HはHard(硬い)、BはBlack(黒い)、FはFirm(引き締まった)に由来する、芯の濃さや硬さを表す記号です。FはHとHBの間に位置します。H側では数字が大きいほど硬く薄く、B側では数字が大きいほど軟らかく濃くなるのが基本です。
並べると、Fの位置が分かる
代表的な順序を、硬く薄い側から書くと次のようになります。
… 3H → 2H → H → F → HB → B → 2B → 3B …
Fは「Fineの細字」を示す線幅の記号ではありません。芯を鋭く削れば細い線は引けますが、記号は先端の形とは別です。HBはこの系列の中ほどで日常筆記によく用いられますが、販売される全範囲の数学的な中央を定義した記号ではありません。
| 表示 | 意味・位置 | 一般的な傾向 |
|---|---|---|
| H・2H・3H… | Hard。数字が増えるほどH側へ進む | 硬めで薄い線、芯先が減りにくい |
| F | Firm。HとHBの間 | HとHBの中間的な性質 |
| HB | H側とB側の間の代表的な等級 | 日常筆記などに広く使われる |
| B・2B・3B… | Black。数字が増えるほどB側へ進む | 軟らかめで濃い線、芯先が減りやすい |
黒鉛と粘土の配合が性質を変える
一般的な木軸の黒鉛鉛筆の芯は、黒鉛と粘土などを組み合わせて作られます。黒鉛は黒い筆跡を残す主要な材料で、粘土は焼成した芯の骨格や硬さに関わります。大まかには黒鉛の割合が高いほど濃く軟らかく、粘土の割合が高いほど硬く薄い芯になります。
ただし、配合比だけで書き味のすべてが決まるわけではありません。原料の粒子、混ぜ方、焼成、油などを含ませる工程も関係します。トンボ鉛筆と三菱鉛筆の解説には、HBの配合例として異なる数値が示されています。これは「HBなら必ず黒鉛何%」という単一のレシピを、すべての製品に当てはめられないことを示す身近な例です。
また、シャープペンシルの芯では樹脂を利用するものなど、木軸鉛筆とは製法の違う製品があります。同じHBや2Bの表示を見て、材料の内訳まで同じと考えないようにします。
2BはBの2倍黒い?
数字は系列の段階を表し、黒さや硬さの倍率ではありません。2BがBの2倍黒い、4Hが2Hの2倍硬い、という計算はできません。鉛筆の黒さは、紙へ移った粒の量、粒の付き方、紙の色や表面状態、観察する光にも左右されます。
同じ鉛筆でも、力を入れれば濃く見えやすく、寝かせれば広い面で線を引けます。反対に、硬い芯で強く書くと紙に溝を付ける場合があります。硬いから折れない、濃いから必ず消しにくいといった、一つの尺度への単純化も避けたいところです。
「硬度」という言葉は、用途によって意味が違う
文房具としては硬度という呼び方が広く使われますが、トンボ鉛筆はJISでは濃度記号と呼ぶことを説明しています。一方、塗膜や表面の傷付きにくさを、鉛筆を使って調べる試験もあります。こちらの「鉛筆硬度」は、決められた試験条件で表面を評価するものです。
そのため、スマートフォンの保護フィルムにある9Hの表示を、鉱物のモース硬度9と同一視することはできません。また、筆記の好みを探す場面で、表面試験の数字の感覚を持ち込む必要もありません。何の硬さを、どの方法で表しているのかを区別します。
選ぶときは紙と筆圧も合わせる
細かな下書き、濃淡を大きく付けるデッサン、普段の文字など、目的に合わせて選びます。試験やマークシートは指定された筆記具・濃度に従ってください。等級の範囲も製品により違い、確認時点で三菱鉛筆Hi-uniは10Hから10Bまで22段階、トンボMONOは4Hから6Bまで12段階です。
迷うときは同じ紙に同じ程度の筆圧で書き比べると、表示だけでは分からない書き味が確かめられます。消しゴムで消す仕組みも踏まえると、書く・消すの使い勝手は芯だけでなく、紙と道具の組合せで決まることが分かります。
参考資料
資料確認日:2026年10月2日
