以外と知られていない「黄泉」と「黄昏」の語源についてまとめます。
「黄泉」の語源
「黄泉」(よみ) や「黄昏」(たそがれ) にはいずれも「黄」という文字が含まれています。これは中国の五行思想と関係しています。
古代中国では、死後に行くとされる地下の世界は「地下の泉」を意味する「黄泉」(コウセン) と呼ばれていました。「黄」とは五行思想で「土」を象徴する語であることから、「地下」を表します。この「黄泉」という漢語がそのまま日本に輸入され、「よみ」という読みが与えられました。…という訳なので、色の黄は「黄泉」の由来には全く関係無いのです。
因みに五行説においては、土は黄、金は白、水は黒、木は青、火は赤、とそれぞれの色が対応付けられています。また季節にも、土用、白秋、玄冬、青春、朱夏、という対応があります。現代でも「青春」や「朱夏」、「土用(の鰻)」などと日常的に使う言葉にその名残があります。また、歌人の北原白秋という名前は西を意味する「白と秋」の組合せが由来です。あまり使われませんが「玄冬」は冬の異称として残っています(玄は「黒」の意)。
「黄昏」の語源
「黄昏」(たそがれ) も漢語がそのまま日本に輸入されたパターンの単語です。「黄昏」(コウコン) という漢語に大和言葉の「誰そ彼」(たそかれ) という読みを当てた「当て漢字」であるというのが通説です。
「黄昏時」(たそがれどき) というのは、「あの人は誰?」と人の顔が明瞭に判別できない程度の薄暗い時刻を差す言葉です。もともと漢語の「黄昏」(コウコン) も日没後のまだ完全に暗くなっていない時刻を指すため、「誰そ彼」という読みが宛がわれたということのようです。
「誰そ彼」に対して、「彼は誰」(かはたれ) という大和言葉もあり、元は薄暗い朝方や夕方の両方を指していました。しかし後に「黄昏時」と区別されて「彼は誰時」は専ら朝方のみを指すようになっていったそうです。