発掘現場では、土器や石器だけでなく、土の色も記録する。茶色い地面の中にある、わずかに黒い部分や赤い部分。その違いは、穴が掘られ、埋まり、火が使われた過程を読み取る手掛かりになる。
土の境目から行為を読む
人が穴を掘って埋め戻すと、もとの地層と違う土が入り込むことがある。木の柱が腐った後にも、周囲と性質の異なる土が残る。土の色や硬さ、粒の大きさを丁寧に観察すると、建物そのものが失われた場所でも柱穴や溝の輪郭が見えてくる。
例えば、明るい土の面に黒っぽい円が並んでいたとする。並び方と断面を調べ、柱穴の可能性を検討する。色だけで建物と決めるのではなく、深さ、形、土器の出方、ほかの穴との位置関係を合わせて考えるのである。
「茶色」を比較できる記録にする
人によって「赤茶色」や「暗い茶色」の使い方は違う。そこで標準土色帖の色票と照合し、色相・明度・彩度などで表す。滋賀県文化財保護協会も、土色帖を土や土器の色の記録に使う道具として紹介している。
色の見え方は水分や照明でも変わる。写真だけを残すと、撮影条件による違いと土そのものの違いを区別しにくい。色の記載に加え、土の粒子、含まれる炭や礫、粘りなどを記録すれば、後から判断を検討する材料が増える。
掘った順序が、過去の順序を残す
土層の切り合いは、出来事の前後関係を示す。古い層を切って掘られた溝は、その層より後のものである。溝の中に積もった土も、下から順に一度で埋まったのか、何度かに分けて埋まったのかを考える材料になる。
発掘は、土を取り除くことで情報を得る作業である。取り除いた後には、同じ断面をそのまま観察し直せない。図面、写真、記述を組み合わせて残すのは、調査時の解釈を将来の研究者が確かめられるようにするためである。土の色は、そのための重要な記録項目なのである。
黒い土には有機物や炭、赤い土には鉄の酸化や加熱など、複数の成因があり得る。色名と成因の判断は分けて記録する。
参考資料
参考資料確認日:2026年10月14日。
