花から戻ったミツバチが巣の中で踊ると、仲間がその周りへ集まる。この動きには、餌場の方向や距離に関する情報が含まれる。ダンスは、見えていない場所について、別の個体へ行動の手掛かりを渡す仕組みなのである。
太陽の方向を、巣の中の上へ置き換える
尻を振りながら進む直進部分を含むダンスでは、その向きが重要になる。垂直な巣板の上では、真上へ進む方向が、外での太陽の方位に対応する。真上からの傾きが、太陽に対して餌場がどちらにあるかを表す。
例えば、直進部分が真上から右へ傾いていれば、太陽の方位から対応する角度だけ右へ向かう手掛かりになる。暗い巣の中で、外の景色を見せて説明しているのではない。重力によって分かる上下を、外での方角を伝える基準へ使っているのである。
振る時間が、距離の手掛かりになる
直進部分で尻を振る時間は、餌場までの距離と関係する。一般に遠い場所を伝えるほど、その時間が長くなる。ダンス全体の速さだけを一つ測れば、距離がそのまま分かるという単純なものではない。
サセックス大学の研究では、複数回の直進部分の角度と時間を読み取り、平均を取って採餌場所を推定している。時間から距離への換算にも、対象のハチと景観に合わせた較正を用いた。生き物の信号にはばらつきがあり、その扱いも研究の一部になる。
ハチの情報から、景観の使われ方を読む
同大学の研究室は、観察用の巣箱と映像を使い、どの季節にどの方向へ採餌に出るかを調べている。人がすべての個体を花まで追跡しなくても、帰ってきたハチの行動が、周囲の環境を利用した記録になる。
受け取った仲間は、その情報を使って外へ飛び、餌場を探す。ダンスは花の写真や精密な地図を渡すものではなく、探索へ向かうための方向と距離を共有する。小さな体の動きが、巣の外に広がる空間と、群れの採餌行動を結び付けているのである。
本文は主にセイヨウミツバチの尻振りダンスを扱う。角度や時間の読み取りは反復を含む統計的な推定であり、一回の動きが必ず正確な一点を指定するわけではない。
参考資料
- University of Sussex:Decoding waggle dances to determine where honey bees forage
- Couvillonほか:Waggle Dance Distances as Integrative Indicators of Seasonal Foraging Challenges
- Honeybee navigation: critically examining the role of the polarization compass
参考資料確認日:2026年10月14日。
