当たりがK本入ったN本のくじを十分に混ぜ、戻さず一人1本ずつ引くなら、引く前に見た各順番の当選確率は、どれもK/Nです。ただし、先に引いた人の結果を知った後の確率は変わります。この二つは、条件が違うので矛盾しません。
全部のくじを先に並べたと考える
くじを毎回1本ずつ取り出す代わりに、最初に無作為な順に並べ、1番目の人へ先頭、2番目の人へ2枚目、と渡す場面を考えます。順番によって見える印が変わったり、特定のくじを選びやすかったりしないなら、どの位置にも同じ割合で当たりが現れます。
例えば10本中2本が当たりなら、1番目も5番目も10番目も、事前の当選確率は2/10=20%です。最後の人にはその時点で1本しか残りませんが、「最後に何が残るか」は、引き始める前には当たり20%・はずれ80%の不確実な結果です。
最後に1本しかなくても、最初から不利ではない
3本のうち1本だけ当たりの例なら、当たりが1番目にある並び、2番目にある並び、3番目にある並びは同じ確率です。それぞれの人に当たりが回る確率は1/3になります。前の二人がはずれを引いたなら最後の人は必ず当たりますが、どちらかが当たっていれば最後の人は必ずはずれます。
最後の人の事前確率は、二つの場合を合わせて$$P(\text{最後が当たり})=\frac13\times1+\frac23\times0=\frac13$$です。実際に引く直前の確率が0か1になることと、事前確率が1/3であることは両立します。
途中の結果を知った後は、残りを数える
N本中K本の当たりから、既にm本を引き、その中の当たりがr本だったと分かったなら、残りはN−m本、そのうち当たりはK−r本です。残ったくじが一様に選ばれる条件の下で、次に引く人の当選確率は次の式になります。
$$P(\text{次が当たり}\mid\text{m本中r本が当たり})=\frac{K-r}{N-m}$$
| 分かった結果 | 残りの状態 | 次の人の当選確率 |
|---|---|---|
| 最初がはずれ | 9本中2本が当たり | 2/9 ≈22.22% |
| 最初が当たり | 9本中1本が当たり | 1/9 ≈11.11% |
| 最初の結果を知らない | 結果で場合分けして平均する | 1/5=20% |
最後の行は、$\frac8{10}\times\frac29+\frac2{10}\times\frac19=\frac15$と確かめられます。知らない結果を勝手に「はずれだったはず」と扱うことはできません。確率を変えるのは引く順番だけではなく、手に入った情報です。
交換可能でも、独立ではない
くじの順番を入れ替えても、当たりの並びの確率が変わらない対称性を、交換可能性として捉えられます。この対称性から、各順番の当選確率が同じだと分かります。しかし、別の人の結果と独立であるとは限りません。
1本しか当たりがないとき、最初の人が当たれば、他の全員は当たりません。この強い関係があるのに、全員の事前確率は等しいままです。「確率が同じ」と「結果が互いに無関係」は、別の性質なのです。
当選確率と、引く機会を分ける
当たりが1本だけで、当たりが出たら終了する場合でも、事前に固定された各順番の人が当たる確率は1/Nで同じです。ただし、後ろの人ほど実際に引く機会が来ない可能性は高くなります。当たりが複数本あるのに最初の当たりで終了する別ルールでは、実際に当選者となる確率も順番で違います。例えば10本中2本当たりなら、1番目の当選確率は20%ですが、10番目より前に必ず当たりが出るため10番目は当選できません。また、混ぜ方に偏りがある、形や手触りで見分けられる、結果を見て参加順を変えられるといった場合には、同じ一様な順列のモデルとはいえません。
結果を見ないまま決めた順番なら同確率、結果を知った後なら残りで再計算。この二段階を分けるだけで、多くのくじの疑問を整理できます。情報による変化をさらに詳しく見るには、途中で得た情報が確率を変化させる理由も参照して下さい。
参考資料
- Grinstead・Snell「Introduction to Probability」:順列、包除原理、条件付き確率の大学教材
- Colin Rundel「Lecture 2: Conditional Probability」:条件付き確率と全確率の大学講義資料
資料確認日:2026年10月2日。本文の数値例・模式図は、特記したものを除き本記事の説明用に作成しています。
