Virtual ≠「仮想」
IT分野では「仮想」となのつく単語が特に多く使われています。例を挙げると「仮想現実」や「仮想サーバー」、「仮想環境」などなど…。
例えば「仮想現実」は英単語の「バーチャルリアリティー (virtual reality)」を和訳したものですが、字面の上では「バーチャル」の部分が「仮想」に対応しているように見えます。しかしロングマン現代英語辞典で “virtual” を調べてみると、どうやら日本語の「仮想」という意味は無いようです。
〈virtual〉(adjective)
・very nearly a particular thing
・made, done, seen etc on the Internet or on a computer, rather than in the real world
「特定の物事に非常に近い」もしくは、コンピュータ関連の用語で「現実の世界ではなく、インターネットやコンピュータ上で作られたり、行われたり、見られたりしたもの」という意味の単語のようです。
「仮想」という訳には要注意
では、どうして日本語では「仮想」と訳されたのか疑問が湧いてきます。実社会では「バーチャル」という日本語が「一見それっぽく見えるが、実際は存在しない架空のもの」といったニュアンスで使われることが多いです。
しかしこうした意味を持つ英単語は “imaginary” などが代表的なもので、英語圏ではこのニュアンスから “virtual” という単語に結びつくことはないでしょう。”virtual” を見かけたからといって何でもかんでも「仮想」と訳すのは問題です。”virtual” の本義である「実質的に同じ」という意味をしっかり意識しておかないと間違った解釈に繋がりかねません。
因みに、同じ「仮想」のつく単語でも「仮想敵国」は “hypothetical enemy” の訳であり「実質的な敵国」という意味ではありません。また、「仮想通貨」という単語は日本特有の呼称であり、海外では「暗号通貨」を意味する “crypto currency” の語で呼ばれるのが一般的です。