遺跡の炉や窯の焼けた粘土には、使われていた時代の地磁気が記録されることがある。文字の書かれていない土でも、火にさらされ、冷えたという履歴が情報になる。これを読み取るのが考古地磁気の研究である。
冷えるときの磁場が残る
粘土には、鉄を含む磁性鉱物が混ざっている。十分に加熱された材料が地磁気の中で冷えると、その磁場の影響を受けた磁化が残る。これを熱残留磁化という。鉱物の粒が方位磁針のように丸ごと回るというより、内部の磁化の状態が記録を担う。
地磁気はいつの時代も同じ方向と強さだったわけではない。北からどちらへずれるかという偏角、水平面に対してどれだけ傾くかという伏角、さらに磁場の強さが変わる。この変化を、焼けた材料の記録からたどることができる。
動かさずに残った炉が役立つ
昔の磁場の方向を知るには、試料が地面に対してどう置かれていたかが必要になる。発掘現場では、試料の方位を記録してから採取する。炉が焼けた後に傾いたり、破片が持ち運ばれたりすると、磁化が残っていても元の方向との対応が失われる。
別の方法で年代が分かる遺構から測定を重ねると、地域ごとの地磁気の変化を示す曲線を作れる。逆に、年代不明の炉の測定値をその曲線と比較すれば、最後に強く加熱されて冷えた時期を絞る手掛かりになる。
一つの測定から、暦年が自動的に出るわけではない
地磁気が異なる時代に似た方向を向けば、候補年代が複数残る。Historic Englandのロンドンの炉跡の報告でも、比較曲線の重なりによって複数の時期を検討している。周囲の出土品や層の関係と照合する仕事が重要になる。
焼成の温度や冷却の速さ、鉱物の性質も、記録の残り方に関わる。地磁気を測る研究と、人が火を使った履歴を調べる研究は、同じ試料の中でつながっている。焼けた粘土は、過去の地球と過去の生活を同時に伝える記録媒体なのである。
方向の復元と磁場の強さの復元では、必要な試料条件や実験が異なる。十分に加熱されなかった材料や、後に再加熱された材料は、その履歴を検討して扱う。
参考資料
- Scottish Archaeological Research Framework:Archaeomagnetism
- Historic England:Archaeomagnetic Dating — The Royal Mint, London
- Hervéほか:Cooling rate effect on thermoremanent magnetization in archaeological baked clays
参考資料確認日:2026年10月14日。
