「この本の120ページを見てほしい」と言えば、相手は同じ場所を開ける。ページ番号はあまりに普通の道具であるため、その便利さを意識しにくい。西欧の本では、現在のように各面へ連続した番号を付ける方式が、印刷の普及とともに16世紀を通じて広がった。
一枚を数える方法と、一面を数える方法
紙の一枚には表と裏がある。一枚ごとに番号を付けるのがfoliation、各面ごとに付けるのがpaginationである。古い本の資料で「12r」「12v」とあれば、通常は12番目の葉の表と裏を指す。現代の12ページとは、数えている単位が違う。
写本にも番号が付く例はあった。ケンブリッジ大学のGonville & Caius Collegeの解説は、西欧の写本で番号付けが一律に普及していたわけではなく、後から加えられた番号も多いことを説明している。古い本に数字があることと、制作当初からその番号があったことは別の問題である。
同じ版なら、同じ場所を指せる
写本は、同じ文章を写しても文字の大きさや行の配置が変わる。一冊の50ページにある箇所が、別の写本でも50ページにあるとは限らない。印刷によって同じ版の多数の本を作れるようになると、番号を使って同じ箇所を示す利点が大きくなる。
同校の解説では、印刷本の葉番号は15世紀から採用が進み、ページ番号は16世紀に広がって、その末までに標準的になったと整理されている。目次、索引、正誤表も、本文の位置を細かく指せることで使いやすくなる。本を最初から順に読む以外の利用を支えたのである。
電子書籍で、問題が再び現れる
画面に合わせて文字の大きさや行数を変える電子書籍では、同じ文章でも表示されるページが変わる。紙の本で解決した「同じ番号で同じ場所を指す」という問題が、別の形で戻ってくる。位置番号や章・節、検索できる語句を併用する理由はここにある。
紙の本でも、文庫版と単行本、改訂前後ではページが一致しない。引用に版や刊行情報を添えるのは、書誌の飾りではなく、読み手が同じ場所へ戻るためである。ページ番号は、本の厚さを示す数字であると同時に、知識を他人と共有するための小さな住所なのである。
本文の普及時期は西欧の印刷本についての説明である。冊子・巻物の形式や丁付けの歴史は地域によって異なり、世界共通の開始年を意味しない。
参考資料
- Gonville & Caius College:Foliation and pagination
- Folger Shakespeare Library:Physical description in book cataloging
参考資料確認日:2026年10月14日。
