やかんの水を加熱すると、やがて内部から泡が立ち上る。この泡の主成分は水が気体になった水蒸気である。沸騰を理解する鍵は、温度だけでなく、液体と気体の間の出入りと周囲の圧力にある。
水面では、沸騰する前から分子が出入りしている
液体の水の中では、分子が互いに引き合いながら動いている。水面近くで液体から抜け出せる分子もあれば、気体側から戻る分子もある。洗濯物が室温でも乾くのは、この蒸発が起こるためである。
密閉容器では、蒸発と凝縮の速さが釣り合う。このときの水蒸気の圧力が、その温度での飽和蒸気圧である。温度が高くなるほど飽和蒸気圧は上がる。
沸騰は、液体の内部でも気体が成長できる状態である
水の内部にできた泡は、周りの水と大気から押される。内部の蒸気圧が足りなければ潰れてしまう。加熱によって蒸気圧が周囲の圧力に達すると、泡が成長し、水面へ上がれるようになる。これが沸騰である。
高い山で水が低い温度で沸くのは、押し返す大気圧が低いためである。圧力鍋では逆に圧力を高め、液体の水をより高温にできる。沸点は水だけに備わった固定の数字ではなく、圧力と組み合わせて決まる。
熱を加えても温度が上がらない時間
一定の圧力の下で純粋な水が沸騰している間、加えた熱の多くは液体から気体への変化に使われる。分子同士の引力に逆らって間隔を広げるためのエネルギーが必要だからである。これを潜熱という。
ここで切れるのは、水分子そのものを作る酸素と水素の結合ではない。水蒸気もH₂Oである。沸騰は分子を別の物質に変える化学反応ではなく、同じ分子の集まり方が変わる相転移である。
加熱の初めに鍋底に現れる小さな泡には、溶けていた空気も含まれる。実際の泡の生成には、鍋の傷や表面張力、液体の深さも関係する。
参考資料
参考資料確認日:2026年10月13日。
