古地図を現代の地図へ重ねると、寺や道は似ていても、位置が少しずつずれる。古地図には縮尺の違いだけでなく、部分ごとの伸び縮みや描画上の強調がある。比較には、同じ場所を示す手掛かりを選び、歪みを扱う作業が必要となる。
同じ場所を結ぶ基準点
まず、両方の地図で対応する場所を探す。移転していない寺社、道の交差点、地形上の特徴などが候補になる。名前が同じでも場所が変わっていれば基準にできないので、ほかの資料と照合する。
対応点を使って画像へ現代の座標を与える作業は、ジオリファレンスと呼ばれる。平行移動、回転、縮尺の調整だけでうまく重なる地図もあるが、場所によって歪み方が違う古地図では、それだけで一致しない。
地図を部分ごとに変形する
清水英範らの古地図の幾何補正研究では、対応点から作る三角形の網とアフィン変換を組み合わせた方法が提案されている。画像全体を一枚の硬い板として動かすのではなく、局所的な形の違いも補正する考え方である。
補正によって、昔の土地利用や街路を現代の位置と比較しやすくなる。川沿いの区画や寺の境内が現在の街にどう残るかを検討できる。古地図を眺めるだけでは難しかった位置関係を、別の資料と一緒に分析するための処理なのである。
重なった場所が正解とは限らない
基準点を無理に増やせば、見た目だけはよく重なる画像を作れる。元の地図の情報が曖昧な部分まで正確になったわけではない。基準に使わなかった点でずれを調べたり、変形の大きさを確認したりして、補正の妥当性を考える。
そもそも古地図は、距離を正確に測る以外の目的でも作られた。重要な場所を大きく描くことや、道の接続を優先することがある。補正前の画像と変形の記録を残せば、描かれた情報と分析のために加えた処理を区別できる。古地図の誤差を消すことより、何を比較できる資料なのかを明らかにすることが重要なのである。
地名が同じであることと、建物や敷地が同じ位置にあることは別である。基準点には、その場所を同定した根拠も記録しておくと再検討しやすい。
参考資料
参考資料確認日:2026年10月14日。
