ロープ式エレベーターでは、人が乗るかごの反対側に大きなおもりが付いている。人を運ぶために、なぜ余計な重さを動かすのだろうか。釣り合いおもりは、かごの重さの一部を打ち消し、駆動装置が受け持つ仕事を小さくする。
持ち上げる重さを差にする
滑車を挟み、片側にかご、反対側におもりを下げた状態を考える。両側の重さが近ければ、一方を上げるとき、他方が下がる力を利用できる。モーターが支えるべき負担は、かご全体の重さよりも、両側の差に近づく。
実際には摩擦や加減速に必要な力もある。釣り合いおもりの重さは、かごと想定される積載量を踏まえて設定される。乗客数は毎回違うため、すべての運転で完全に釣り合うようにはできない。
下りでも電力を使う理由
空に近いかごが下がるとき、反対側のおもりを持ち上げる必要がある。下りだから必ず電気を使わない、とはいえない。かご側とおもり側のどちらが重く、どちらへ動くかによって、モーターの働き方は変わる。
重い側が下がる運転では、駆動装置がブレーキの役割を担う。その際のエネルギーを電力として回収する回生の仕組みを備える機種もある。位置の変化によるエネルギーを、毎回熱として捨てずに利用する考え方である。
省エネと安全は別の役割を持つ
おもりによって駆動負担を減らせれば、装置や消費電力の設計にも影響する。多数の人が頻繁に上下する建物では、一回ごとの小さな違いが積み重なる。乗客を運ぶかごだけを見ていては、装置全体の仕事は理解しにくい。
停止状態を保つブレーキや、異常時の安全装置には、それぞれ別の役割がある。釣り合っているから何もしなくても安全、という構造ではない。おもりはエネルギーの流れを整える部品であり、その周囲に制御と安全の仕組みが組み合わされている。
本稿は釣り合いおもりを使う一般的なロープ式の説明である。油圧式など、異なる原理で動くエレベーターもある。
参考資料
参考資料確認日:2026年10月14日。
