葉に付いた丸いこぶは、虫こぶ(虫えい)かもしれません。昆虫やダニなどの影響で植物の組織が普段と違う形に発達したもので、こぶそのものが虫の体や卵なのではありません。ただし、葉の膨らみを見ただけで原因は確定できず、植物の種類や、できた位置、形を合わせて調べます。
虫が作った家でも、材料は植物の組織
虫こぶをつくる仲間には、タマバチ、タマバエ、アブラムシ、フシダニなどがいます。産卵や吸汁、幼虫の活動などに伴って、植物の細胞の増殖や成長が変わり、こぶ状の組織ができます。内部は食物や住み場所として利用されますが、原因となる生物や植物によって、形成の仕組みは異なります。
紙のような材料を運んで外側に組み立てるハチの巣とは違い、虫こぶは植物自身の組織が形を変えたものです。中に虫がいても、こぶ全体を卵の殻と考えるのは適切ではありません。球形だけでなく、毛玉のようなもの、円盤状のもの、葉が袋状に巻いたものなど、姿はさまざまです。
| 観察する点 | 記録したい内容 |
|---|---|
| 植物 | 樹種、葉の表裏、枝や芽の様子 |
| こぶの位置 | 葉の表・裏、葉脈上、葉柄、芽など |
| 外形 | 丸い、平たい、毛がある、袋状など |
| 状態 | 色、大きさ、硬さの見た目、穴の有無 |
| 時期と分布 | 観察日、一枚の葉に何個あるか、周囲にもあるか |
植物の名前が分かると、候補がぐっと減る
虫こぶをつくる生物は、利用する植物や部位が限られる場合が多いため、まず宿主となる植物を調べると有効です。同じ「赤い丸いこぶ」でも、ナラの葉にあるものと、別の木の葉にあるものが、同じ虫によるとは限りません。こぶだけを切り抜いた写真より、葉全体と枝の写真を一緒に残した方が判断しやすくなります。
日本の虫えいの名称には、宿主の植物名、できる部位、形を組み合わせたものがあります。長く見える名前にも、どこを観察したかという情報が詰まっています。ただし、外形から付けられた虫えいの名前と、中の虫の種名は別です。原因生物がまだ十分に調べられていないものもあります。
一つの虫でも、季節によって別の形になる
国立科学博物館が紹介するタマバチ類には、春と夏から秋で世代を交代し、それぞれ違う虫こぶをつくるものがあります。雄と雌が現れる世代と、雌だけの世代を持つ場合もあります。形が違うから必ず別種というわけではなく、生活史を追う研究が必要になります。
反対に、よく似た形のこぶを別の生物がつくることもあります。写真検索で似た球を一つ見つけても、宿主や発生部位、季節まで一致するか確認します。「この木の葉にできたこの形」という組合せが、同定の出発点になります。
穴があれば、住人は出ていった?
こぶの表面の小さな穴は、成虫などが出た痕跡である場合があります。しかし、最初にこぶをつくらせた虫だけが、中で暮らすとは限りません。その虫を利用する寄生者や、既存のこぶを利用する別の生物も関わることがあります。中から何かが出てきても、それが形成者だと即断できないのです。
内部を見たい気持ちはあっても、手当たり次第に割ると住人を傷つけ、成長の続きを観察できなくなります。まずは付いたままの姿を定点観察し、色や大きさ、穴の出現を記録すると、形だけでは分からない変化が見えてきます。自然公園や植物園では採取せず、その場所のルールに従います。
全てのこぶが、木を枯らす病気ではない
葉にできる虫こぶの多くは、目立っていても木全体へ大きな影響を及ぼさない場合があります。ただし、種類や発生量、できる場所によっては生育に影響します。さらに、植物のこぶ状の異常には、菌や細菌など別の原因もあります。「虫こぶなら無害」「こぶがあればすぐ薬剤」と、外見だけで対応を決めることはできません。
庭木の管理上の判断が必要なら、植物名と全体の状態が分かる写真を用意して専門窓口に相談します。自然観察としては、葉の上の小さなこぶが、植物と昆虫などの関係、世代交代、さらに別の住人まで含む複雑な世界への入口になる点が面白いところです。
参考資料
- 国立科学博物館「小さくたっておもしろいハチの研究」
- The Morton Arboretum「Plant Galls」
- University of Minnesota Extension「Insect and mite galls」
資料確認日:2026年10月2日
