世界の引用符は「“ ”」だけではない

雑記Topに戻る

引用符の形は、言語や出版慣行で変わる

引用を囲む記号は、英語でよく見る“ ”だけではありません。日本語の「 」、フランス語などの« »、ドイツ語の„ “など、位置や向きの違う記号が使われます。しかも、一つの言語に一種類だけと決まるわけではなく、地域、出版社、縦書きか横書きか、引用の入れ子によって使い分けがあります。

したがって、初めて見た引用符を「逆向きの入力ミス」と判断する前に、その文章の言語と書式を確認するとよいでしょう。同じUnicode文字でも、ある言語では開きに、別の言語では閉じに使われることがあります。

代表的な形を並べてみる

引用符の代表例。各言語の唯一の方式を示す表ではない
例 見かける文脈 形の特徴
“引用” 英語など 上側の二重引用符
‘引用’ 英語の一部のスタイル、引用の入れ子など 一重引用符
« 引用 » フランス語など 左右に向く二重の山形
„引用“ ドイツ語など 開きが下側、閉じが上側
»引用« ドイツ語の出版物など 山形が内側を向く
「引用」 日本語など かぎ括弧
『引用』 日本語の引用内の引用や書名など 二重かぎ括弧

表のフランス語の空きは説明用です。実際の出版物では、引用符の内側に改行しない空白や狭い空白を使うなど、細かな組版の約束があります。空白の幅や必要性まで、他の言語へそのまま移すことはできません。

同じ“が、開きにも閉じにもなる

Unicodeでは、U+201CにLEFT DOUBLE QUOTATION MARKという名前が付いています。英語の“引用”では開きに使われますが、ドイツ語の„引用“では閉じ側に現れます。符号の名前にあるLEFTを、あらゆる言語で「引用の開始」を意味する命令だと捉えると混乱します。

山形の«と»も、フランス語型の外向きと、ドイツ語の出版物で見られる内向きでは並びが逆です。一方でスイスなど地域による慣行の差もあります。国名だけで一つの正解に固定するより、書く先のスタイルガイドに揃えるのが実用的です。

引用の中に引用がある場合

日本語で「彼は『出発する』と言った」と書くと、外側と内側の引用の範囲を区別できます。英語でも二重と一重を交互に使いますが、どちらを外側にするかはスタイルによって異なります。英語だから必ず二重から始める、とまでは言えません。

異なる言語の言葉を引用する場合も、通常は文章全体の組版の流儀が基準になります。日本語の本文に英語の短い発言を引くなら、日本語の括弧で囲むことは自然です。引用内容の言語と、その周囲で引用を示す記号の言語を、常に一致させなければならないわけではありません。

似た記号を代用すると、別の文字になる

キーボードから入力しやすい直線的な引用符と、左右に曲がった引用符は別の文字です。角度や分・秒などに使うプライム記号′・″も、アポストロフィーや引用符とは区別されます。見た目が近いからといって、数式やコードで置き換えてよいとは限りません。

ワープロの自動整形は、文章の引用符を読みやすい形へ変える一方、プログラムや設定ファイルを壊すことがあります。コードが必要とするASCIIの引用符はそのまま保ち、本文用の自動置換を切るなどの対処が必要です。逆に出版用の文章では、単純な直線型の記号を使い続けるか、組版に合ったものへ揃えるかを決めておきます。

ウェブでは言語設定も関係する

HTMLの引用を示す要素やCSSのquotes機能では、開き・閉じの組や、入れ子の深さに応じた記号を指定できます。言語に応じた自動選択も仕様上考えられています。ただし、サイト側のスタイル指定やブラウザーの実装によって表示は変わるため、文章の言語を指定しただけで意図通りになると決めつけないことが大切です。

文章を仕上げるときは、まず採用する流儀を決め、開閉の対応、入れ子、句読点、空白を一緒に確認します。引用符は飾りというより、「ここからここまでが引用」という読み方を支える記号です。形の違いを知ると、外国語の文章でもその境界を見つけやすくなります。

関連する雑記

参考資料

資料確認日:2026年10月2日

雑記Topに戻る