セミの抜け殻は、体の大きさ、泥の付き方、触角の節や毛などを組み合わせると、種類を絞れます。特にアブラゼミとミンミンゼミはよく似ていますが、触角の根元から2番目と3番目の節が重要な手がかりです。ただし、壊れた抜け殻や、その地域の図鑑に載っていない種は、無理に名前を決めないことが大切です。
抜け殻にも、幼虫の特徴が残っている
セミは地中で暮らす幼虫から、地上で脱皮して成虫になります。木の幹などに残る抜け殻は、そのとき脱ぎ捨てた外骨格です。脚や触角、体の形が残るので、鳴き声や成虫の翅がなくても同定の材料になります。生きたセミを捕まえずに、そこで羽化したセミを調べられるのが利点です。
一方、抜け殻から分かるのは主に種類や羽化の痕跡です。鳴いている成虫の数と、見つけた殻の数がそのまま対応するわけではありません。殻は雨風で落ち、草の茂みでは見落とされ、前の日以前のものも残ります。木の高い場所だけで羽化した個体は、地上からの調査では見つけにくくなります。
まず全体、次に触角を拡大する
| 候補 | 主な確認点 | 注意点 |
|---|---|---|
| ニイニイゼミ | 小さく丸みがあり、泥を多くかぶる | 泥が落ちた殻や、他種に付いた泥には注意 |
| アブラゼミ | 触角の毛が多く、第3節が第2節の約1.5倍 | 根元から数える。触角の欠損に注意 |
| ミンミンゼミ | 触角の毛が少なく、第3節が第2節とほぼ同じ長さ | 体色や大きさだけではアブラゼミと紛らわしい |
| クマゼミ | 大型で、横から見た額が大きく角張る | 大きさだけで確定しない |
| ヒグラシ・ツクツクボウシ | 比較的小型。触角の節の比や光沢を確認 | 地域の詳しい検索表と照合する |
表は全国のセミを網羅した検索表ではありません。平塚市博物館の資料では、ヒグラシは触角第4節が第3節より長く、ツクツクボウシは短いという違いも示されています。小さな部分なので、ルーペや拡大写真で複数の方向から確認すると役立ちます。種による違いと個体差を分けるため、可能なら同じ候補の殻をいくつか比較します。
アブラゼミとミンミンゼミを比べるコツ
まず頭に触角がつながっている根元を見つけ、そこから節を数えます。先端から数えると、欠けている場合に位置がずれてしまいます。第2節と第3節を同じ角度から撮り、長さと太さ、毛の量を合わせて確認します。アブラゼミでは第3節が相対的に長く毛深く、ミンミンゼミでは比較的細く、二つの節の長さが近いのが目安です。
撮影角度が斜めだと、同じ長さの節でも片方だけ短く写ります。泥で境界が隠れることもあります。触角を引っ張って伸ばしたり強く洗ったりすると、最も大切な部分が失われかねません。見えない場合は「アブラゼミまたはミンミンゼミ」のように候補を残す方が、誤った確定記録より有用です。
拾った場所と日付も、標本の一部
採集が認められた場所で殻を拾うなら、日付、場所、木の種類や高さを記録し、潰れにくい小箱などに分けます。同じ公園でも林の縁と内部、舗装された広場の近くでは条件が違います。名前だけを一覧にするより、環境とセットで記録すると、その場所の自然を比べる材料になります。
調査を続ける場合は、歩く範囲や探す時間、回収する高さをなるべくそろえます。前回の殻を二重に数えない工夫も必要です。数の変化があっても、すぐに個体数の増減や気候変動の結果と断定せず、観察条件や羽化時期の違いを先に考えます。
地域が変われば、候補も変わる
山地、北日本、南西諸島などでは、平地向けの簡易表にない種類に出会います。生息域の外と思える記録や珍しい特徴が出たときは、地域の博物館の資料で候補を増やして確認します。抜け殻を見分ける面白さは、どれにも即座に名前を付けることより、どの特徴なら判断でき、何が足りないと判断できないかを観察するところにあります。
参考資料
資料確認日:2026年10月2日
