鉄はironなのに、元素記号がFeなのはなぜ?

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鉄の元素記号がFeなのは、ラテン語で鉄を意味する ferrum に由来するからです。英語の iron を省略して作った記号ではありません。

元素記号には、英語名からすぐに連想できるものもあれば、古い名前や別の言語の名前を残しているものもあります。金がAu、銀がAg、水銀がHgとなるのも、この歴史と関係しています。

元素記号は「英単語の頭文字集」ではない

元素名は言語によって変わります。日本語の「鉄」と英語の iron は同じ元素を指しますが、名前の音も綴りも違います。その一方で、化学式に使う元素記号Feは、言語の違いを越えて共通に用いられます。

英語の教科書にも日本語の教科書にもFeと書いてあるのは、英語名をその場で短くしているからではなく、元素ごとに定められた記号を使っているからです。元素記号を決める際の名前の選び方と、現在の英語名の綴りが、いつも一致するとは限りません。

水素Hと hydrogen のように対応が分かりやすい例を先に覚えると、Feが例外だらけの暗号のように感じられます。しかし、Feにも ferrum という名前との対応があります。

英語名と結び付きにくい元素記号の一覧

次の表では、元素記号の由来となる名称を並べました。「由来となる名称」は、その語をさらに古い時代までさかのぼった究極の語源とは区別しています。

英語名と元素記号が一致しにくい主な元素
元素名 英語名 記号 由来となる名称
鉄 iron Fe ferrum
銅 copper Cu cuprum
銀 silver Ag argentum
金 gold Au aurum
スズ tin Sn stannum
鉛 lead Pb plumbum
アンチモン antimony Sb stibium
水銀 mercury Hg hydrargyrum
ナトリウム sodium Na natrium
カリウム potassium K kalium
タングステン tungsten W wolfram

NaとKは、日本語ではむしろ覚えやすい組ですね。英語の sodium・potassium に対して、日本語で使う「ナトリウム」「カリウム」は、記号に対応する natrium・kalium に近い名前になっています。

また、どの記号も単純に「もとの名前の最初の2文字」となっているわけではありません。argentum のAg、plumbum のPb、hydrargyrum のHgのように、名前の中から区別できる文字が選ばれています。

ラテン語だけでは説明しきれない

Fe、Cu、Ag、Auなどは、ラテン語の名称と結び付いています。ただし、「英語と違う記号は、全部古代ローマの元素名」とまとめると不正確になります。

水銀の hydrargyrum は、ギリシャ語にさかのぼる名称のラテン語形です。そのもとには「水」と「銀」に関係する語があり、液体の銀のように見える性質を連想させます。

また、natrium や kalium は、近代の化学で用いられたラテン語化された名称です。古代の人々が金属ナトリウムや金属カリウムを取り出し、現在と同じ元素として扱っていた、という意味ではありません。名称の歴史と、単体を分離した歴史は分けて考える必要があります。

タングステンのWは wolfram に由来し、ドイツ語の名称との関係があります。一方、英語名 tungsten はスウェーデン語の「重い石」に由来します。同じ元素に、異なる鉱物や言語を背景とした名前が結び付いた例です。

文字で元素を表す方式は、どう広まった?

現在につながる文字式の化学記号は、19世紀初めのスウェーデンの化学者、ベルセリウス(Jöns Jacob Berzelius)の仕事によって広まりました。

彼は元素を文字で表す方式を整え、ラテン語名を採用したり、新たにラテン語化した名前を用いたりしました。先頭の大文字を基本に、必要に応じて区別するための小文字を加える発想です。Feも、このような命名と記号化の歴史の中で定着しました。

ただし、現在の化学式の書き方が、最初からすべて完成していたわけではありません。原子の個数を数字で示す位置や、元素記号の組み合わせ方も変化しながら、現在の方式へと整えられていきました。

Feの小文字eにも意味がある

元素記号では、大文字・小文字も記号の一部です。鉄はFeであり、FEやfeとは書きません。通常、1文字目を大文字、2文字目があれば小文字にします。

たとえばCoはコバルト、COは一酸化炭素の化学式です。後者は炭素Cと酸素Oという二つの元素記号が並んでいます。読みやすさのための見た目の違いではなく、何を表すかを決める違いです。

また、元素記号は普通の略語と異なり、省略を示すピリオドを付けません。化学式では斜体にせず、立体で組みます。数式中にFeを書く場合も、変数のFとeを掛けたものと紛れないようにするためです。

Feを見たら「ironの例外」とだけ覚えるよりも、「ferrumから来た、鉄を表す国際的な記号」と捉えると、ほかの元素記号も整理しやすくなります。

参考資料

資料確認:2026年10月2日。

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