平均年収を見て「自分の周りには、その金額をもらっている人が少ない」と感じることがある。集計が間違っているとは限らない。平均値は全体の合計を人数で均した値であり、人数の多い層がどこにいるかを直接示す値ではないからだ。何を知りたいのかによって、適切な代表値は変わる。
平均値と中央値は、別の問いに答えている
説明用に、5人の年収が300万円、350万円、400万円、450万円、3500万円だったとする。合計は5000万円なので、平均年収は1000万円になる。1000万円以上の人は1人しかいない。高い値が一つあると、その値の大きさが合計にそのまま反映される。
小さい順に並べたときの中央、ここでは400万円が中央値である。3500万円の人の年収が7000万円に変わっても、残る4人の年収が同じなら中央値は400万円のままだ。平均値は金額の大きさに、中央値は並び順に基づいて計算する。この違いが両者の性質を決める。
平均値が役立つ場面
会社が人件費の総額を見積もる場合、平均給与に人数を掛ければ全体の規模が分かる。平均値は、このように合計と結び付けたい場面で役立つ。代表的な生活水準を知りたい場合には、中央値や所得階級ごとの人数も必要になる。
待ち時間でも同じ問題が生じる。多くの利用者が短時間で済み、一部の利用者が極端に長く待つサービスでは、平均待ち時間だけでは不便さの分布が見えない。中央値に加え、「利用者の90%が何分以内に終えるか」というパーセンタイルを示せば、長く待つ側の状況も伝わる。
平均を比較する前に、集計の単位をそろえる
平均年収を比較するなら、個人か世帯か、就業者だけか、税引き前か後かをそろえる必要がある。平均値と中央値のどちらを使っても、集計対象が違えば同じ比較にはならない。
また、人数の違う集団の平均を、そのまま半々で平均してはいけない。10人の部署と100人の部署を合わせる場合は、それぞれの平均に人数を掛けて合計し、110人で割る。平均値は計算方法が明快な分、元の集計条件が省略されやすい数字でもある。「普通」を知るためには、代表値とともに人数、分布、対象の定義を読む必要がある。
本文の年収は計算を示すための架空の例である。最頻値は最も頻繁に現れる値を指す。連続量では階級の区切り方によって、ヒストグラムの最も高い場所が変わることもある。
参考資料
参考資料確認日:2026年10月13日。
