ブラックホールの画像で目立つ明るい輪は、ブラックホールの表面ではない。周囲の高温の物質が出す電波を観測し、画像として再構成したものである。中央の暗い領域には、光の進路を強く曲げ、一部を捕らえる重力の効果が現れている。
明るい輪と暗い影
ブラックホールへ近づくガスは加熱され、周辺の磁場と相互作用しながら放射を出す。その光のうち観測者へ届くものの分布が、明るい輪や三日月状の構造として現れる。ガスの運動や見る方向によって、輪の明るさは一様にならない。
中央の暗い部分は「影」と呼ばれる。事象の地平面の輪郭をそのまま写したものではなく、光が曲げられたり捕らえられたりする効果を含む。影の見掛けの大きさと、事象の地平面の大きさを同じものとして測ることはできない。
地球規模の望遠鏡で集める情報
Event Horizon Telescope(EHT)は、離れた場所にある電波望遠鏡を組み合わせる超長基線電波干渉計を使う。望遠鏡間で信号を比較すると、非常に細かな角度の構造を調べられる。地球ほどの直径の鏡を実際に建てたわけではない。
観測できる情報には欠けた部分があるため、画像はデータと再構成手法を組み合わせて得られる。複数の手法やモデルで特徴が共通して現れるか、観測データをどの程度説明できるかを確かめることが重要になる。画像の一画素ごとを、普通のカメラで直接測った明るさと同じようには扱えない。
画像から何を調べるのか
EHTは2019年にM87*、2022年に銀河系中心のSgr A*の画像を公表した。輪と影の大きさは、ブラックホールの質量や距離、一般相対性理論による予測を調べる手掛かりとなる。偏光の観測からは、周囲の磁場の構造も検討できる。
表示された橙色は、観測した電波の強さを見やすく表現した色であり、人間の目で近くから眺めた色を示すものではない。画像を読むときは、何の波長を観測したのか、どの量を色へ変換したのか、安定して再現される構造はどこかを分けて見ると、得られた証拠の意味が明瞭になる。
ブラックホールの影の形は、質量、回転、観測方向、周辺の発光物質などに関係する。中心が暗いという特徴だけで、あらゆるモデルの細部が決まるわけではない。
参考資料
- EHT:Astronomers Capture First Image of a Black Hole(2019)
- EHT:First Image of the Black Hole at the Heart of Our Galaxy(2022)
- EHT:Can we really photograph a black hole?
参考資料確認日:2026年10月13日。
