$ を解くなら、求めるのは数 $q=3$ です。一方、運動を調べるときは、「1秒後、2秒後、その間のどの時刻にも、物体はどこにいるか」を知りたいので、求めるものは時刻 $t$ の関数 $x(t)$ になります。
ここでは、地面に固定した座標系を慣性系とみなし、一直線上を動く質点を考えます。右向きを正、質量 $m$ は一定とします。$F$ は、その軸方向に働くすべての力を足した合力です。右向きの力は正、左向きの力は負として足します。
また、$x(t)$ は原点から測った位置座標です。初めの位置を $x_0=x(0)$ とすると、初めからの変位は $x(t)-x_0$ です。道のりとは区別しておきましょう。
位置を微分すると速度になる
短い時間 $\Delta t$ に位置がどれだけ変わったかを考えます。その間の平均速度は
$$\frac{x(t+\Delta t)-x(t)}{\Delta t}$$
です。分子は「少し先の位置そのもの」ではなく、「少し先の位置と今の位置との差」です。時間幅を限りなく小さくすると、時刻 $t$ の瞬間の速度になります。
$$v(t)=\lim_{\Delta t\to0}\frac{x(t+\Delta t)-x(t)}{\Delta t}=\frac{dx}{dt}$$
$dx/dt$ は「位置 $x$ を時刻 $t$ で微分する」という記号です。グラフでは、$x$–$t$ グラフの接線の傾きを表します。さらに、速度を微分したものが加速度です。
$$a(t)=\frac{dv}{dt}=\frac{d^2x}{dt^2}$$
$d^2x/dt^2$ は「$x$ を $t$ で2回微分する」という意味です。同じものを $x”(t)$ や $\ddot{x}(t)$ と書くこともあります。本文では分数の形を使います。
したがって運動方程式は
$$m\frac{d^2x}{dt^2}=F$$
と書けます。未知の関数とその導関数が入った方程式を、微分方程式と呼びます。この式を満たす $x(t)$ を、出発時の条件も含めて求めるのが今回の目標です。
積分すると変化量がわかる
微分と反対向きに、速度から位置を求めることを考えましょう。短い時間の変位は、およそ「速度×時間幅」です。それを細かく足し合わせたものが、積分です。
$$x(t)-x_0=\int_0^t v(\tau)\,d\tau$$
$\tau$ は積分の途中で使う時刻の記号です。積分の上端 $t$ と区別しています。右辺は $v$–$t$ グラフの符号付き面積に当たり、速度が負の区間は負として足します。
例えば、初めに原点の右 $0.50\,\mathrm{m}$ にいた物体が、右へ一定の速度 $0.20\,\mathrm{m/s}$ で $3.0\,\mathrm{s}$ 動いたとします。変位は $0.60\,\mathrm{m}$、到着位置は $1.10\,\mathrm{m}$ です。積分で得られる変位に、初めの位置を足す必要があります。
微分すると定数は消えます。例えば $x=0.20t$ と $x=0.50+0.20t$ は、同じ一定速度を表します(ここでは $t$ を秒、$x$ をメートルで数値表示)。速度だけでは、どちらの位置から動き始めたかまでは決まりません。
一定の力なら2回の積分で解ける
合力が時間や位置によらず一定値 $F_0$ なら、加速度も一定です。
$$a_0=\frac{F_0}{m}$$
初速度を $v_0=v(0)$ として、まず加速度を積分します。
$$v(t)-v_0=\int_0^t a_0\,d\tau=a_0t$$
よって $v(t)=v_0+a_0t$ です。次に、この速度を積分します。
$$x(t)-x_0=\int_0^t (v_0+a_0\tau)\,d\tau=v_0t+\frac12a_0t^2$$
これで位置まで求まりました。
$$x(t)=x_0+v_0t+\frac{F_0}{2m}t^2$$
初速度 $v_0$ と初期位置 $x_0$ の両方が残っています。不定積分で計算すれば、1回目と2回目に出てくる2つの積分定数を、この2つの初期条件で決めることになります。
この式は、$t=0$ を入れると $x_0$ になり、1回微分すると初速度 $v_0$ を含む速度になり、2回微分すると $F_0/m$ になります。元の式と初期条件へ戻して確かめる習慣を付けましょう。
問題1
質量 $0.40\,\mathrm{kg}$ の物体に、右向きの一定の合力 $0.80\,\mathrm{N}$ が働いています。$t=0$ で位置は $0.30\,\mathrm{m}$、速度は $-1.0\,\mathrm{m/s}$ でした。$2.0\,\mathrm{s}$ 後の速度と位置を求めてください。この間、力の条件は変わらないものとします。
解説1
加速度は $0.80/0.40=2.0\,\mathrm{m/s^2}$ です。正の加速度でも、初めの速度は負なので、物体は最初は左に動きます。速度と位置の式を分けて計算すると
$$v(2.0)=-1.0+2.0\times2.0=3.0\,\mathrm{m/s}$$
$$x(2.0)=0.30-1.0\times2.0+\frac12\times2.0\times(2.0)^2=2.30\,\mathrm{m}$$
となります。各項の単位は、速度の式では $\mathrm{m/s}$、位置の式では $\mathrm{m}$ にそろっています。
答え1
速度は右向きに $3.0\,\mathrm{m/s}$、位置は $x=2.30\,\mathrm{m}$ です。なお、$t=0.50\,\mathrm{s}$ で一瞬止まり、その後は右に動きます。
ここで2つ注意があります。合力は速度を変化させるのであって、運動を続けるためにいつも必要なわけではありません。$F_0=0$ なら $v(t)=v_0$ のままです。また、加速度が正でも速さが増すとは限りません。問題1の最初の $0.50\,\mathrm{s}$ では、左向きの速さが小さくなっています。
ここから発展 ばねの力は一定ではない
ここからは、三角関数の微分を使う発展部分です。前半を理解できたら、いったん確認問題1・2へ進んでも構いません。
なめらかな水平面上で、物体を軽いばねにつなぎます。摩擦と空気抵抗は無視し、ばねは考える伸縮の範囲でフックの法則に従うものとします。鉛直方向の重力と垂直抗力はつり合っています。
ばねが自然長になる位置を原点とし、右向きを正に取ります。この設定では原点が力のつり合い位置でもあります。ばね定数を $k>0$ とすると、水平方向の合力は $F=-kx$。右側の $x>0$ では左向き、左側の $x<0$ では右向きの力です。
$$m\frac{d^2x}{dt^2}=-kx$$
一定力の場合と違い、右辺の $x$ 自体が時間とともに変わります。$x$ を定数のように扱って積分することはできません。そこで
$$\omega=\sqrt{\frac{k}{m}}$$
と置きます。$\omega$ は角振動数で、単位は $\mathrm{rad/s}$(ラジアンを無次元とすれば $\mathrm{s^{-1}}$)です。式は $d^2x/dt^2=-\omega^2x$ となります。つまり、「2回微分すると、元の関数の $-\omega^2$ 倍になる関数」を探せばよいわけです。
sinとcosを代入して確かめる
三角関数の微分は、角度をラジアンで扱うと
$$\frac{d}{dt}\cos(\omega t)=-\omega\sin(\omega t)$$
$$\frac{d}{dt}\sin(\omega t)=\omega\cos(\omega t)$$
です。中身が $t$ ではなく $\omega t$ なので、微分するたびに $\omega$ が掛かります。どちらも2回微分すれば、元の関数の $-\omega^2$ 倍になります。
そこで定数 $C,D$ を使って
$$x(t)=C\cos(\omega t)+D\sin(\omega t)$$
とすると、2回微分した結果は
$$\frac{d^2x}{dt^2}=-\omega^2C\cos(\omega t)-\omega^2D\sin(\omega t)=-\omega^2x(t)$$
となり、運動方程式を満たします。この方程式では、すべての解がこの形に書けます。これを一般解と呼びます。その完全性の証明は大学で学ぶとして、ここでは代入による確認と初期条件を扱います。
$t=0$ では $\cos0=1$、$\sin0=0$ なので $x_0=C$ です。1回微分した速度は
$$v(t)=-C\omega\sin(\omega t)+D\omega\cos(\omega t)$$
ですから、$v_0=D\omega$。したがって
$$x(t)=x_0\cos(\omega t)+\frac{v_0}{\omega}\sin(\omega t)$$
と決まります。初期位置が同じでも、初速度が違えば運動は違います。原点を通過する場合と、そこで静止する場合も別の運動です。
振幅と初期位相は何を表すか
同じ解を、1つの三角関数にまとめることもできます。
$$x(t)=A\cos(\omega t+\phi)$$
$A\geq0$ は振幅で、原点から最も離れる距離です。$\phi$ は初期位相で、振動のどの段階から時刻を数え始めたかを表します。三角関数の加法定理で展開すると
$$x_0=A\cos\phi,\qquad v_0=-A\omega\sin\phi$$
なので、両式を使って
$$A=\sqrt{x_0^2+\left(\frac{v_0}{\omega}\right)^2}$$
と求まります。初期位相は、$\cos\phi=x_0/A$ と $\sin\phi=-v_0/(A\omega)$ の両方で決めます。逆三角関数を1つ使うだけでは、速度の向きを取り違えることがあります。$A=0$ なら物体は原点で静止し、位相を決める必要はありません。
位相が $2\pi$ 増えると同じ動きを繰り返すので、周期は
$$T=\frac{2\pi}{\omega}=2\pi\sqrt{\frac{m}{k}}$$
です。この理想化したばねでは、周期は振幅に依存しません。実際のばねでも任意の大きな伸びまで成り立つ、という意味ではありません。
問題2 発展
前節のばねで、$m=0.50\,\mathrm{kg}$、$k=8.0\,\mathrm{N/m}$、$x_0=0.060\,\mathrm{m}$、$v_0=0.32\,\mathrm{m/s}$ とします。位置の式、振幅、周期を求めてください。
解説2
$\omega=\sqrt{8.0/0.50}=4.0\,\mathrm{rad/s}$、$v_0/\omega=0.080\,\mathrm{m}$ です。これを前節の解へ入れます。振幅は $\sqrt{0.060^2+0.080^2}=0.10\,\mathrm{m}$ となり、初期位置 $0.060\,\mathrm{m}$ より大きくなります。初めから右向きの速度があるためです。
答え2
$t$ を秒、$x$ をメートルで数値表示すると
$$x(t)=0.060\cos(4.0t)+0.080\sin(4.0t)$$
振幅は $0.10\,\mathrm{m}$、周期は $\pi/2\,\mathrm{s}$(約 $1.57\,\mathrm{s}$)です。余弦1つで表す場合は、$\cos\phi=0.60$、$\sin\phi=-0.80$ を満たす位相を使います。
確認問題 自分で条件を戻してみよう
確認問題
1.一定の合力が $0$ で、$x_0=1.2\,\mathrm{m}$、$v_0=-0.30\,\mathrm{m/s}$ のとき、$4.0\,\mathrm{s}$ 後の位置と速度はどうなりますか。
2.問題1の $0$〜$2.0\,\mathrm{s}$ の変位と道のりは、それぞれ何メートルですか。折り返す位置に注意してください。
3.発展:問題2の物体が初めて右端に達する時刻に、速度と加速度はそれぞれいくつですか。「速度が0だから力も0」と言えるかを考えてください。
確認問題の解説
1.$x=1.2-0.30\times4.0=0\,\mathrm{m}$、$v=-0.30\,\mathrm{m/s}$。合力が0でも、初めの速度が0でなければ動き続けます。
2.変位は $2.30-0.30=2.00\,\mathrm{m}$。折り返し時刻 $t=0.50\,\mathrm{s}$ で $x=0.05\,\mathrm{m}$ なので、道のりは $(0.30-0.05)+(2.30-0.05)=2.50\,\mathrm{m}$ です。速度の積分は変位を与え、道のりを求めるには各区間の移動の大きさを足します。
3.右端では $x=A=0.10\,\mathrm{m}$、$v=0$。加速度は $a=-\omega^2x=-16\times0.10=-1.6\,\mathrm{m/s^2}$ です。左向きの合力が働くので、一瞬止まったあと左へ戻ります。
確認問題の答え
1.位置 $0\,\mathrm{m}$、速度 $-0.30\,\mathrm{m/s}$。
2.変位 $2.00\,\mathrm{m}$、道のり $2.50\,\mathrm{m}$。
3.速度 $0$、加速度 $-1.6\,\mathrm{m/s^2}$。合力は0ではありません。
大学への入口 位置と速度を組にする
ばねの運動方程式は、2つの式にも書き換えられます。
$$\frac{dx}{dt}=v,\qquad\frac{dv}{dt}=-\frac{k}{m}x$$
ある瞬間の「位置と速度の組」$(x,v)$ がわかれば、それぞれが次にどう変わるかを計算できます。この組を1点として表す空間を相空間と呼びます。初期条件が2つ必要なのは、このためです。「初期位相」の位相とは別の用語なので、混同しないようにしましょう。
今回は、式を立てる、初期条件を使う、求めた関数を元の式へ戻す、という順で運動を調べました。一定力の運動でも、ばねの振動でも、この確かめ方は共通です。
