問題#Ⅰ012 ★★☆☆
$p$、$q$は正の整数とし、2次方程式 $x^2-px-q=0$ の2つの実数解を$\alpha$、$\beta$とする。$A_n={\alpha}^n+{\beta}^n$ とおくとき、すべての正の整数$n$について次のことが成り立つことを示せ。
(1)$A_n$は整数である。
(2)$A_{3n}-{A_n}^3$ は$3$で割り切れる。
《ポイント》
$A_n$は$\alpha$、$\beta$の対称式なので、基本対称式である $\alpha+\beta$ および $\alpha\beta$ によって表すことができます。このような場合は解と係数の関係の出番です。
《解答例》
(1)
$A_n$が整数であることを数学的帰納法により示す。
$n=1$ のとき$$\begin{align} A_1 &=\alpha+\beta \\ &=p \end{align}$$ $n=2$ のとき$$\begin{align} A_2 &={\alpha}^2+{\beta}^2 \\ &=(\alpha+\beta)^2-2\alpha\beta \\ &=p^2+2q \end{align}$$となり、$p$、$q$は整数であるから$A_1$、$A_2$は整数である。
$n=k,\,k+1$ のとき$A_{k}$、$A_{k+1}$がともに整数であると仮定する。$$\begin{align} A_{k+2} &={\alpha}^{k+2}+{\beta}^{k+2} \\ &=({\alpha}^{k+1}+{\beta}^{k+1})(\alpha+\beta)-2\alpha\beta({\alpha}^{k+1}+{\beta}^{k+1}) \\ &=A_{k+1} \cdot p+q \cdot A_{k} \end{align}$$となり、$p$、$q$は整数であるから仮定より$A_{k+2}$もまた整数である。
以上よりすべての正の整数$n$について$A_n$が整数であることが示された。
□
(2)
$$\begin{align} & \ \ \ \ \ \ A_{3n}-{A_n}^3 \\ &={\alpha}^{3n}+{\beta}^{3n}-({\alpha}^n+{\beta}^n)^3 \\ &= -3{\alpha}^{2n}{\beta}^{n}-3{\alpha}^{n}{\beta}^{2n} \\ &=-3{\alpha}^n{\beta}^n({\alpha}^n+{\beta}^n) \\ &= -3(-q)^n A_n \end{align}$$ここで$q$は整数であり、(1)より$A_n$は整数であるから$(-q)^n A_n$は整数である。故に $A_{3n}-{A_n}^3$ は$3$で割り切れる。
□
《コメント》
本問は30年以上前の大阪大学の文系数学で出題された問題ですが、一般化された命題の証明は数学的帰納法、というセオリーを学べる良問です。解と係数の関係を絡めた整数問題は時代によらず多数出題されています。漸化式を立式させるタイプの問題もありますので、よく練習しておきましょう。1992年の名古屋大や2009年の一橋大(後期)にも類題があります。
(出典:大阪大学 1988年)