同じサービスでも、学生料金、早割、クーポンなどによって支払う額が違うことがある。売り手は、すべての客へ同じ価格を示す以外の方法を使える。経済学でいう価格差別は、こうした価格の違いを、支払意思や販売条件との関係から考える概念である。
一律の価格では、買わない客が生じる
仮に、ある催しへ2,000円なら参加したい人と、1,000円までなら参加したい人がいるとする。追加の一人を受け入れる費用が小さい場合、条件を分けた安い料金を設ければ、一律2,000円では来なかった人にも販売できる可能性がある。
売り手にとっては、高い価格でも買う人からの収入を保ちつつ、別の客にも売りたいという動機がある。学生などの集団を分ける方法もあれば、早く予約する、クーポンを探すといった条件によって、客自身に料金を選ばせる方法もある。数字は仕組みを説明するための仮定である。
価格の違いを保てる条件が必要になる
誰でも無条件に安い方を買えるなら、高い価格を設けても意味は薄い。安く買った物を高い料金の客へ転売できれば、売り手の区分も崩れやすくなる。価格差別には、客や購入条件を分け、再販売などによる抜け道を抑える仕組みが関わる。
同じように見える価格差でも、配送費、サービス内容、販売時期の費用が違うために生じるものもある。客の支払意思を踏まえた価格差と、供給側の費用差は区別して考える。表示価格が違うという事実だけでは、仕組み全体は分からないのである。
個人データを使うと、区分が細かくなる
米国FTCが2025年1月に公表した調査の初期的な知見は、位置情報や閲覧履歴などを用い、消費者へ異なる価格や販促を示す技術を扱っている。学割のように条件が見える区分と、本人から見えにくいデータに基づく区分では、納得のしやすさも変わる。
価格差によって安く利用できる人が増える場合もあれば、売り手が支払える上限へ近い額を取る場合もある。評価するには、誰が何を基準に分けられ、価格を比較する機会があり、情報をどう使われているかを見る必要がある。価格差別は、値引きの工夫と、情報の非対称性の両方へつながる問題なのである。
需要の増減や時刻に応じたダイナミックプライシングと、個人ごとの情報に応じた価格設定は、区別できる概念である。実際の仕組みでは両者が組み合わされる場合もある。
参考資料
- CORE Econ:Firms and markets for goods and services
- FTC:Surveillance Pricing Study — Initial Findings(2025年1月)
- FTC:Issue Spotlight — The Rise of Surveillance Pricing
参考資料確認日:2026年10月14日。
