有機化学:形式電荷と共鳴構造から電子の動きを読む

高校化学から大学初年級/内容確認:2026年10月14日

構造式にある+と−は、原子の実際の電荷なのでしょうか。電子を数えるための形式電荷と、電子分布の偏りを表す部分電荷を分けるところから始めます。

結合の電子を半分ずつ分けて数える

形式電荷 = 価電子数 − 非共有電子数 − 結合電子数÷2

形式電荷は、共有結合の電子を二つの原子へ等分したときの帳簿です。酸素の価電子は6個です。単結合1本と孤立電子対3組を持つ酸素では、6−6−1=−1。二重結合1本と孤立電子対2組なら6−4−2=0です。実際に結合電子を等分して測定した、という意味ではありません。

酸素の結合と孤立電子対を選ぶ形式電荷−1:アルコキシドRO⁻など。

どの場合も酸素の周りには8電子あります。形式電荷の合計は化学種全体の電荷に一致させます。

ニトロ基は、一本の構造式だけでは描き切れない

R–N⁺(=O)–O⁻ ↔ R–N⁺(–O⁻)=O

通常のニトロ基では、窒素に+1、片方の酸素に−1を置く寄与構造を描けます。二つの図は、別の分子が時間的に入れ替わっている様子ではありません。実在する一つの電子状態を、複数のルイス構造で表しています。二つのN–O結合は、一本を固定した単結合、他方を固定した二重結合とする描像より、共鳴を含めた描像で理解しやすくなります。(OpenStax:2.4 共鳴)

共鳴構造を描くときは原子のつながりを保ち、π電子や孤立電子対の配置を変えます。窒素の周りに二重結合を2本とRへの単結合を置くと、第二周期の窒素に10電子を割り当てることになります。見かけの電荷を消すために、この構造へ書き換えてはいけません。

曲がった矢印は、電子対から出す

通常の曲矢印は、電子対を持つ結合や孤立電子対から描き始め、その電子対が移る結合・原子へ向けます。正電荷の印から電子の矢印を出すのではありません。一電子ずつの移動には片側だけの矢尻を使います。

記号 意味
↔ 共鳴の寄与構造どうしを結ぶ
⇌ 異なる化学種の可逆反応・平衡
曲矢印 電子対の配置がどう変わるかを示す

共鳴による安定化は、分子が構造式の間を高速で往復して得るエネルギーではありません。非局在化した電子状態を、局在化した模型と比較したものです。

考えてみよう:共鳴構造を描くとき、Hを別の原子へ移してもよい?

原子を移す変化は共鳴ではありません。例えばケト形とエノール形は、Hの位置も結合も変わる別の化学種であり、互変異性として扱います。