ナマコの体壁は、柔らかく変形する状態と、力を加えても変形しにくい状態を行き来する。その仕組みの中心には、コラーゲンを含む結合組織がある。筋肉を縮める以外にも、体を支える材料そのものの性質を変える方法があるのである。
硬さが変わる材料
皮膚や腱などの結合組織は、細胞の周囲にある繊維や基質によって力を支えている。ナマコなどの棘皮動物には、その力学的な性質を短時間で変えられる組織があり、硬さ可変結合組織、あるいはキャッチ結合組織と呼ばれる。
ここでいう硬さは、石の表面の傷付きにくさとは違う。引っ張ったり曲げたりしたときの変形しにくさに関わる性質である。体壁の形を変えることと、その形を保つための抵抗を変えることを区別すると、仕組みが理解しやすい。
繊維同士の関係を変える
研究では、コラーゲン繊維の間の結び付きの変化が重要と考えられている。体壁の硬さを変える物質も調べられ、テンシリン、ソフテニンなどのたんぱく質が研究対象となってきた。単に水を出し入れするだけで硬さが変わるという説明ではない。
科研費の研究報告では、細胞を壊した結合組織にもソフテニンが作用し、柔らかくすることが示されている。生きた細胞の収縮がなくても作用する点は、細胞の外にある材料へ直接働きかけるという理解につながる。
一つのスイッチではない
ナマコの結合組織を柔らかい状態、中間の状態、硬い状態に分け、それぞれの移行に関わる物質を調べた研究もある。硬くする物質と柔らかくする物質を一つずつ想定すれば、すべてを説明できるわけではない。状態に応じて働き方が違うのである。
ゴム板を厚くすれば曲がりにくくなるが、その厚みを即座に戻すのは難しい。ナマコの体壁では、材料を大きく作り替えずに力の伝わり方を変える。この性質は、生物が体を支える方法の多様さと、硬さを調節できる材料を考える上での面白さを示している。
ナマコにも筋肉はある。硬さ可変結合組織の説明は、ナマコの運動すべてを結合組織だけで説明するものではなく、体壁を構成する材料の性質に注目したものである。
参考資料
参考資料確認日:2026年10月14日。
