整数第2章第1節 3.倍数と約数

1.3 倍数と約数

倍数:multiple と 約数:divisor の定義をおさらいしましょう。

以下、ここで登場する整数は0でないとします。

2つの整数$a$、$b$について等式 $a=bd$ を成立させるようなある整数$d$が存在するとき、整数$a$は整数$b$の「倍数」であると言い、整数$b$は整数$a$の「約数」であると言います。

つまり、$\dfrac{a}{b}$の値が整数になるとき、$a$は$b$の倍数となり$b$は$a$の約数となります。
特にこのとき、$a$は$b$で「割り切れる」と表現されます。

「割り切れる」という現象は具体的な数字だけに限った話ではありません。例えば、整数$n$の多項式 $n^2+4n+3$ は $n+1$ で割り切れます。 $n^2+4n+3$ を因数分解すると $$n^2+4n+3=(n+1)(n+3)$$ となります。$n$は整数ですから$n+3$も整数です。従って $n^2+4n+3$ は $n+1$ で割り切れるのです。このように文字式についても割り切るor割り切れないの議論をすることができます。これに関連した入試問題はたくさん出題されています。

「公倍数」と「公約数」についても触れておきましょう。

2つの整数$a$、$b$の公倍数と公約数を考えます。

$N=ak$と$N=bl$を同時に満たすような整数$k$、$l$および$N$が存在し、$N$を$a$と$b$の公倍数と言います。また、$a=ck’$と$b=cl’$を同時に満たすような整数$k’$、$l’$および$c$が存在し、$c$を$a$と$b$の公約数と言います。

公倍数のうち最小のものを最小公倍数(Least Common Multiple、略称:LCM)、公約数のうち最大のものを最大公約数(Greatest Common Divisor、略称:GCD)と言います。

例えば、$\text{LCM}(2,9)=18$、$\text{GCD}(28,64)=4$というように表記します。

とはいえ、こういった表記をいきなり試験の答案に書くのはリスクが高いでしょう。こうした略記をする際には初めの方に、「整数$a$、$b$の最小公倍数を$\text{LCM}(a,b) $と書くことにする」などの断りの一言を書いておきましょう。

ここまで倍数と約数の確認をしてきましたが、倍数と約数は割り切れる数についてしか定義されない数です。世の中が割り切れないことで溢れているのと同じように、整数の世界でも割り切れる数ばかりという訳にはいきません(笑)。そうした場合に考えるのが「余り」という数です。次の項では「余り」について見ていきます。

 

 

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