量子力学:エルミート演算子の性質に関する証明

エルミート演算子の性質に関する簡単なメモ書きです。

※参考:スピン1/2系の固有状態とエルミート性に関する証明



・証明①

X=|αβ|X=|βα| の証明

【方針】X|γDCγ|X の関係を利用する。

いま、X=|αβ| であるからX|γ=|αβ|γ=|α(β|γ)DCα|(β|γ)=α|(γ|β)=γ|βα|=γ|Yここで Y=|βα| と置いた。ところで、X|γDCγ|Y を満たすような演算子YXのエルミート共役であるから Y=X が成立する。

双対性を示すことで証明した。

 


・証明②

エルミート演算子の固有値は実数であることの証明

【方針】エルミート演算子の性質を利用して共役複素数が互いに等しいことを示す。

F^をエルミート演算子とし、その固有値と固有関数をそれぞれfψとする。ここでψは規格化されているものとする。

このとき、F^ψ=fψ()が成立する。この両辺のエルミート共役をとるとψF^=fψ()となる。式()の両辺に左からψをかけて座標で積分すると、ψψdq=1 であるからψF^ψdq=fψψdq ψF^ψdq=fを得る。また、式()の両辺に右からψをかけて座標で積分すると、ψψdq=1 であるからψF^ψdq=fψψdq ψF^ψdq=fを得る。

これはψ|F^|ψ=f,ψ|F^|ψ=fを意味しており、F^がエルミート演算子のときこれらは等しくなることが必要である(F^はエルミート演算子なので F^=F^ が成立する)。

複素数fについて f=f が成り立つときfは実数であるから、エルミート演算子の固有値は実数であることが示された。

(※)F^の固有値fは古典物理量Fを測定したときの測定値となるから、fは実数でなければならない。これにより上記の条件が要請されている。

 


・証明③

エルミート演算子F^の異なる固有値に対応する波動関数が直交することの証明

【方針】ψiψjdq=0 を示す。

fifj かつ{F^ψi=fiψi()F^ϕj=fjϕj()とする。式()の両辺について複素共役をとり、左からϕjをかけて座標qで積分すると、ϕjF^ψidq=ψjfiϕidq=fiψjψidqを得る。また、式()の両辺に左からϕiをかけて座標qで積分すると、ϕiF^ψjdq=fjψiψjdqを得る。F^はエルミート演算子でありϕjF^ψidq=ϕiF^ψjdqが成立するから右辺も等しく、fiϕjψidq=fjϕiϕjdq (fifj)ϕiϕjdq=0となる。ここで fifj であるから両辺を fifj で割るとϕiϕjdq=0を得る。これより、エルミート演算子F^の異なる固有値に対応する波動関数が直交することが示された。


 

“量子力学:エルミート演算子の性質に関する証明” への3件の返信

  1. 証明②における(F\psi)*=F*\psi*は本当に正しいですか?
    (F\psi)*=\psi*F^\dagではないでしょうか?

    あと,\int\psi*\psidqの値が1になるためには\psiが規格化されてなければなりませんが,それはどの段階で仮定しましたか?

    1. ファマイン さん

      コメントを頂き、ありがとうございます。
      証明②について、ご指摘の通り共役をとったときにF^が転置になっていなかったので修正しました。規格化についての仮定も付記しました。
      ご確認頂けますと幸いです。

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